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SPECIAL OTHERS × GEN(04 Limited Sazabys)、コラボで見えた互いの価値観「音楽が一番よくなる方法を探す」

2017年03月05日 13:03  リアルサウンド

リアルサウンド

SPECIAL OTHERS × GEN(04 Limited Sazabys)(写真=外林 健太)

 インストバンドの雄・SPECIAL OTHERSが、メジャーデビュー10周年イヤーの総決算として、『SPECIAL OTHERS Ⅱ』を3月1日にリリースする。バンドにとってゆかりの深い“SPECIAL OTHERS(特別な他人)”であるボーカリストとコラボレーションした歌モノ企画盤『SPECIAL OTHERS』。2011年に第一弾がリリースされ、今作は第二弾となる。幅広い交友関係を持つ彼ららしく、参加アーティストも豪華だ。今回リアルサウンドでは、その中からGEN(04 Limited Sazabys)を迎え、スペアザの4人×GENの座談会を行った。GENが初めて明かす秘話も飛び出した、充実のテキストとなっている。なお、今作の初回限定盤は、初期の名曲「BEN」「Uncle John」のリテイクを含む、全19曲収録の2枚組ベスト盤が付属した、豪華デジパック仕様。「10周年にして入門編」になっているので、ぜひチェックしてほしい。(高橋美穂)


・「第一弾が終わった時から、「次この人!」って話してた」(宮原“TOYIN”良太)


ーーまず、コラボ作品集の第二弾を作った意図から伺えますか?


宮原“TOYIN”良太(以下、宮原):10周年企画を締め括るには何が相応しいのか? と、考えた時に、やはりコラボ盤をもう一回やるのがいいんじゃないかと。


又吉“SEGUN”優也(以下、又吉):そもそも第一弾を作った直後から、第二弾のことをみんなで話してたんです。


ーーそうなんですね! まだまだ一緒にやりたい人がいたからですか?


又吉:コラボ盤自体が、凄く楽しくて。これは定期的にやりたいね、ってなりましたね。


宮原:第一弾が終わった時から、すでに「次この人!」っていうのは話してました。


芹澤“REMI”優真(以下、芹澤):楽しいんですよ。コラボを誰とするのか、どんな曲をするのかって話すのが。遊びみたいになって、ちょくちょく話してましたね。


ーーその時に名前が出てた方も、今回は参加されているんですか?


宮原:入ってますね。


ーーおおお。そんなコラボ相手も豪華ですが、第一弾は同世代が多い印象だったんですけど、今回はより世代もジャンルも幅広くなっていませんか?


宮原:それは偶然ですね。たまたま年齢の振り幅が出て。


柳下“DAYO”武史(以下、柳下):結果としてバランスが取れたっていう。(斉藤)和義さんは、第一弾に入っているキヨサク(MONGOL800)くんとのコラボをフェスで演奏しているのを袖で見ていてくれて、「俺にも歌わせてよ」って言ってくれたのがきっかけだったので。だから第一弾から繋がっているんですよね。


宮原:今回のコラボ盤の振り幅は、和義さんとGENの力が大きい気がする。


芹澤:でも、(菅原)卓郎(9mm Parabellum Bullet)も、一つ世代は下だよね。


ーーそれを言うなら、RIP SLYMEもジャンルや世代を飛び越えている、象徴的な存在で。


芹澤:意外と年は近いんですけどね(笑)。


柳下:キャリアが長いっていう。


芹澤:RIPが揃うと貫禄ありましたよ。こりゃモテるわ!って(笑)。


ーーまた、さっき名前が出てきた菅原さんと山田(将司)さん(THE BACK HORN)が参加している「マイルストーン」は、今作ならではですよね。この二人を一緒に歌わせられるのは、スペアザならではというか。


宮原:そうですね。卓郎はずっと親交があって、9mmのツアーに出たこともあって。


柳下:結構前ね、2008年にツーマンで。


宮原:だから、第一弾を作り終えた段階で、次にコラボ盤を作るなら卓郎を誘おうって話してたんですけど、そこから、山田くんと卓郎が混ざった時にどうなるんだ?って提案が出て、こうなりました。


ーースペアザの演奏に、棘と艶を持つ二人のボーカリストの声がのる感じは、凄く新鮮でした。


宮原:俺たちも想像がつかなかったんですけど、そういうものの方が、だいたい面白く仕上がるんで。


ーーそしてハマケンさん(浜野謙太、在日ファンク)の「かませ犬」は、スペアザ流ファンクになっていて。


芹澤:ハマケンのキャラクターありきですよね。でも、俺らにはああいうアフロな曲があったんです、アルバムの中に一曲ぐらい。それが俺らのファンに刺さらないことこの上なくて。


