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LiSA、「Catch the Moment」でみせた成長の跡 『SAO』コラボの歩みを辿る

2017年02月24日 18:12  リアルサウンド

リアルサウンド

LiSA

 2月15日にリリースされたLiSA通算11枚目のシングル『Catch the Moment』が、2月18日、19日付けオリコンCDシングルデイリーランキングで2日連続1位まで登りつめた。初登場6位以降は3日連続で4位が続いたが、週末に入って一気に1位までジャンプアップ。これが何を意味するかというと、この日がアニメ映画『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』の全国公開初日だということ。映画も興業成績初登場1位となっており、ここまでわかりやすい形で結果が数字に表れると、なるほどと納得してしまう。そして、LiSAは本日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演、「Catch the Moment」をパフォーマンスする。


 すでにCMスポットなどで耳にしている方も多いかと思うが、LiSAの最新シングル表題曲はこの『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』の主題歌として書き下ろされたものだ。LiSAは昨年11月26日に横浜アリーナで行われたワンマンライブ『LiVE is Smile Always~NEVER ENDiNG GLORY~』初日公演で同作の主題歌を担当することをアナウンス。同時にその主題歌となる「Catch the Moment」を初披露しており、そこでいち早く聴いた“LiSAッ子”(=LiSAのファン)も少なくないはずだ。これまでもアニメのタイアップソングを数多く手がけてきたLiSAだが、彼女自身も、そしてLiSAッ子にとっても「LiSA×ソードアート・オンライン(以下、SAO)」のコラボレーションは特に思い入れが強いものなのではないだろうか。


 LiSAは『Catch the Moment』以前にも過去に3曲、『SAO』テレビシリーズに楽曲提供している。最初は2012年7月からスタートした同作第1期のオープニングテーマ「crossing field」。キャッチーなメロディを持つこのドラマチックな楽曲は2ndシングルとして同年8月にシングルリリースされており、週間最高5位、デイリーでは最高1位を記録する快挙を成し遂げた。私自身も同アニメを毎週観ていたこともあり、この曲でLiSAというアーティストに本格的に興味を持ったといっても過言ではない。


 さらに2曲目、3曲目は立て続けにドロップされる。2014年7月からオンエアされた『ソードアート・オンライン II』の後期エンディングテーマとして、まず大きなノリのミドルチューン「No More Time Machine」が3話のみ使用されたかと思うと、翌週からは壮大なバラードナンバー「シルシ」に交代。同年12月にはこれら2曲が収められた7thシングル『シルシ』も発売され、カップリングには「crossing field」の英詞バージョンも収められるなど、シングルまるごと『SAO』とのコラボが実現している。特に「シルシ」はLiSAにとって初めてバラードナンバーがシングル表題曲になっただけでなく、アニメのタイアップソングとしても初のバラードナンバー。そんな冒険作が当時では過去最高のオリコン3位を記録したというのも、非常に印象深いものがある。


 初のデイリー1位やシングル丸ごと『SAO』関連曲、そして初のバラードシングルと、LiSAの音楽活動においていくつものターニングポイントを残してきた『SAO』とのコラボレーション。当然、同作初の劇場作品への楽曲提供となればさらに気合いが入ったのではないだろうか。主題歌として提供された「Catch the Moment」はギターとピアノを前面に打ち出したバンドサウンドがベースにある、ストレートで疾走感のあるロックナンバー。正直、ストリングスを効果的に取り入れて劇場版アニメを盛り上げるような楽曲になるのかと思っていたら、非常に通常モードで驚かされたというのもある。作品ありきで楽曲制作が進められたとは思うが、それでもLiSAが今表現したいサウンドのひとつがここにあるという答えを示されたような気がして、なんだか胸が熱くなってしまった。


 同曲は作詞をLiSA本人が手がけ、作曲を過去いくつものLiSAナンバーを制作してきた田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)、編曲はLiSAナンバーのほか、いきものがかりやポルノグラフィティ、ねごとなどのアレンジで知られる江口亮が担当。つまり、LiSA自身が考え得る最強の布陣で制作し、“今のLiSA”が凝縮された楽曲を『SAO』にプレゼントした……ソロデビュー5周年イヤーがまもなく終了しようというタイミングに届けられたこの曲には、『SAO』という作品と並走しながら時代を駆け抜けた彼女が同作品に対して、『SAO』のファンに対して、そして『SAO』を通じてLiSAのファンになった人たちに対して(もちろん、従来のLiSAッ子に対しても)、「私はこれだけ成長したんです!」という強い想いが込められているのではないか。そう思って聴き返すと、映画を観終えた後に聴いたときとはまた別の感動が生まれてくるはずだ。


 さらにこのシングルには、2曲のカップリング曲が用意されている。「リングアベル」は昨年12月から今年1月にかけてNHK『みんなのうた』でオンエアされた、優しさに満ち溢れたバラードナンバーで、「Merry Hurry Berry」は作曲に前山田健一、編曲にTom-H@ckという強力な作家陣によって生み出された、遊び心満載のロックンロール。「Catch the Moment」含め3曲それぞれが異なる表情を持っているものの、そのすべてがLiSAが歌うことで一本筋が通ったかのような統一感が生まれる。そういう意味でも本作は、改めてLiSAというアーティストの懐の深さが心ゆくまで味わえる作品集ではないだろうか。


 6月からはキャリア初となる全国アリーナツアー『LiVE is Smile Always~LiTTLE DEViL PARADE~』も決定し、ますます勢いに乗るLiSA。『Launcher』(2015年3月発売)以来となるフルアルバム発売にも期待しつつ、2017年も彼女らしい快進撃に期待したい。(文=西廣智一)