2017年03月03日 10:13 弁護士ドットコム
知人女性の車に衛星利用測位システム(GPS)機器を取り付けて、その行動を監視したなどとして、名古屋市の男性が2月下旬、ストーカー規制法違反の疑いで愛知県警に逮捕された。男性は警察の取調べに「女性が好きだった」と供述し、容疑を認めているという。
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報道によると、男性は昨年9月から今年2月にかけて、ネット上で知り合った女性の軽乗用車にGPS機器をひそかに取り付けて見張ったり、インターネットの掲示板に彼女の行動を監視していると思わせる投稿をしていた。
女性が今年2月初旬、車を修理した際に、GPS機器が取り付けられていることに気付き、県警に相談したことから発覚した。好意を抱いている相手の車にGPS機器を取り付けることは、ストーカー規制法上、どのように禁止されているのか。刑事事件にくわしい荒木樹弁護士に聞いた。
「ストーカー規制法では、恋愛感情などを充足する目的や、充足されなかったことの怨恨の目的でのつきまとい行為などを禁止しています。もし違反した場合は、刑事処罰を受けることがあります。
ストーカー行為については、ストーカー規制法に8つの項目が列挙されています。今回問題となったGPSによる監視行為は、ストーカー規制法で規定する『その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、またはその知り得る状態に置くこと』にあたると考えられます(同法2条1項2号)。
正確にいうと、他人の車にGPS装置を設置したうえで、その行動を監視していることをインターネット上に投稿して、被害者が知りうる状態に置いたことが、罪に問われるのです」
GPS装置を取り付ける行為は罪に問われないのか。
「実は、GPS装置を車などに設置する行為自体は、現行法で処罰されていません。
この点、警察の捜査手法でも問題になっていますが、警察が容疑者の車にGPS装置を取り付けること自体は犯罪ではないので、当然に違法捜査といえないのです。ただし、裁判官の令状が必要かどうかで問題となっており、現在、最高裁判所で争われています。
刑法の基本原則として、『罪刑法定主義』という考え方があります。法律に定められていない行為で処罰をされることは許されません」
ストーカー規制法では、つきまとったり、待ち伏せしたり、住居・勤務・学校などの付近において見張りをしたり、住居に押し掛けることなどが禁止されているが・・・。
「GPSを車に設置することは、『見張り』行為のようにも思えますが、法律上は『住居等の付近において見張りをする』行為を禁止しているのであって、GPSで監視するだけでは、該当しないのです。
同じような問題は、録音機や盗聴器、盗撮カメラの設置でも生じます。警察の捜査手法として使われる場合もありますが、合法行為との線引きが難しく、法律上の規制がないのが実情です」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
荒木 樹(あらき・たつる)弁護士
釧路弁護士会所属。1999年検事任官、東京地検、札幌地検等の勤務を経て、2010年退官。出身地である北海道帯広市で荒木法律事務所を開設し、民事・刑事を問わず、地元の事件を中心に取扱っている。
事務所名:荒木法律事務所
事務所URL:http://obihiro-law.jimdo.com