全員:(苦笑)。


芹澤:俺らの熱心なファンでも知らないくらいの曲になってしまっているので、それに日の目を浴びせるには、ハマケンは格好のキャラクターだったっていう。


柳下:まさにかませ犬(笑)。


・「絆で結ばれていて抜け出せない、そこを「loop」っていう言葉にした」(GEN)


ーーなるほど(笑)。そして、やっとご登場いただきますが、GENさんの「loop」も、GENさんが04 Limited Sazabysでは見せたことのない面を見せていて、とても新鮮でした。


GEN:もっとアップテンポな曲を歌うのかな?と思っていたので、デモが送られてきた時に「遅い!?」と思いました(笑)。


4人:ははははは!


GEN:これはどうしようかな、って。だから、普段見せているような、声を張って速く歌う感じじゃないようにしようとは思いましたね。


宮原:自分たち的にも、フォーリミとは違うテイストにしようとは思っていましたね。その方が今回は面白いかなって。相手に寄せていくパターンの曲もあるんだけどね。


芹澤:後輩だし、やれって言えばやるだろうと(笑)。


ーーこの変化球を打てるか!と(笑)。でも、GENさんなら打てるだろうという確信があったからこそ投げたんですよね?


宮原:でも、確信まではなかったんです。GENのこういう一面を見たことがなかったので。


柳下:そもそも、自分たちの中でもそんなにないタイプの曲だったので。


ーー両者にとって実験的な曲だったんですね。


芹澤:そうですね。


ーーじゃあGENさんは、どういう解釈でこの変化球を打ち返そうと思いました?


GEN:デモを聴いた時の第一印象が「縁側」だったんです。『茶の味』(2004年/石井克人監督)っていう映画があるじゃないですか? ああいうテンション感だと思ったんです。子育てとかが終わった老夫婦が、温かい縁側で人生の道のりを振り返っているようなイメージが浮かんだんです。


ーーそこまで詳細に!


GEN:はい。で、実はこの歌詞、僕の祖父母のことを書いているんですよ。


4人:へえー!


GEN:実は去年、祖父母は死んでしまって。僕が実家に帰ると、いつも祖父母はケンカしてたんですね。ほんっと仲悪いなって思ってて。じいちゃんは酒飲むと、ばあちゃんに悪口を言うし。それが、ある日おばあちゃんが体調を崩して、認知症のようになったんです。そうしたらおじいちゃんがめちゃめちゃしっかりして、ご飯とか作ってあげてて。あの荒くれ者だったじいちゃんが!? やっぱり愛があるんだなって思ってたんですけど、結局おばあちゃんは亡くなっちゃって。それでじいちゃんは落ち込んでしまって、その一カ月後くらいに死んじゃったんです。また、死んだ後にわかったことがあって。実は二人は、一回別れていたんですよ。親父が生まれる前に離婚してて、その後に再婚したっていう。


又吉:凄い話だねえ。


GEN:だから、僕の印象では、二人は仲が悪そうだったけど、実は凄い絆で結ばれてたんだな……っていうことを、この「loop」の歌詞にしました。


芹澤:そんなテーマがあったんだ。


宮原:大事な思い出を俺たちの曲にのせてくれて、ありがたいわ。


GEN:なので、じいちゃんばあちゃんのことを、葬式とかもライブで行けなかったんで、歌にできて嬉しかったです。


ーーこの凄い話を、今までみなさんに言ってなかったんですか?


GEN:あまり言ってなかったです。


芹澤:あまりっていうか、全然聞いてなかったよ! 老夫婦、みたいなイメージは聞いていたけれど。俺らにはこの歌詞はそういう歌詞に聴こえていないっていうのも、また面白くて。俺は、若い奴の書く歌詞だなって思ってたんですよね。恋愛のようなニュアンスがあるなって……まあ、本当に老夫婦の恋愛の歌詞ではあるんだけど。こういうフレッシュな歌詞って若いヤツしか書けないな、って思っていたんです。


ーー確かに、キラキラしていますよね。でも、GENさんの話を聞いてから歌詞を聴くと、なるほど!と思えるフレーズがたくさんあって。


GEN:そうですね。ケンカばっかりしていても、絆で結ばれていて抜け出せないっていうか、そこを僕は「loop」っていう言葉にして。〈人生レベルで 狂わせる / 解けない呪い またかけ直す〉とか。


宮原:うんうん、そういうことね。


GEN:“魔法より呪い”みたいな感じかな。いいことだけじゃない。


芹澤:深いじゃないか!


