“小さなからだの哲学者”と称される中島芭旺くん(11歳)。
10歳のときに出版した『見てる、知ってる、考えてる』(サンマーク出版刊)が17万部(2月22日現在)のベストセラーとなり、今年2月には、芭旺くんの全編朗読によるオーディオブック版も発売となった。
学校での強制されるような学び方に疑問を持ったことから、「好きなことを、好きな人から学び取りたい」という思いを母親に打ち明け、長らく自宅での学習を続けてきたという。
いじめにあったことや、「こうしたい」という気持ちに動かされ、小学生とは思えない行動力を発揮してきた芭旺くんの言葉にはパワーが感じられるし、大人になるにつれて忘れかけていた大切なことにも気づかせてくれる。大人が書いたきれいに整えられた自己啓発書よりも、心に響くという人も少なくない。
今回、オーディオブック化を「チャンスだ」と考えている芭旺くんに話を伺った。
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ゲームをすることも勉強になる
――初めて書いた本が、たくさんの人の手元に渡ってどうでしたか?嬉しいです。「本を出版できた」「やりとげた」という達成感もあるし、みんなが僕の言葉を読んでくれて、認められた感じがしたので、本を出せてよかったと思います。
――本に書いた言葉は、どんなときに思いつくんですか?おもにゲームをしているときです。
――ゲーム? ストーリーに心を動かされて、とか?うーん・・。ストーリーはあまり関係ないかな。
――ゲームのどんなところがひらめきにつながるんですか?何か、モヤモヤしたことを誰かに伝えようと思っても、その気持ちってどうやったら人に伝わるか分からなくて。
ゲームをしていると、知らない言葉とか、いろんな表現に触れるから、「ああ、こうやれば伝わるのかも」って、気づいたりするんです。
――ゲームからもいろんな事を学んでいるわけですねうん。だから僕にとってのゲームは、楽しみながら、表現の方法を学べる勉強だと思ってる。
――芭旺くんにとっての「勉強」ってどんなことだと思いますか?勉強って、できないものをできるようにするための手段だと思うので、「やってみたい」と思ったことをできるようにすることなら、なんでも勉強だと思う。
――やってみたいという気持ちが、学びにつながっているわけですね絵を上手に描きたいとか、自分の感じたものを言葉にしたいとか、全部です。学びも、遊びも、元を辿れば一緒だと思うんです。
――全部一緒というのは?勉強は「できないことができるようになるためのもの」って考えれば、「やってみたい」を形にするものなので、遊びも仕事も同じだなって。
そう考えれば、なんで勉強をしなきゃいけないのかと悩まないと思うし、ずっと自分でいられると思うんです。
――自分でいられる、というのはどういう意味ですか?僕は、将来どうなりたいかと聞かれたら、「ずっと自分であること」っていいます。
人は周りからの影響でどんどん変わってしまうと思うけど、僕は他の自分にならないように、自分の「やりたい」っていう気持ちを大事にしていたい。
――そういう大人はまわりにいる?僕が会いたいと思う人や、これまでに会いたくて会ってきた人は、みんな自分でいる人。
だから、話していてとても魅力的に感じるし、何よりたのしいです!
行動するには勇気がいるけど、やりたいことはすぐ決めます
――一番大切にしている感情は「勇気」って本に書いていましたね何か行動するときって、すごく勇気がいるから。特に、常識と違うことをしようとすると、勇気を出さないとできないから大事だと思います。
――どんなときに「勇気」を大事にしようと思うようになったんですか?僕の人生を大きく変えたきっかけは、やっぱり不登校になったときです。こうしようと決めて行動するときは、すごく勇気がいりました。
――それは大きな決断です自分の気持ちを決めるのも、お母さんに伝えるのも、行動するのも、ぜんぶ勇気を持って決めなきゃいけない。それに、行動したら責任が生まれます。
それでも「やりたい気持ち」を貫くためには、勇気を持たないといけないんです。
――「怖い」と思うことはないんですか?チャンスなので「怖い」と思うことはありません。自分の中では「やりたい」になっちゃうから。
――チャンスがあればやっちゃうそうですね。チャンスがどこでも転がっているから、手を伸ばすかどうかだと思います。でも、手を伸ばしたらその責任を取らないといけなくなるので、勇気が必要なんです。
――チャンスに手を伸ばす勇気ですね普段から勇気を大切にしていないと、チャンスの時に手を伸ばせません。だから僕は「勇気」を大事にしているんです。
オーディオブックはチャンスだと思った
――著書のオーディオブック化の話がきたときはどう思いましたか?これはチャンスだと思ったから、すぐに決めました。
――どんなチャンスですか?おじいちゃんは目が見えないので、「これでおじいちゃんにも僕の本を読ませてあげることができる」と思って。
――それはうれしいですね本を出したときは、「目が悪くて読めないからオーディオブックで出して」と言われちゃって、「僕だけでそんなこと決められないよ!」って、ケンカみたいになっちゃったんです。でも、今度は喜んでもらえると思います。
それに、事情があって本が読めないという人の手にも渡ると思うと嬉しいです!
――ナレーションをしてみた感想はどうでしたか?1冊まるごと全部なので、終わったときは達成感がありました。でも、思っていたよりは短く感じました。
オーディオブックの収録は楽しかったので、噛んだり、失敗したりしても、開き直って笑っていました(笑)
――オーディオブックのどんなところに注目して聴いて欲しいですか?棒読みで、ただ読み上げただけじゃなくて、書いたときの気持ちを思い出しながら、言葉に乗せました。そこが伝わると嬉しいです。
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オーディオブック版『見てる、知ってる、考えてる』(サンマーク出版刊)は、オーディオブック配信サービスFeBeで配信中
https://www.febe.jp/product/236002
(新刊JP編集部 高原健太)