パワーユニット開発に制限をかけるルールであった「トークン制度」が、2017年からは撤廃。自由競争が得られたことで、ホンダは過去2年のコンセプトとは決別する道を選んだ。パワーユニットの全面刷新。
核となるエンジン(ICE)は低重心化を含んだ新設計とし、詳細は語られていないが、ターボチャージャー(TC)の仕様やレイアウトにも手が入れられたとされる。また、制御系技術はともかく、エネルギー回生システム(ERS)の関連パーツも一新が行なわれた。すべてを、変えた。
この、すべてを変えることに、ホンダの当事者たちも「リスクはある」と覚悟していた。そしてテスト初日、2日目と、ホンダの“第2世代”パワーユニットは相次いでトラブルを出し、いずれも交換作業を強いられる。
初日トラブルはオイルタンクの不備と特定され、テスト期間中に現場で対処が施された。だが、2日目に発生したトラブルの解明にはいたらず。周回数は大きく制限された。
3日目と4日目はほぼトラブルフリーで走行を重ね、テストプログラムを進めていったが、少なくとも初回テストの日程では、真のパフォーマンスレベルは見えてこない。それは、シャシーについてもだ。ドライバーたちは好感触を口にしているが。
空力については、随所に攻めの姿勢がのぞく。ノーズ処理にこそ特色はないが、注目すべきはその後方だ。フロントウイングのステーは前後の幅が長く採られたもので、左右に3カ所ずつの開口がある。
本来ノーズ脇で逃げるはずの気流を、ここから車体下に向けて採り込む。レッドブルのノーズ先端開口もしかり、フロアに向かう空気量がこれで増すわけだ。それを異なるアプローチで行なっている。
フロントウイングに関しては、新規定に合わせて左右の後退角がつくものの、翼形や構成については昨年終盤戦の初回フリー走行でテストされていたデザインが、ほぼ踏襲されている。具体的に言うと、昨年までの標準仕様であった翼端板近くでのメインプレーンの深い上への折り返しが解消されたタイプだ。
リヤウイングも同様で、翼形にはいまのところ、既存の仕様からの主立った進化はない。ただ、翼端板デザインはすでにテストの初期段階から、新思想が折り込まれたものだ。タイヤから少し上の位置に複数の大胆な開口処理を持ち、気流を内側に引き込んで制御する。その手法は、完全に他車とは一線を画するものだ。
シャシー本体のボディワークは左右の幅をいっぱいには使わず、サイドポンツーンのインテークダクト位置が極めてコンパクトにまとまる。下の気流径路は、バージボードを延長させるような形で広く後方までを囲い込む。
エンジンカウルのシャークフィン処理には現状のところ、他いくつかのチームで見られるようなウイング等の付属パーツは装備していない。形状やサイズも際立ったものではなく、このエリアの空力は軽視しているのか、それとも初期テストの仕様と割り切ったものなのかは不明。
前後ウイングの翼形にはいずれ新仕様が現れるだろうが、この周辺域についてはどうか。全車に等しく同じだが、これらシャシー本体から簡単に着脱が可能なパーツは開幕までにいくらでも交換が利く。
フロアパネルにも同様のことが言える。テストでの初期仕様は、リヤタイヤ前に切り欠きやフェンス設置等の何ら空力的処理が行なわれていない。手の内を隠していると勘繰られるデザインだった。
初回テストは低調。しかしながら、パワーユニットのトラブル絡みで出力をかなり絞ってのものだったはずだ。このクルマの真価は、第2回目の合同テストで問われることになる。