GEN:ありがとうございます。


ーーそういう大事なテーマをこの曲に落とし込んだということは、このコラボに対して思い入れが深かったからなんでしょうか。


GEN:そうですね。僕はバンドをはじめる前からスペアザのファンだったので、一緒にできてほんとに嬉しいですし、尊敬している人たちと一緒に作品を作れることは幸せなことなので。


ーージャンル的には離れているように見えるじゃないですか。そんなGENさんから見て、スペアザのどんなところのファンだったんですか? 愛の告白みたいですけど(笑)。


宮原:目の前で聞くの恥ずかしいな(笑)。


又吉:言いづらいだろ(笑)。


GEN:(笑)。多幸感、ですかね。ガツガツしてないじゃないですか。僕らの音楽はアタックも強くてキメもカチカチしてて、そこにもカッコよさはあるんですけど、スペアザはなめらかというか、角がない感じがして。


・「我を通すというよりは、プレゼン」(芹澤 "REMI" 優真)


ーーいちファンから作品に参加するまでに至ったのは、夢のような物語だと思うのですが、そもそも出会いはいつだったんでしょう。


芹澤:『COUNTDOWN JAPAN』かな? そこで(フォーリミの)マネージャーに会って。


宮原:実はそのマネージャーと同級生なんです。


芹澤:一緒にバンドやってて、高校の中でも一番仲がよかったんです。


ーースペアザは4人とも同じ高校ですから、みんなと仲良かったと。


宮原:99年のフジロックにも行ったし、一緒にあの頃の音楽体験をしていたんです。(マネージャーから)いろんな音楽を教えてもらったよな。Rage Against the Machineとか。


柳下:元々は、ヒットチャートのコピーバンドだったからね。


ーーマネージャーさんも、10周年イヤーに欠かせない、スペアザの原点を作った人物じゃないですか!


芹澤:そうなんです。そんなヤツと再会した時に、「秘蔵のバンドがいるんだ」って、フォーリミを聴かせてもらって、これはいいバンドだ、売れそうだし仲良くなりてえと(笑)。


宮原:まだ、あんとき売れてなかったもんね。


ーーそれ、何年前くらいなんですか?


芹澤:3年前くらい? 武道館とか見えてない頃だよね。


GEN:2014年末です。


芹澤:『monolith』(2104年2月リリース/3rdミニアルバム)を聴いたのかな。これは他にないわ、メロコアなのにハイトーン……ハイトーンなんてもんじゃねえぞ!って。また、声に耳がいきがちだけど、バックボーンにメロコアがあることがわかって。今の若いバンドのバックボーンって、J-ROCKに聴こえることが多いですけど、フォーリミからはちゃんとメロコアの作法を感じたんですよね。


ーースペアザは、メロコアの作法に厳しい世代ですもんね。


宮原:そうそう、ハイスタを聴いて育った世代ですから。


芹澤:ちゃんと輩っぽくないとメロコアはダメだと思ってGENと喋ったら、ちゃんと輩だったし(笑)。


ーーそこから交流がはじまって、フォーリミが地元で主催している『YON FES 2016』にスペアザが出たりするようになっていったと。


GEN:そうですね。ちょっとずつフェスとかでもご一緒するようになっていって、そのたびに、またコラボ盤を作ることがあったら誘ってくださいねって言ってたんですよ。でも、まだそんなに決まってないから、って言われていたんですけど、今回ほんとに誘ってくれたんで、キタ!って。


宮原:その時、どんな曲をやりたいって話もしたかもね。「YON FES」の時だっけ。


GEN:そうですね。


宮原:第一弾でKj(Dragon Ash)が歌ってる「Sailin’」が好きだから、ああいうのがいいっす! って言ってたね。でも今回歌ったのは全然違うっていう(笑)。


GEN:(笑)。あの曲で、この組み合わせは素晴らしい! って思いましたね。(MVの揃いの)衣装を着たい! とまで思いましたから(笑)。今回の曲の場合は縁側のイメージだから、作務衣かな? とか(笑)。RIP SLYMEがお寺で修行してるMVの「BLUE BE-BOP」みたいな。


宮原:あれ、うちの近くの寺(笑)。


GEN:そうなんですか?(笑)。


宮原:今からMV撮りたいね!


ーー話が発展していってますが(笑)。そもそも今回GENさんは、フォーリミのメンバー以外の人と制作をすること自体が初めてだったわけですよね。緊張も大きかったんじゃないんですか?


