2017年03月03日 17:53 弁護士ドットコム
昨年、ある1冊の本が話題になりました。漫画家・永田カビさんが実体験をもとに描いた「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」(イースト・プレス)が出版され、「こんな世界があるのか」という驚きが広がったのです。私もその1人ですが、実際に行った人は身近にはおらず、体験談を聞く機会はありませんでした。
【関連記事:ビジネスホテルの「1人部屋」を「ラブホ」代わりに――カップルが使うのは違法?】
そのチャンスがめぐってきたのは、「Wの悲喜劇~日本一過激なオンナのニュース~」(AbemaTV)の収録でした(放送は、3月4日午前0時から。タイムシフト視聴もできます)。どのようなサービスがあり、どんな客がくるのか? 実際に客として通う女性たち、「キャスト」と呼ばれる従業員の女性、店長の4人に、司会のSHELLYさんが深く話を聞いていきます。
収録では、女性たちが口々に「SHELLYさんも行ったら?」と勧め、既婚者であるSHELLYさんが、たじろぐ場面も。実際のところ、既婚者が「レズ風俗」に行くことも「浮気」になるのでしょうか。「風俗店」や「同性との不貞行為」については、知らないこともいっぱいです。
収録に参加後、弁護士ドットコム社内の弁護士に色々と質問してみました。
【人妻が「レズビアン風俗」に行ったら「浮気」になるの?】
回答)田上嘉一弁護士(「弁護士ドットコム」ゼネラルマネージャー)
質問者)山口紗貴子(「弁護士ドットコムニュース」副編集長)
●質問1「風俗店って、法的な問題は?」
ーーまず、そもそも風俗店って法的な問題はないのか気になっています。
よく女性から聞かれる質問ですね。「風俗店は、そもそも違法だし、なぜお店が営業できるの?」などと根拠なく言う方もいますが、日本の法律は風俗店を認めています。
正確にいえば、「風営法の届け出を出し、規則にしたがった運営をしていれば、問題ない」となります。
実際には「店舗の営業形態による」とか「性風俗店といっても、多種多少なサービスがある」とか、指摘したいことはあるのですが、今回は触れずにおきましょう。
ーーいずれにしても、風俗店そのものが、違法というわけではないと
そうです。適切な手続きをして営業するかぎり、問題はありません。
ーーでは、レズビアン風俗など同性向けの風俗も、届け出をすれば問題ないのですね
いえ、そうではありません。実は、同性向け風俗は、法の抜け穴になっているんです。
ーーどういうことですか
いわゆる「風俗店」に関しては、法律上は「性風俗関連特殊営業」といいまして、店舗のサービス内容ごとに、風営法2条5項から10項で定められています。でも、これは基本的には異性を対象とした性的なサービスを想定しているんです。つまり、「同性向け風俗店」については、「現行法の対象外」ということになります。
ーーでは、法律上の届け出などは一切不要ということでしょうか
法律上はそういうことになります。もっとも実際には、女性向け風俗を男性が利用することも見据えて、届け出を出しているお店が多いと聞いています。
●質問2「風俗店に行ったら、浮気になるの?」
ーー相手が同性でも、浮気になるのでしょうか?
法律用語では、浮気を「不貞行為」といいます。最高裁の判例では、この不貞行為の定義を次のように定めています(昭和48年)。
「配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」
これによれば、同性が相手でも「不貞行為になる」とは言えそうです。しかし、ここでいう「性的関係」とはあくまで異性との性交渉が想定されています。
実際に「夫に同性の恋人がいること」を理由に離婚を求めた裁判では、夫婦間で性生活がなくなっていたことや、同性愛であることを知ったことによって衝撃を受けたことなどが、「婚姻を継続しがたい重大な理由」にはあたると認めたものの、同性との性的関係そのものが「不貞行為」にあたるとは判断していません(昭和47年)。
ーーでは、「不貞行為」ではないのでしょうか。
いえ、当時とはLGBTに対する見方も変わってきています。
もし、僕が依頼者の方から「配偶者が、同性の恋人と性的関係を持っていた。離婚したい」と相談を受けたら、次のようにアドバイスしますね。
「判例では、同性との性行為が不貞行為にあたるとは認められていません。ですから、まずは『婚姻を継続しがたい重大な理由』にあたると主張しましょうか。それとあわせて、『いまの時代であれば、男女間であろうと、同性間であろうと、不貞行為にあたる』という主張をしましょう」
ーーレズビアン風俗には、既婚者のお客さんもいるそうです。既婚者の場合、風俗店でも「不貞」になってしまうのでしょうか。
法律は、風俗店の従業員を相手にした行為と、恋人などとの行為は区別して判断しません。時々、男性でも「風俗は浮気ではない」などと言う人もいるようですが、それはあくまで、その人の個人的な考えであって、法律が定めたルールではありません。
■『Wの悲喜劇~日本一過激なオンナのニュース~』
放送チャンネル:AbemaNews
放送URL&視聴予約はこちら:https://abema.tv/channels/abema-news/slots/92d5dTW6YzRuhq
(弁護士ドットコムニュース)