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GLAY TAKURO、ソロツアーで広げた表現の可能性 “地図なき旅”終えたZepp Tokyo公演

2017年03月05日 15:02  リアルサウンド

リアルサウンド

TAKURO『Journey without a map 2017』Zepp Tokyo公演

 ロックバンド・GLAYのギタリストTAKUROが2月28日、東京・お台場Zepp Tokyoでライブツアー『Journey without a map 2017』の最終公演を行った。本ツアーは、彼の初のソロアルバム『Journey without a map』を携え、全国9カ所、15会場にて開催されたもの。B'zの松本孝弘をプロデューサーに迎えて制作されたアルバムは、GLAYとは打って変わってジャジーかつブルージーなサウンド。そのためツアーサポートには、レコーディングにも参加したTOSHI NAGAI(Dr)、川村ケン(Piano)、前田サラ(Sax)、岩永真奈(B)ら、強力な布陣が脇を固めていた。


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 開演時間になると客電が落ち、サポートメンバー4人がステージに登場、まずは肩慣らしに「夢の途中に」をセッション。疾走感たっぷりにスウィングするドラムの上で、ベース、ピアノ、サックスがソロを回し、初っ端からからフルスロットルの熱演に会場からは熱い拍手が飛ぶ。そんな中、彼らに拍手を送りながら現れたTAKUROは、「ようこそいらっしゃいました!」と客席に声をかけ、「Lullaby」で軽やかなギターを奏で始めた。続く「Autumn Rain」でも、甘いクリーントーンの音色を用いて歌心たっぷりのギターを披露。ある雑誌で彼はギターについて、「素晴らしいシンガーを、パートナーとして手に入れたような気持ち」と語っていたが、どこかGLAYにも通じるポップで美しいメロディを紡ぎ出すギターは、TAKUROにとって「もう一つの声」なのだろう。


「50歳になったらソロアルバムを作り、GLAYのツアーで訪れた土地へ行き、地元のミュージシャンとジャズバーで夜な夜なセッションしたい」


 2年前、プロデューサーの松本にそう語り、「それなら今から作ろう」と彼に背中を押される形で本作を作り始めたというTAKURO。その夢を叶えるためか、今回のツアーでは各地で彼と所縁のあるミュージシャンと、「サプライズ・セッション」を時おり行ってきた。例えば品川ステラボールでは、GLAYのHIASHI(G)が登場。その後もthe pillowsの真鍋吉明(G)らとのセッションを経て最終日の前日には、遂にTAKUROが尊敬してやまない大先輩、SUGIZO(LUNA SEA/X JAPAN、G)が降臨したという。「スギさまは、いい匂いがしたぞ!」と興奮気味に話したあと、「人生に地図はない。だけど、こうして憧れのスギさまと共にプレイが出来た俺の人生は、間違ってなかった!」と熱弁した。


「次の曲では、みなさんを地図なき旅へお連れします。ナビゲーターはベースの真奈! さあ、どの国へ連れてってくれる?」


 そんなTAKUROのイントロデュースを受け、ウッドベースをタッピングしながらインプロビゼーションを繰り広げる岩永。そこから中東風のテーマが印象的な「Istanbul Night」へとなだれ込んだ。TAKUROはステージ狭しと動きまわり、体を弓のように反らせながら熱いソロを展開する。負けじと応戦するサックスの前田。路上で練習しているところを中村達也(LOSALIOS etc.)に見初められ、彼の属するthe dayにサポートで加わるなど、今最も注目を集める若手サックス奏者である彼女のプレイは、このツアーでも大きな見どころの一つだった。TAKUROのギターにそっと寄り添い、かと思えば獰猛な獣のように襲いかかる。思わずTAKUROも、「あまりの熱いブロウに俺の尻が焼けるかと思ったぜ!」と、嬉しそうな悲鳴をあげていた。


 まるでスティーヴィー・ワンダーの名曲「Don't You Worry 'bout A Thing」を思わせるような、ラテン風味のイントロからスウィングビートへ展開する「Francis Elena」、雨だれのような美しいピアノがショパンの「別れの曲」を思わせ、中盤からは一転して裏打ちのスカビートになだれ込む「Fear Favors」、ピアノ本体の弦を直接はじく、現代音楽的なアプローチが鮮烈だった「Guess Who」など、一癖も二癖もある仕掛けがどの楽曲にもふんだんに盛り込まれている。オーディエンスとのコミュニケーションも非常に親密で、「Fear & Favors」では中盤にある難解なキメを、見事に合わせてひときわ大きな歓声が巻き起こった。


 そして「RIOT」では、“本日最大の見せ場”といってもいいTOSHIによるドラムソロが、およそ3分に渡って繰り広げられた。まるで彼自身がドラムの一部になったような超絶プレイ。再びテーマに戻った時には、まるで映画『セッション』のラストシーンのような、途轍もないカタルシスが訪れる。20年以上、GLAYのサポートドラマーを務めてきたTOSHIの渾身のプレイに、「もし神様がいるなら、彼を来世ではドラムにしてあげてください!」と、TAKUROは最大の賛辞を送った。


 終盤は、女子十二楽坊への提供曲「流転」のセルフカバー、「自分が何者でもなかった頃に戻してくれる」という彼の故郷をテーマにした「函館日和」を演奏。本編が終わり、アンコールに応えて再びステージに上がったTAKUROは、「ツアー中は、今回のソロ活動をGLAYの活動にどう貢献できるかばかり考えていた」と話した。


「一つ一つの音に魂を込めることが、どんなに難しいことかを痛感させられました。あんな素晴らしいメンバーに囲まれながら、GLAYの一員でいるのってしんどいんだぞ!」


 おどけながらそう言うと、会場は温かい拍手と笑いに包まれた。最後は「Journey without a map」で、Neil Young & Crazy Horseのような熱い演奏をバックに、この日初めての熱唱を披露した。


 イスタンブールから函館、ヨーロッパそしてアメリカと渡り、地図なき旅に終止符を打ったTAKURO。このツアーでまた一段とギターの可能性を広げた彼が、それをGLAYにどうフィードバックし、ネクストステージを見せてくれるのか。今から楽しみだ。(黒田隆憲)