GEN:そうですね。ギリギリまで悩みました。先輩の作品だし、錚々たるメンツが参加してますし、よくならなかったらどうしようと。


ーー曲作りやレコーディングの仕方も違うでしょうし、いろんなものを得られたんじゃないでしょうか。


GEN:そうですね。レコーディングの空気感もよくて、みんなが建設的にアイディアを出し合っていて。良太さんが中心なんですけど、「みんなはどっちがいいと思う?」「俺はこっち」って、出てきたアイデアを全部試していて、それがいいなって。


宮原:確かに全部試してるわ。


GEN:全員が話し合って決めていくんですよね。普通はギスギスすることもあると思うんですよ。でも、緩い感じで、全部を試しながら進めていくんですよね。


宮原:それは、俺たちが10年で培ってきたものかもしれないね。


ーーこういうスタイルだからこそ、10年続いてきたんでしょうね、スペアザは。ずっと民主主義的なやり方だったんですか?


宮原:最初はちょっと違ったのかもしれない。大ゲンカはないにしても、揉めることはあったんですよ。「俺はこっちのアレンジがいいんだ!」って。でも、実際にいろんなアイデアを試すと「あ、俺のいいと思っていたアレンジは違った」って気付くこともあって。だから、誰かが「これはよくないんじゃ?」って言うものも音を出してみて、やっぱダメだったら納得できるっていう。


又吉:あとは、「こんなに言うならしょうがないか」ってなることもあります。


芹澤:我を通すというよりは、プレゼンなんですよね。若い頃は自分を通したいがために音を置き去りにすることもあって。でも、今は俺より音が基準だから、この音がいいんだって思う時こそ主張するべきで。音楽が一番よくなる方法を探すっていう。


宮原:その通り。


芹澤:よくスポーツ選手が、「あなたはこの試合で活躍しましたね」って聞かれて「いや、チームが勝ったことが一番です」って答えるじゃないですか。その意味がよくわかる。スポーツ選手は若いうちから気付いてますよね。俺らは年の功で気付けたっていう。


GEN:意見が出しやすい環境もありますよね。こういうテンションで生まれたアイデアだから、こういう音楽になっているんだってわかりました。


ーーそれを現場で体感できたと。


GEN:そうですね。もっと他の人と作品を作ってみたいと思いました。


宮原:おおー。


ーーこれからの活躍も楽しみですね。


芹澤:フォーリミが売れてくれれば、俺らのアルバムも売れるし(笑)。


宮原:この経験を踏まえて、フォーリミはどんなにデカくなっても、俺らを誘ってくれると思う。


芹澤:ドームツアーの際に対バンとして呼んでくれればね(笑)。行けるんじゃないかなあ。


ーーお互いのいい関係性は「loop」のコーラスのハーモニーにも表れていますね。


GEN:一緒に歌えたのが、嬉しかったですね。スペアザのみなさんは歌うことに対して消極的なので。


宮原:そうだね(笑)。


又吉:上手くないからインストバンドなんだよ!(笑)。


柳下:GENが〈このまま どこまで〉を歌ってほしいって提案してくれて。


GEN:僕とスペアザの声が混ざったら素敵だなって思ったんです。よりコラボ感が出るなって。


宮原:聴いてると、楽しかったのを思い出すよね。


柳下:やってよかったよね。


GEN:しかも日本語をスペアザが歌うのって貴重ですよね。


芹澤:コラボでしか歌わないからね。


ーースペアザは3月からツアーがはじまりますね。しかも『BEST盤TOUR』なんですよね。


宮原:初心者に優しいツアーですよ。


芹澤:初回盤限定のベスト盤を聴けば、全力で楽しめると思います。


ーーこういったスタイルは珍しいですよね。


芹澤:ベスト盤をリリースすることが引っ掛かってて。全てにネガティブなイメージがあるわけじゃないんだけど、自分たちの過去をアーカイブすることに抵抗があって、10周年さえ最初は言いたくなかったんです。だから、ベスト盤はおまけ、くらいの意味も込めてますね。


宮原:ベスト盤を出す一番カッコいいやり方って、付属させるやり方かなって。


柳下:コラボ盤で初めて俺たちの音楽に触れる人にも……。


又吉:名刺代わりになりますしね。


ーーあとは、ツアーのどこかで、GENさんが入った形で「loop」を聴きたいですね。


宮原:やりたいですね。可能性は0じゃないからね。


芹澤:全ての会場で可能性は0じゃないからね。


GEN:どこが一番楽しいですかね?


宮原:どこだろうね~。


芹澤:全部いるかもしれないよ(笑)。


ーーおおお!?


GEN:ライブが被ってて可能性0な日はありますよ!(苦笑)。


宮原:可能性を感じるのは自由です!(笑)。


(取材・文=高橋美穂)