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Amazon宅配急増の裏で疲弊する運送業界 圧倒的な物量にマンパワーが足りないという地獄絵図

2017年02月25日 16:02  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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ネット通販事情は、ここ数年ますます便利になるばかりだ。配送料金無料ですぐに在庫の確認ができて、しかも即日発送なんて当たり前。24時間、いつでも配送してくれるサービスなんてのもある。ただ、あまりにも便利過ぎるこの状況は、ある意味で異常なことだということは前々から指摘されている。

2月21日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)が「"便利"はどこまで必要か?」と題して、この問題を報じている。かなり興味深い内容だったため、放送内容を観るなかで見えてきた、現場の悲痛な声を紹介していきたい。(文:松本ミゾレ)

荷物はそれほど重そうじゃないけど量が半端ない!

埼玉県川口市のある運送業者。ここで配達車両の管理をしている社員が、今ある問題に直面している。

「圧倒的に荷物の方が(配達員より)多いのが現状。100%要望に応えなくてはいけないが、それが物理的にできていない」同社ではこれまで、大手宅配業者から業務を請け負ってきた。その業務を、契約している約100人の個人ドライバーに委託して配送をお願いしてきた。

所沢市在住のNさんが、取材に応じていた。この運送業者の委託を受けて働く、個人ドライバーだ。朝早くから荷物を載せた車で配達へ。抱える荷物のほとんどは、映像を見る限り、Amazonのダンボールに見える。

Amazonといえば、ネジ1本からでもダンボールに入れて送ってくる、過剰包装がおなじみだ。Nさんが抱える様子を見ると、あまり重くはなさそうだ。だけどとにかく数が尋常じゃない。

実際、僕もたまにAmazonを利用することがあるので、そもそもこのコラムではあんまり偉そうなことは書けない。こういう様子を見てしまうと、ちょっと現代のネット通販は、配達業者に強い負荷をかけているという現実に、萎縮をしてしまう。

ドライバー「分かっててこの状況を放置しているのは悪」

ネット通販の普及で、末端の配達員の抱える仕事量は何倍にも膨れ上がっている。退職を考えてしまうドライバーも、少なくないようだ。

神奈川労連で、元ヤマト運輸社員のSさんが、相談する様子を、カメラが撮影していた。退職を巡って上司と交わした会話の内容を、録音していたという。

録音された音声が再生される。まずはSさんの「俺としては明日から来たくない。今すぐ辞めたい」という言葉が。これに対して、上司と思われる相手は「そこまで~……追い詰められてるの?」と、なんだか呑気な返答。

ただ、上司は上司で、昨今の業務の激増について思うところはあるようで、「確かに世の中の荷物の増え方に、追いついてないところがあると思う」とは話している。

しかし、「だけど何にも(対策を)してないわけじゃない。Amazonが増えて佐川が手を切って、ヤマトに全部降りかかってきて」と言葉を濁す。これにはSさんも「分かっててこの状況を放置しているのは悪ですよ」と反論をしている。

Sさんは、もともとは未払い残業代の支払いと、長時間労働の改善を促してもらうために神奈川労連にやってきた。番組側はヤマト運輸にも取材を申し込んだが、「係争中のため」との理由で許可が下りなかった。

「僕たちがここまで動いてきたのは、仲間を助けたいから」と話すSさん。顧客にとっては便利なネット通販。だけどその環境を支える人たちは、もう限界を迎えつつある。

もちろん業界も、何も対策を講じないわけではない。件のヤマト運輸の場合、増え続けるAmazon関連の配送業務に対して、全国で2500人のドライバーを追加採用したという。

配達しても不在…再配達はコストのムダ!解決方法の模索は急務…

また、荷物の再配達もドライバーの負担だ。せっかく荷物を届ける際の時間帯も指定しているのに、実際にその時間帯にドライバーが訪ねても、不在という人も多い。そこで最近では戸建て用宅配ボックスというものが登場している。

これは不在であっても、その中に荷物を入れておけばいいので、荷物を営業所まで持ち帰る二度手間が省ける。まずは2月より、埼玉県越谷市で試験運用がスタートとなる。有用性が認められれば、日本各地で導入が見込まれる。

過剰なまでに便利になったサービスの裏には、過剰なまでに仕事が増えてしまい、疲弊する労働者がいる。ネット通販はまさにその最たる例と言っても間違いではないはずだ。

ここでちょっと賢ぶる人間なら、「そもそもここまで便利なサービスはいらないのではないか」なんて書いてまとめるんだろうけど、人間は現金だから、一度便利さを手に入れたらそう簡単には手放さない。

コンビニチェーンについても「24時間じゃなくても~」という意見もたまに聞くが、いまさら昔の営業形態に戻ったところで、不満は必ず出る。今はもうサービス提供者の側が、激増する手間をどういう工夫をして簡略化するかというところに目を向けないと、どうしようもない時代になってしまっているようだ。