トップへ

KOHH、Japandroids、チャンス……a flood of circle佐々木亮介がロック・ヒップホップ新譜を紹介

2017年03月05日 22:53  リアルサウンド

リアルサウンド

KOHH『DIRTII[初回限定盤]』(GUNSMITH PRODUCTION)

 当サイトの人気連載企画「新譜キュレーション」。今回は、1月に新アルバム『NEW TRIBE』をリリースした a flood of circleの佐々木 亮介(Vo/Gt)に、最近よく聴いているというロックやヒップホップの新譜についてじっくりと語ってもらった。(リアルサウンド編集部)


・KOHH「Die Young」(『DIRTII』収録)&Japandroids「Near To The Wild Heart Of Life」(『Near To The Wild Heart Of Life』表題曲)


 最近はKOHHの「Die Young」のように、“ギターを弾かない人のギターの使い方”に興味があって。ギターをギターと思わない勇気を俺も持ちたいな、と考えちゃうこともあります。純粋にギターがカッコいいなと感じたのは、Japandroidsの新曲「Near To The Wild Heart Of Life」。若手~中堅だと最近はWhite Lungが孤軍奮闘していたところにJapandroidsが帰ってきて、まだまだ健在だなと。泣きのコード進行なので、日本のバンドが好きな人は多分好きだと思います。Japandroidsはドラムとギターの2ピースだから、ベースの分の音を補おうと低い音を出しているんですけど、ギターの高音も気持ち良い音だし、そこにさらに分厚いコーラスを入れているので、音が目一杯詰まっているんです。


 (参考:「ギターとビートでまだ面白いことができる」a flood of circleが敏腕エンジニアと探究した“強さ”


・チャイルディッシュ・ガンビーノ『Awaken, My Love!』


 あと、最近はチャイルディッシュ・ガンビーノもよく聴いています。彼のことはこれまで詳しくは知らなくて、1つ前のアルバム『Because the Internet』は“ヒップホップの人”というイメージから入っていったんだけど、サウンドも声もキャラクターの幅が広くて。「なんでこの人、こんなに器用なんだろう?“憑依している”ような感じがするな」と気になってプロフィールを調べたら、俳優もやっている人だと後から知って納得。新しいアルバム『Awaken, My Love!』はより“憑依している”感じがありました。ラップすらしていないし、コードもあえて不安定なものばかり使っていて、前の『Because the Internet』から更に幅広くなっていて、どれが本当の彼なのかわからないところが面白いんです。


・ジェイ・ソム「The Bus Song」(『Everybody Works』収録)


 ジェイ・ソムという女性シンガーの「The Bus Song」は爽やかな曲で、声が可愛いんです。まだあまり知られていないアーティストなのですが、偶然見つけて衝撃を受けました。アコースティックな雰囲気から始まって、メジャーキーの曲だけど肝心なところにマイナーコードを使う感じにはWeezer的なエモさも感じます。どこか昨年にMitskiが出したアルバム『Puberty 2』に近い部分があるかもしれません。Mitskiに関しては「Your Best American Girl」の歌詞を見たとき泣きそうになりましたし、テレビ番組でBIGYUKIと一緒に演奏しているのを観て「日本人かっこいいところにいるなあ!」と。


・ヨー・ガッティ/ Yo Gotti「Castro (feat. Kanye West, Big Sean, Quavo & 2 Chainz)」(『White Friday』収録)


俺、今度メンフィス(アメリカ・テネシー州)に行くんです。メンフィスといえばブルースですけど、実はいま、現地ではラッパーが盛り上がっているらしくて。メンフィス出身のヨー・ガッティが、カニエ・ウェストをフィーチャリングしている「Castro (feat. Kanye West, Big Sean, Quavo & 2 Chainz)」という曲が格好良い。(メンフィスで活躍したブルースマンの)ロバート・ジョンソンから80年でここまで来るんだ、と驚きました。ヨー・ガッティ、いかにも悪そうな顔でしょう(笑)。でもとても今っぽい、トラップ的な曲なんです。


・チャンス・ザ・ラッパー「Same Drugs」(『Coloring Book』収録)


 今まで英語詞を避けてきたんですが、実は昨年ロンドンに行ってから、洋楽の新譜を英語でコピーしています。それが自分にとってどんな意味があるかはわかりませんが、サウンドをどうトレースするかというのを考えた時に、歌なのかもと思ったんです。あとは最近、ボイトレに行き始めたのもありますし、ゴスペルブームですし……アクションに勝るものはない、と思って。それをやる中で、チャンス・ザ・ラッパー(以下:チャンス)は本当に歌が上手いな、と思いました。なによりピッチが良くて、聴いていて気持ちいいんですよ。俺はどうやらピッチの良いラッパーが好きみたいで、KOHHやカニエ・ウェスト、鎮座DOPENESSもそれに当てはまる。チャンスがホワイトハウスで「Same Drugs」をピアノで弾き語りしている動画を見た時、「こんなに歌が上手いラッパーがいるのか!」と衝撃を受けました。ヒップホップにゴスペルを取り入れるなんて5年くらい前までなかったのに、手法はここ最近で一気にメジャーなものになりましたよね。その影響もあってか、ヒップホップに登場するコード感も数年でどんどん変わっている気がする。いま、チャンスのような歌唱力の高いラッパーが強いのは、ゴスペルとビートの関係性が、さらに新たなフェーズへ進んでいるからだと思うんですよ。(構成=村上夏菜)