第1回バルセロナ合同テストの最終日は、散水車による人工的なウェット路面でのウエットタイヤのテストが予定されていた。とはいえ、スペインの早春の陽光は充分に強烈で、いくら水を撒いても路面はどんどん乾いて行く。午後からは完全に、ドライタイヤでの通常テストとなっていた。
この日ステアリングを握ったストフェル・バンドーンは、総合7番手。トラブルフリーで67周をこなし、まずまずの結果だった。1分22秒576の自己ベストも、前日のフェルナンド・アロンソを0.02秒しのぎ、4日間を通じたマクラーレン・ホンダの最速記録だった。
ところが、セッション終了後の囲み取材に現れたホンダF1プロジェクト長谷川祐介総責任者は、どうも表情が冴えない。やはり初日、2日目とパワーユニットにトラブルが続いたこと、特に2日目のそれはいまだ原因不明であり、深刻なものである可能性の高いことが影を落としているのか。
長谷川総責任者は「それ(パワーユニット交換を強いられたトラブル)はもちろん、頭の痛い問題です。ただ原因が根本的にわかっていなくても、部位は特定できてます。ですので来週のテストに向けては、その部分を強くするなど、信頼性アップのため何らかの対策を施すことになるでしょう」と述べる。
話をしばらく聞くうちに、長谷川総責任者はむしろ全体的なパフォーマンスのことをより気にしているように思えた。「もちろん、各チームの燃料搭載量などが異なるので一概には言えませんけど、それでもやっぱりペースが遅いよりは速い方がいいですよね」と語る。
「フェラーリもすごくいいですけど、何よりルノーが速いですね。一方で僕らのパフォーマンスは、見ている皆さんもパッとしないと思ってるんじゃないでしょうか」
確かに、マクラーレン・ホンダの新車MCL32は、順調に周回を重ねるようになってからでもとびきりの速さを発揮しているとは言いがたい。「速いクルマは、走り出しからいきなり速い」という昔からの格言は、おそらく今も有効だろう。
「1年前のテストと比べても、順位や周回数などは同じようなもので、そう変わらない。でも、去年と同じじゃダメだろうという思いは正直あります。信頼性も大事ですけど、速くなければ意味がない。でも、ヒットも打ったことのない選手が、『俺はホームランを打つ』と言ったところで、相手にしてもらえない。まずはヒットを打たないと」
長谷川総責任者はそこでようやく笑顔を見せ、最後にこう結んだ「パフォーマンスにがっかりしたとか、そういうのはまだ全然早いです。今回の結果に満足してないことはもちろんですが、まだまだこれから頑張って、パフォーマンスを上げて行きますよ」