今、台湾が熱い。地球の歩き方T&Eの「2016年冬の人気旅行先」でも1位を獲得するなど、日本人の台湾への好感度はかなり高い。台湾も「親日国家」としてよく知られており、台湾から日本への旅行を希望する人も多いという。
そんな中、観光ではなく就労を希望して日本にやってくる台湾人が増えている。法務省によれば、2015年末の在留台湾人は4万8723人で、前年度より約20%増加している。こうした流れを捉え、台湾人の日本での就労を支援する動きが活発化している。
政治的な面も長所に 企業ニーズに「台湾人」という属性が好都合
人材紹介業のネオキャリアは昨年7月、アジアの日本語スピーカー人材を日本国内の企業に紹介するサービスを始めた。台湾で開いた面接会には日本語の堪能な若者が集まり、販売業界やホテル業界、飲食業界などに、これまで300人以上の内定者を出した。内定から2か月程度でビザの取得などを済ませ、すでに多くの台湾人が日本で働き始めているという。
採用した企業の反応も上々で、「流暢な日本語に加えて他にもいくつかの言語を話せる。日本語しか話せない日本人の新卒よりいい」という声もあるらしい。
同社のサービス担当者はこうした台湾人の日本人気をこう分析する。
「日本の連続ドラマがリアルタイムで放映されたりする影響で、文化を身近に感じているのでしょう。『日本で働きたい!』という意志の強さは、中国人や韓国人より強く感じました」
また、台湾人の人気の背景には、台湾が置かれた複雑な政治状況も影響しているようだ。同担当者は、実際にあった話として、次のように語っていた。
「投資用マンションのお客様は年配の台湾人や中国人が多いのですが、台湾人は、台湾を『チャイニーズタイペイ』と呼ぶ中国人を好ましく思っていません。そのため、中国人が売るものは台湾人に買ってもらいにくい傾向にあります。その点中国人は、台湾人から物を買うことに抵抗はありませんから、こうした事情を踏まえると、日本語も中国語も話せる外国人材を採るなら中国人より台湾人が好ましい、という事情もあるようです」
サービス業に携わる外国人の在留資格取得要件も緩和へ
他の人材会社も台湾へのアプローチを本格化させている。アデコは2月22日、台湾の私立専科学校、樹人医護管理専科学校の学生を対象に、6か月間日本に滞在するプログラムを提供すると発表した。単位認定型のインターンシップを通し、日本文化への理解促進とキャリア観の醸成を図るという。2月28日から10人が、カップヌードルミュージアムで就業することが決まっている。
2月21日の日本経済新聞には、内閣府がサービス業に携わる外国人を対象に、国家戦略特区内での在留資格取得要件を緩和するとの報道があった。さらに多くの台湾人が日本で活躍する日も、そう遠くはなさそうだ。