2017年03月01日 10:23 弁護士ドットコム
強姦罪の法定刑の下限を引き上げ、男性も被害対象に含めるなど性犯罪の厳罰化を盛り込んだ刑法改正案が今国会に提出されることを受けて、性犯罪の被害に遭った男性らが2月28日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開き、自身の被害経験や法改正への思いを語った。
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男性らは会見に先立って、法務省などに対して要望書を提出。要望書では「男性、LGBT、女性、子どもなどすべての人々の性の安全という人権を守ることは世界的な流れであり、今回の改正は日本がそれに合流する第一歩」と述べ、改正案について国会で十分な審議を行うことや、裁判所や捜査機関、支援団体に対して、被害者の支援体制を整えることなどを求めた。
16歳の時にレイプ被害を受けたという50代の男性は、改正案について「日本社会を変える歴史的な意義がある」と述べた。一方で、「問題は、改正されて、実際にどこまで対応できるのか、すぐに窓口が対応できるようになるのかということ。課題が沢山あると思う」と指摘した。
自身の性被害について講演活動などを行なっている30代の男性は「法改正をするだけでは、実は何も問題は解決しない」と述べた。
この男性は小学校1年生の時から、担任教師やクラスメートによるいじめを受けていたという。給食を無理やり口に押し込められたり、殴る蹴るの暴力を受けたこともあった。中学校に入るといじめはエスカレートし、人前で自慰行為をさせられたり、ゴキブリや便を食べさせられた。そして中学1年生の夏、いじめグループの主犯格だった先輩から野球部の部室に呼び出され、肛門性交や口腔性交をさせられた。
先輩からは「人に言ったって誰にも信じてもらえないし、言っても見下される」と言われたという。呼び出しは毎週、時には毎日続くこともあったが、家庭にも学校にも相談できる相手はいなかった。22歳の時から、精神科医やカウンセラーなど30人あまりに相談したが、「男性の性被害など聞いたこともない」と信じてもらえないことも多かったという。
「現状、男性の性被害者への支援はろくにないし、勇気を出して告白しても信用されなかったり軽く扱われてしまう。法改正をしても、相談を受けた人がきちんと対応しないと何も変わらない」。男性はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)