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マークX MCシェイクダウンで感じた埼玉トヨペットGreen Brave“3つの柱”

2017年03月02日 15:32  AUTOSPORT web

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富士スピードウェイでシェイクダウンを行った埼玉トヨペットGreen BraveマークX
既報の通り、埼玉トヨペットGreen Braveは2月21日、富士スピードウェイでマークX MCのシェイクダウンを行った。チームにとって、FIA-F4を除けば純レーシングカーを走らせるのは今回が初めてのこと。それだけに緊張感あふれる1日となったが、結論から言うとシェイクダウンは順調に終了した。

 走行内容についてはすでに報じているので、ここでは現場で気づいたトピックスを3つ、ご紹介したい。

■クルマづくりを進めるのは二人の埼玉トヨペット社員
 ディーラーのメカニックがスーパーGTマシンを触れるのか? そう思っている人もたくさんいるだろう。しかし、実際にクルマづくりを担当しているのは埼玉トヨペットのモータースポーツ室(MS室)に籍を置く社員、チーフエンジニアの近藤收功(こんどうかずのり)とチーフメカニックの関口慎(せきぐちまこと)の2名だ。

 MS室でのキャリアは関口の方が少し長いが、どちらも異動前は店舗で顧客の車両整備を担当。MS室に配属されてからは、スーパー耐久のトヨタ・マークXやトヨタ86、FIA-F4車両のセッティングを通して、お互い切磋琢磨してきた。

 スーパーGTマシンと聞くと、市販車ベースのレーシングカーとは、まったくの別物というイメージを持ちがちだが、パーツを外したらしっかりと取り付けるという整備の基本は同じ。決してディーラーメカニックの手に負えないものではない。

「唯一、戸惑うとしたら工具です。ぼくらは普段ミリ単位の工具を使っていますが、マークXではインチ単位の工具を使うことがあります。瞬間的にサイズがわからないことがあるので慣れが必要ですね」と関口。

 とはいえ、センターロックのナットを締める際のトルクは60kgf・m! これはトヨタ80スープラに搭載されていた2JZ-GTEエンジンのクランクシャフト締め付けトルクの倍に相当し、使用するトルクレンチは片手で持ちあげられないほどの重さだ。

 インパクトレンチのパワーも見るからに強烈で、やはりスーパーGTのメカニックは特別と言わざるを得ない部分もある。

 Green Braveでは上記のふたりに加えて、1年間通してマークXのメンテナンスを担当する店舗メカニック4名(平松大輔・内野善和・岩渕将大・小川一弥)を選出。彼らもトレーニングを積んで開幕戦へ臨むので、その活躍にもぜひ注目してほしい。

■唯一のスーパーGT経験者・番場琢のリーダーシップ

 シェイクダウンでは番場が3回のセッションを担当。計測3周の連続走行も行い、手元計測で1分44秒台のタイムを記録した。しかし注目したいのはタイムではなく、ピット内で番場が見せるリーダーシップだ。

 番場はクルマの状況を逐次確認し、エンジニアとディスカッション。必要な指示を即座に出している。また、シェイクダウンに立ち会ったマザーシャシーの製造元である童夢のエンジニアと長時間話し込む姿も見られた。

 こういった番場の働きぶりは、カテゴリー問わず毎レース行われていることで、決して珍しいものではない。しかし、チーム唯一のスーパーGT経験者(しかも2011年のGT300チャンピオン)として、いつも以上に力が入っていたのは間違いないだろう。

 番場も「シェイクダウンを任されたのは光栄な反面、ものすごく責任感を感じました。チームを引っ張り、クルマを仕上げていかなければならないと強く思いました」と言葉を残している。

 そんな番場がみせた働きのなかで、極め付けはGTマシン初ドライブとなった平沼に対し、丁寧にレクチャーしていた点。これもスーパー耐久ではおなじみの光景だが、スーパーGTではドライバーひとりでは好成績を狙えないことを十分理解した、エースにふさわしい行動と言えるだろう。

■コースイン直後からレーシングスピードで周回した平沼

 平沼はこの日、最後のセッションでマークXのステアリングを握った。30分のセッション中、5周の計測ラップ2回も合わせ、計14周を走行。番場から2秒差の1分46秒(手元計測)を記録した。

 2014年から本格的にレーシングドライバーとしてのキャリアをスタートさせ、昨年のスーパー耐久や86/BRZレースでは印象的な活躍を見せた平沼だが、純レーシングカーであるスーパーGTマシンのドライブははじめて。

 それだけに慎重な初走行だったが、フタを開けてみるとまったく危なげなし。そればかりか、あっという間にレーシングスピードに達し、快調なペースで富士スピードウェイを周回した。

「外から見てどうだった? 意外と普通に走れていたよね」と平沼。

 番場とのタイム差こそあるものの、コースサイドで見ている分には遜色ない。しかも、この日は初めて左足ブレーキを試したというから、なおさらだ。昨年、忙しい合間をぬってGT3マシンに乗り、特訓を重ねてきた成果が出たのだ。

 とは言っても、本人はこれ以上の伸び代はあまりないと冷静に分析している。それが技術的要因なのか、体力的要因なのかは分からないが、自分に正直な平沼らしいコメントと言える。

 GT300は今年も大量30台がエントリーを予定しており、多くのプロドライバーと対等に戦うには、さらなるスキルアップが必要なことは本人が一番理解している。

 今後は合同テスト前のプライベートテストでしっかりマイレージを稼ぎ、ルーキーテストを突破。さらに開幕戦岡山のグリッドへと確実にコマを進めていくことになる。

 このあと、チームは3月5日に3回目の走行を行う予定だ。

http://www.saitama-toyopet.co.jp/motor/