第1回バルセロナF1合同テストが終了、4日間での各チームのパフォーマンスを英AUTOSPORTのテクニカルエキスパート、ゲイリー・アンダーソンが分析し、ランク付けした。
テストでは各チームが燃料量、タイヤコンパウンド、走行プログラムなど、それぞれ異なる状態で異なる作業を行っているため、マシンの真のパフォーマンスを評価するのは非常に難しい。しかしそれでも、かつてジョーダンやスチュワートでデザイナーを務めたアンダーソンは、ラップタイムを見て、トラックサイドでマシンを観察し、関係者と話をしたりしていると、いくらか分かってくることはあり、フェラーリが好調で、マクラーレン・ホンダが苦しんでいることは明らかであると言う。
チームの立ち位置を評価するため、アンダーソンは、各チームが4日間のなかで記録した最速タイムをベースに、その時に使用したタイヤコンパウンド(ミディアムとソフトの差は0.6秒、ソフトとスーパーソフトの差は0.4秒、スーパーソフトとウルトラソフトの差は0.2秒とする)、燃料量(そのランの何周目に記録したかによって1周あたり0.05秒ずつ調整)、タイムを記録した時間帯(1日のなかで0.2秒の差)を考慮し、独自に正規化したタイムを導き出した。
このラップタイムとチーム間のタイム差は、「確定的な結論とはいえず、正確な数値ではないが、ある程度の状況は見えてくる」とアンダーソンは言う。
以下に、アンダーソンが独自に導き出したラップタイムの速い順に10チームを並べ、彼の短評を添えた。
1. フェラーリ 1分19秒202
「トラックサイドで見ている限り、どのタイヤをつけていてもフェラーリのマシンが最も安定していた。非常に精巧に作りこまれたマシンで、一貫したラインで走ることができ、バランスもよかった」
「ライバルチームは、フェラーリのタイムがよかったのは燃料量が少なかったせいだと示唆しており、彼らは我々が知らない情報を持っているのかもしれないが、実際にコース脇で見ている限りでは極端に軽くしているようには思えなかった。それに、シーズン開幕を間近にして、重要な作業に当たらずに燃料量を少なくして走っていたのだとしたら愚かだ」
「フェラーリは昨年から大きく前進したと判断していい」
2. メルセデス 1分19秒555
「非常にいいマシンであるのは確かだ。しかしソフトタイヤではよさそうだったが、レースシミュレーション中のミディアムではそれほどでもなく、課題を抱えているように思える」
「新車には少しアンダーステア傾向があるのではないか。ただ、ウルトラソフトでベストタイムを記録した際のバルテリ・ボッタスには余力があり、ルイス・ハミルトンには速いラップを出す機会はなかった」
「極めていいマシンには見えるが、ターン3進入でふたりが非常に慎重にアプローチし、立ち上がりでスロットルを開けるのを遅らせていたのが奇妙に思えた」
3. ルノー 1分20秒146
「昨年に比べて非常に大きく進歩した。フェラーリやメルセデス、さらにレッドブルほどのグリップはないが、しっかりしたマシンであることは間違いない。トップ3に入るのは難しいだろうが、その下のグループでは上位に来るだろう」
4. レッドブル 1分20秒353
「レッドブルは、フェラーリやメルセデスとは異なり、非常にシンプルなパッケージにしたと述べているが、このまま行くとは思えない。開幕戦にはもっといろいろなものを導入してきて、上位に来るだろう」
「まだレッドブルのマシンの実力を目にしてはいないが、彼らがトップに立つにはあと0.2秒か0.3秒を見つける必要があると思われる。そしてレッドブルなら必ずそれを見つけ出すだろう」
5. ウイリアムズ 1分20秒876
「ベテランのフェリペ・マッサが乗ったのは初日だけ、2日目と3日目はルーキー、ランス・ストロールがコースオフとクラッシュを繰り返した。経験不足のせいだ。だがストロールは優れたドライバーであり、これから成長するだろう」
「マシン自体の状況はまずまずに見える。中団の4位争いは接戦になりそうだが、ウイリアムズはその戦いをリードしていくはずだ。とはいえ経験あるドライバーがひとりしかいないことで苦労する可能性がある」
6. ザウバー 1分21秒374
「ザウバーは実際にはこの位置にいるわけではないと思う。このラップタイムは燃料を非常に少なくして出したものなのではないだろうか」
「コース上の走りを見ている限りでは、6番手に来るほどのグリップレベルはなさそうだった。私の独自ルールに従って導き出したタイムではこうなったが、1年落ちのフェラーリ・パワーユニットを積んでいることもあり、最下位と断言できないにしても実際にはもっと後方の位置に来るものと確信している」
7. ハース 1分21秒818
「このタイムが示すよりもずっといいマシンだ。フェラーリの新車との類似が指摘されているが、バージボードとターニングベーンの処理は非常に似ている一方で、サイドポッドは全く異なる」
「F1参戦2年目でありながら、非常にプロフェッショナルなチームで、中団の4位争いに加わることができそうだ。テスト期間のなかで、距離を重ねるにつれて進歩している」
8. フォース・インディア 1分22秒059
「全体的に今回のテスト期間ではぱっとしなかった。初日にはトラブルに見舞われたこともあり、3日目には開発ドライバーではなくレースドライバーを使ってもっとしっかりマシンの開発作業をすべきだった」
「ただ、マシン自体はまずまずだ。バランスがいい、きちんとしたマシンだと思う。ただ、もう少し速さが欲しい」
9. トロロッソ 1分22秒156
「2回目のテストでたくさんの新パーツを取り入れる予定だと聞いてはいるが、ジェームズ・キーが難しい顔をしているところを何度か見かけた。テクニカルディレクターのそういう様子を見て、私自分の経験から、彼らは何か問題を抱えているのではないかと思った」
「コース脇で初日に見たときには、しっかりしたマシンに思えたが、そこから進歩していない。これから改善する必要があるだろう」
10. マクラーレン 1分22秒448
「なんてことだ。ホンダに問題が発生し、マクラーレンは走行時間を大量に失った。エンジンが問題を抱えているのは明らかであり、これにしっかり対処する必要がある。しかしコース脇で実際に走りを見た者なら、このマシンは、最速の部類に入るライバルたちだけでなく、他の大部分のマシンよりも劣っていることが分かっただろう」
「3日目、フェルナンド・アロンソが走っているのを見ていると、ターン1、2、3で非常に苦しんでいた。ここをうまく抜けられるならば、ラップの残りはマシンをうまくコントロールして走れるという確信を持てる。だが、アロンソはそういう感触は持てなかったのではないかと私は考える。ターン2と3の間ではパワーをかけられず、ターンインにおいても、スロットルを開ける際にも、非常に注意深く対処しなければならなかった」
「つまり単に『非常に優れたシャシーがエンジンに足を引っ張られている』という状況ではない。パッケージ全体の問題だ。マクラーレンとホンダの両方が真剣に取り組んでいく必要がある」