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ブラックバイトを解決しないと、ブラック労働は消えない…愛知の弁護士が国に対策要望

2017年03月07日 20:03  弁護士ドットコム

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高校生や大学生のアルバイトで、「学生であること」を尊重されず、不当な労働を強いられているとして、愛知県の弁護士らでつくるグループ「ブラックバイト対策弁護団あいち」が3月7日、労働基準監督署の機能強化や、義務教育課程のワークルール教育を全国で実施することなどを求めて、厚生労働省に申し入れをおこなった。


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厚労省・労働基準局監督課は、弁護士ドットコムニュースの取材に「今日いただいたご意見を踏まえて、今後もしっかりと対応してまいりたい」とコメントした。


●これまで200件を越える相談が寄せられた

ブラックバイト対策弁護団あいちは2014年7月、愛知県の若手弁護士が中心になって結成。


高校生や大学生が、低賃金であるにもかかわらず、アルバイト先の職場に拘束されて、正規労働者並みの義務・ノルマを課されて、学生らしい生活を送れなくなる「ブラックバイト」の問題に取り組んでいる。現在、弁護士40人が活動している。


高校や大学で、労働分野の法律など「ワークルール」の出前講義をおこなったり、常設のホットラインを設けて、学生から電話やメールによる相談に応じるなどしている。これまで200件を越える相談数があり、なかには弁護士が介入して解決に至ったケースもあるという。


●「レジの不足金を弁償」「テスト期間中にシフトを入れられる」など

ブラックバイト対策弁護団あいちには、次のような電話相談が寄せられたという。


(1)辞めたいのに辞めさせてもらえない


登録制の家庭教師に登録し、1人の生徒を受け持っていたが、会社から強引なシフトが組まれるので、「そんなに対応できない」と相談をしたところ、翌月からシフトが激減。これ以上登録しつづけても仕方ないと思って会社に「辞めたい」と連絡したところ、会社から「辞めるためには手続きが必要」といわれて、「交代要員が決まるまでは指導を続けてもらう。続けなければ罰金を取る」という内容の書類が送られてきた。


(2)レジの不足金を弁償させられそう


販売のアルバイトでレジ打ちを複数人で担当していたところ、ある日6000円の不足が出てしまった。すると、雇い主から「レジ打ちを担当した全員で弁償するように」といわれた。おかしいと思い、労基署に相談したところ、「支払わなくてよい」といわれたので、雇い主に伝えると、「弁護士を使って請求する」と脅かされた。


(3)テスト期間中にシフトを入れられた


相談者はアルバイトをしている大学生の息子を持つ母。息子がファミレスでアルバイトをしている。以前は、大学の試験があるときは休めるという取り決めをしており、実際に試験中はシフトを入れずに済んでいた。しかし今年になって、テスト期間中にもシフトを入れられた。シフトは前の月に組むので、息子はシフトを変わってほしいとバイト先にの友人にも相談していたが、結局、シフトは変えられなかった。


●ブラック企業の根底には「ブラックバイト」がある

ブラックバイト対策弁護団あいちは、厚生労働省への申し入れのあと、東京・霞が関の厚生労働省記者クラブで会見を開いた。「ブラックバイト」の名付け親で、同弁護団とともに活動している中京大の大内裕和教授(教育学)も同席して、ブラックバイトが蔓延している状況について次のように話した。


「さすがに『しょせん、学生のアルバイトだろ!?』という認識が変わってきて、『最近の学生アルバイトではかなりひどいことが起きている』とは伝わってきている。ただ、問題なのは、なぜそんなふうになったのかということだ。


ブラックバイトが起きてしまった社会的背景の一つには、子ども、若者を取り巻く貧困があり、もう一つは、職場における正規労働者の急減と、非正規労働者の急増によって、非正規労働の補助労働(としての働き方)から基幹労働(としての働き方)への移行という変化がある。


電通事件に見られるように、ブラック企業の働き方が、学生時代から当然になっている。実は、ブラックバイト問題を解決しないと、ああいう問題は解決しない。高校・大学時代から、ひどい働き方が蔓延しており、ブラック企業とアルバイトに関連性があるといえる。日本の働き方に地殻変動が起きていて、ほうっておくと、ひどいことになる。


なぜ、あんな使われ方をしても、学生が辞めないかというと、学生生活をつづけられないからだ。あるいは、卒業後の労働市場全体の劣化、つまり、あんな働き方が普通になって、変だと思わなくなっていく。教育にとっても、日本人の働き方にとっても、極めて大きな問題だということだ」


(弁護士ドットコムニュース)