2017年の空力パッケージによって、オーバーテイクは一段と難しくなるとの危惧が裏付けられた。ウインターテストの初日にして、複数のドライバーが、先行するクルマの背後につけるのが昨年より難しいことに気付いたのだ。
全体としてクルマのダウンフォースレベルが上がると、高速コーナーで後続のクルマがそれに付いていくのは困難になる。ダウンフォースが大きいほど後方乱流も大きく、後続車のフロントエンドのグリップが失われやすいからだ。
この新ルールが策定されたとき、オーバーテイクの促進はFIAからの指示には含まれていなかった。主な狙いは、クルマの速度を上げ、ドライビングを難しくすることに置かれていた。
初日の最速タイムをマークしたルイス・ハミルトンとベテランのフェリペ・マッサは、いずれも今季の空力パッケージによって、オーバーテイクに関する問題は悪化したと感じている。
「何度か別のクルマの後ろを走ったけど、付いていくのは思ったよりも難しかった」とハミルトンは言う。
「しかも、今日使ったタイヤはものすごく固くて、ドロップオフしない。どこまでもどこまでも、同じペースで走れてしまう。デグラデーションが起きないとすると、1ストップレースが増える可能性が高いね。そして、ドライバーのミスは減り、オーバーテイクも減る」
「これは僕の予想であって、間違っているかもしれない。本当の答えはまもなくわかるだろう」
マッサは、新車のウイリアムズFW40のドライビングを楽しんだと語る一方で、やはりレースの面白さに関しては懸念を示した。
「ドライビングという観点から言えば、ドライバーにとっては、以前よりはるかに楽しいクルマになった。ただ、ショーとしての面については、どうだろうね。僕にはオーバーテイクが減るのは間違いないように思える」
「別のクルマの背後を走ったとき、失われるダウンフォースが昨年より大きい感じがする。それにクルマ自体も大柄になっているしね。まあ、いずれ明らかになることだけど、僕はオーバーテイクは難しくなると思うよ」
また、ダニエル・リカルドは、2017年のクルマのパフォーマンスは、まだ彼をエキサイトさせるほどではないと述べた。いくつかの理由から、新ルールの狙いが完全には生かされていないのだという。
ワイドタイヤと空力の改善によるスピードアップに驚かされたかとの質問に、リカルドはしばらく考えた後、次のように答えた。
「今のところはまだだね。でも、今年のクルマがこれからもっと速くなるのは間違いないと思う。今日は気温が低い。実際、まだ全然路面温度が低すぎる感じで、タイヤの温度が最適なレベルまで上がっていない」
「それでもラップタイムを見ると、ルイスはもう去年のここでの予選より速く走っているのだから、クルマが速くなったのは間違いない。それもスゴイと思うけど、いずれ僕らも今日のタイムよりずっと速く走れるようになるはずだよ」
テスト初日のパフォーマンスは、どのチームも「まだ上っ面だけをなでているようなもの」と、リカルドは言う。
「高速コーナーでは確かに違いを感じる。だけど、このクルマからはさらに高いパフォーマンスを引き出せると思うよ。バランスはまだ全然決まっていないし、路面温度もずいぶん低い。そのせいでタイヤは本来の性能を発揮していないから、当然クルマの性能も出し切れていない」
「まあ、今日は顔見せ程度ってところかな。パフォーマンスの片鱗は感じられたけど、まだこれからという部分の方がはるかに多いよ」