前日、3月1日のテスト3日目でクラッシュし、マシンにダメージを負って最終日の走行が心配されていたウイリアムズが、3月2日のテスト開始直前の午前8時56分に正式に最終日のテストに参加しないことを表明した。
3月1日にクラッシュしたのは、ルーキーのランス・ストロール。午後4時すぎに、5コーナーの出口でスピンしたストロールのマシンはコントロールを失い、タイヤバリアにクラッシュ。
フロントウイングだけでなく、左側のフロントサスペンションにもダメージを与えてしまった。このクラッシュでその日の残りのテストを終了しなければならなくなったウイリアムズだが、問題はそれだけにとどまらなかった。
事故の後、メディアの前に姿を現したパフォーマンスエンジニアリング責任者のロブ・スメドレーは「マシンの左側にひどいダメージがある。詳しく見ているところだが、どの程度ダメージが及んでいるのかは、現時点で正確に判断することはできない。判断するにはもう少し時間がかかる。したがって、最終日の木曜に走れるかどうかは、まだわからない」と、深刻な表情で語った。
1回目のテスト最終日となる3月2日は、開幕前に行われる人工的なウエットコンディション下で、2017年マシンにピレリの新しいウエットタイヤを装着して行われる最初で最後のウエットテストだけに、どのチームにとっても重要な一日。そのため、ウイリアムズは徹夜で新車FW40の修復にあたったが、テスト開始の午前9時までに間に合わず、ウエットテストを断念した。
チームによれば、「午後から2台目のマシンの修復作業を開始し、2回目のテストの初日となる3月7日の参加は問題ない」という。
ストロールのクラッシュによって、ウイリアムズは最終日のウエット走行を失ったが、問題はそれだけらとどまらない。ウイリアムズはマシンのコントロールだけでなくルーキーのストロールの制御も効かなくなっているからである。
当初、ウイリアムズはストロールの会見を3月1日のテスト終了直後の午後6時に行う予定だったが、事故ために遅れに遅れた。トラブルがあった日の会見が遅れることは珍しくない。テスト終了間際に止まったフェラーリも、セバスチャン・ベッテルの会見は5分ほど遅れて始まった。
ところが、ストロールは予定時間から1時間経ってもメディアの前に姿を現わすことはなかった。しかも、チームの広報がストロールがいると思われるエンジニアリングルームがあるトランスポーターと、メディアが待っているチームのモーターホームの間を右往左往。
まるでチームが腫れ物に触るかのような対応を露呈させてしまったのである。それはストロールよりも先に会見が行われたスメドレーのコメントからもうかがえる。普段はとてもフランクなスメドレーが、この日は言葉を選びながら、慎重に語っていた。
「ランスが犯したミスとは言い切れない。シフトアップしている過程だったし、タイヤが冷えていたのかもしれない。フェリペ(マッサ)だって、同じようなミスを1日に1、2回はすることもある。ドライバーを非難する前に、マシンのバランスをもう一度見直す作業をわれわれは行うべきだし、冷えた状況でもタイヤが機能する方法を見出すことのほうが重要だ」
さらに衝撃的だったのは、予定よりも約2時間遅れでようやく姿を見せたストロールが発したコメントだった。
ストロールは「クルマに問題があった。僕は被害者のようなものだ。原因を解明している途中だから、詳細を伝えることはできない。マシンに何か問題が起き、クラッシュした。いま言えることは、それだけだ」とメディアに語ったのだ。
この日、カタロニア・サーキットにはストロールの父親のローレンス・ストロールの姿があった。ファッションブランドのトミーヒルフィガー、マイケルコースの大株主でもあるローレンス・ストロールの総資産は、24億ドル(約2477億円)とも言われている。
この日のクラッシュが、たとえストロールのミスだったとしても、チームはそのことを公に発表することはできなかったことは、容易に想像できる。