トップへ

クールジャパンも崩壊寸前!?アニメーターの過酷な勤務実態 「賃金が低すぎて自立して生きていくのが辛い」

2017年03月01日 12:32  キャリコネニュース

キャリコネニュース

写真

NPO法人若年層のアニメ制作者を応援する会(通称AEYAC)は2月25日、「2016年度AEYAC若年層アニメーター生活実態調査報告書」を発表した。

調査結果からは、若手のアニメーターが低賃金や長時間労働に苦しめられていることが明らかになった。

月給は4万円~6万円が最多 1か月の食費は過半数が1万円~3万円


そもそも今回の調査はどのような理由で実施されたのか。AEYACの担当者によると、既存の調査では「まだ十分に(アニメーターの)実態が把握されたとは言いがた」く、また「若年層には焦点が当たっていなかったように思われる」ため、「支援の方針を定めるためにも当団体として独自に調査」したという。

AEYACは、2016年9月に、経験年数3年以内のアニメーターにインターネット上でアンケートを実施。153人から回答があった。

最も多い年齢層は20~24歳(77.1%)で、女性が69.9%と7割近くに上った。また最終学歴は専門学校卒が最も多く52.3%だった。勤務形態は、労働基準法が適用されない「個人事業主(スタジオ所属)」(68.6%)が最も多く、次に多いのは「契約社員」(19.0%)だった。「正社員」はわずか7.2%に留まった。

給与形態は、「完全出来高」(46.4%)、「固定給+出来高」(39.3%)の順に多かった。

2010年に出された「アニメーターWebレポート」によると、制作会社から支払われるのは1枚あたりおよそ200円~220円で、1か月に描けるのは多くても500枚程度だという。

今回の調査では、アニメーターが長時間労働を強いられていることも明らかになった。10時間働いている人と11時間働いている人がどちらも17.0%と最も多い。

1か月の休日は、4日(29.4%)、5日(16.3%)の人で半数近くに上っており、長時間労働のうえに休日も限られていることが伺える。

また月収も低水準にとどめ置かれている人が多い。2016年6月~8月の平均月収は、次のグラフの通りだ。

そうしたなか、食費には月「1万円~3万円」しかかけられないという人が50.3%と過半数を占めた。

「休日がないのが辛い」「将来が不安、楽しいことはない」

自由回答では、好きな仕事だから楽しいと答えている人が多かったが、労働条件への不満をこぼす人もかなりの数に上った。

「新人は最低限の生活費すら稼げていない状態は厳しいものがあります」
「休日がないのが辛い」
「他のクリエイティブ業界とくらべて作業内容について報酬が見合っていないと思うたびしんどいなと思う」
「賃金が低すぎて自立して生きていくのが辛い」
「将来が不安、楽しいことはない」

今回の調査結果を受けて、AEYACでは、アニメーターのスキルアップ支援や住居支援・奨励金制度などの対策が必要だとしている。スキルアップや住居支援が必要なのもわかるが、正社員化や固定給の増加などは必要ないのだろうか。記者がそう質問すると、担当者は次のように語った。

「確かに正社員化・固定給化も現状の解決方策として有効なものではありますが、フリーランス的な働き方と出来高給はアニメーション産業の歴史的展開の中で醸成されてきたものであり、これを変えていくには長期的かつ業界全体での取り組みが必要であると考えております。

ゆえに正社員化・固定給化は一団体として掲げる目標としては大きすぎるものになるため、現状の仕組みの中でも実行しやすいと思われるスキルアップの支援などを方針として挙げております」