2017年03月06日 10:43 弁護士ドットコム
東京都や大阪府で宿泊した際、宿泊先の明細に「宿泊税」なる項目をみつけて驚いた経験はないだろうか。東京では1万円以上の宿泊料金に対して、100円~200円が徴収されている。今後、これが全国で導入される可能性が出てきた。全国知事会会長で、京都府の山田啓二府知事が時事通信のインタビューで明らかにした。
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時事通信の報道(2月11日付)によれば、山田府知事は、「(宿泊税は)全国的な税になれる芽がある」と述べたという。宿泊税を導入することにはどんな意味があるのか。久乗哲税理士に聞いた。
「宿泊税は、地方税の『法定外目的税』として制定されています。現在のところ、東京都や大阪府で制定されており、東京都や大阪府で宿泊した場合は、宿泊税が徴収されているのです。
納税義務者は、宿泊税が制定されている地域に宿泊する方であり、宿泊税は宿泊者から徴収され宿泊施設が納税をすることになります」
「法定外目的税」とは、どのような仕組みなのか。
「宿泊税のような『法定外目的税』とは、目的に沿った使途がされる税のことをいいます。例えば、東京都の宿泊税の場合、国際都市東京の魅力を高めるとともに、観光の振興を図る施策に要する費用に充てるとされています」
なぜ「宿泊税」が制度として設けられたのだろうか。
「地方税の性質は、『応益課税』(各人が政府から受ける利益に応じて課される税)にあります。
旅行者は、当然ながらその地域のインフラ等による便益は受けていることになりますが、その便益に対する費用負担はしていません。旅行者が利用するその地域のインフラや行政サービスに関するコストは、その地域の住民などの住民税によって賄われているというのが、現状になります。
観光産業が盛んな地域において、これらの費用を住民が負担しなければならないというのは、応益課税の原則からも違和感があります。宿泊税は、その点において、実際にその地域のインフラや行政サービスを利用する旅行者などから応益課税として費用負担を求める税になりますから、地方税の考え方からは、外れていないと思います。
宿泊税の賛否はあるかと思いますが、今後、日本が観光立国の実現を目指すのであれば、地方税の応益課税の原則の考え方からも、宿泊税を法定化することは良いことだと思います」
【取材協力税理士】
久乗 哲 (くのり・さとし)税理士
税理士法人りたっくす代表社員。税理士。立命館大学院政策科学研究科非常勤講師、立命館大学院経済学研究科客員教授、神戸大学経営学部非常勤講師、立命館大学法学部非常勤講師、大阪経済大学経済学部非常勤講師を経て、立命館大学映像学部非常勤講師。第25回日税研究賞入選。主な著書に『新版検証納税者勝訴の判決』(共著)等がある。
事務所名 :税理士法人りたっくす
事務所URL:http://rita-x.tkcnf.com/pc/
(弁護士ドットコムニュース)