トップへ

パスピエ、ツアー初日のステージで自由自在に舞う「みんなが音のなかで自由になれれば」

2017年03月04日 19:02  リアルサウンド

リアルサウンド

パスピエ(写真=鳥居洋介)

1月にリリースした4thアルバム『&DNA』を携えたパスピエの全国ツアー『DANDANANDDNA』が、川崎CLUB CITTA’からスタートした。


 たくさんの人で埋まったフロアは、「“DANDANANDDNA”ツアーへようこそ」という大胡田なつき(Vo)の挨拶でグッと熱をあげる。『&DNA』のアートワークがモチーフとなっただろう大胡田のカラフルな衣装が、ステップを踏むたびにゆらりとはためいて、表情を変える。「1月にアルバムを出して、ライブでどうしたいか、みんなにどうしてほしいか考えながらリハーサルをしていた」と大胡田はMCで語り、「みんなが、音のなかで自由になれればいいなと思った」と今回のライブへの思いを告げる。そして一気にアクセルを踏み込むように、「永すぎた春」へ突入した。トランス感のあるダンサブルなこの曲は、ライブではよりパスピエ節たる異空のムードが漂う。心地よくも、もののけと戯れるような不思議な浮遊感があって、アンサンブルのダイナミクスで独自の世界を濃く深くしていく。テクニカルなやおたくやのドラムを背に受けて、ギターの三澤勝洸とベースの露崎義邦がステージ前に飛び出してプレイし、アグレッシブな轟音で観客を痺れさせる。成田ハネダの華麗な鍵盤さばきもまた然り。中盤の曲は、プログレッシブな“ロックバンド”としての醍醐味を存分に味わわせる展開で、これまでの作品の曲が過去から今へ、新しい変化を遂げる場面も見られた。


「今回のアルバム『&DNA』は、作品を重ねてきていろんな時代のパスピエがあるなか、結成して8年やってきたバンドをどう見せるのか、また違う一面を出せたアルバムで。それも過去があるからこそできたアルバム。ライブではどうなるかと思ったけど、お客さんがこうして自由に体を動かしていてよかった」と成田はMCする。また「年表で見ても、楽しいパスピエでありたい。いろんなグラデーションのパスピエを楽しんでほしい」と付け加えた。


 現実と非現実をシームレスに行き来するようなシュール世界を緻密に描くポップ性と、タフに磨き上げたアンサンブルの肉体性、ファットなビートひとつで景色を変えるロックな姿勢。そのすべてを飲み込んで、バンドの血肉としたのがアルバム『&DNA』だ。そしてこのライブでは、バンドが解き放たれたように四肢を揺らし、声をあげ、自由自在にステージで舞っている。そんな印象を受けた。観客もまた、曲によってジャンプをしたり、クラップをしたり、ゆらゆらと体を揺らしたり、声をあげたりと思うままに音楽を味わった。ライブハウスという空間での、濃密な距離感も心地よいツアーだ。ニュー・アルバム『&DNA』と、ライブ定番曲やこれまでの作品からの曲も織り交ぜたセットリストに加え、初日という緊張感も程よいスパイスで、高いボルテージのまま走り切り、やおたくやの「ツアー、行ってきまーす!」の声で幕を閉じた。パスピエはここから5月まで、全国津々浦々を巡る旅に出る。(吉羽さおり)