ヤマト運輸の労働組合が、2017年の春季労使交渉で、宅配便の荷受量の抑制を求めていることが2月23日までにわかった。時事通信などが報じ、ネット上でも話題になっている。ドライバーの増加が荷物量の増加に追い付いておらず、ドライバーの長時間労働が深刻化しているという。
共働き家庭の増加に伴って、再配達や夜間配達も増える
17年3月期の宅配便取扱個数は、前期比8%増の18億7000万で、過去最高となる見通しだ。
ヤマト運輸の担当者によると、こうした荷受量の増加の背景には、ネット通販の拡大がある。またECサイトやフリマアプリの普及により、個人間取引が増えたことも荷受量増加の要因になっている。加えて、共働き世帯の増加もドライバーの負担増につながっている。
「以前は、配達に伺えば家に誰かがいるということが普通でした。しかし共働きの増加に伴って、再配達や夜間配達が増えています」
荷受量が増加し、ドライバーの長時間労働が常態化してきていたため、ヤマト運輸では2月1日に働き方改革室を設けていた。労働環境整備に向けて取り組みを始めた矢先に、労働組合からもドライバーの働き方を見直すための要求が出されたという。
労働組合の要求に対してどう対応するのかを尋ねると、担当者は、「向いている方向は同じなので、着地点を探していきたい」と語っていた。
ドライバー不足は「中型免許を取得しないといけないという点もネックになっている」
一方で、ドライバーの数が増加しているとはいえ、それでもドライバーが不足しているのは、「若者のトラック離れ」などが原因ではないかとヤマト運輸労働組合の担当者は語った。
「少子高齢化で人手不足の業界は多いと思いますが、ドライバー不足には特殊な要因もあると思います。車やトラックに乗って仕事をしたいという若い人が以前よりも減っているのではないでしょうか。また中型免許を取得しないといけないという点もネックになっている可能性があります」
近年、荷受量の増加によりドライバーの負担が増えているわけだが、そもそも「道路貨物運送業」の年間の総労働時間は、他の産業に比べて長い傾向にある。例えば2009年の「毎月勤労者統計調査」に基づいた厚生労働省の資料によると、全産業平均の年間総実労働時間は1972時間だが、「道路貨物運送業」は、2418時間となっている。
ヤマト運輸労組の担当者によると、「36協定の限度時間が適用されないことが原因の一つ」だという。
36協定を締結すると、月に45時間まで、特別条項付き協定を結べばさらに時間外労働時間を延長することができる。しかし、「自動車の運転の業務」をはじめ、「工作物の建設等の事業」や「新技術、新商品等の研究開発の業務」には、延長時間の限度が適用されない。産業全体に長時間労働が蔓延しやすい土壌があるようだ。
ヤマト運輸では、労使で協調して労働時間短縮に取り組んできた。これまでに200時間ほどの時短に成功しているという。ヤマト運輸労組の担当者は次のように話していた。
「これまで社員がより働きやすい職場環境を作るため尽力してきました。いま話題になっている春闘での労使交渉はそうした取り組みの延長線上にあります。労働環境の改善という目的を追求するなかで、荷受量の総量規制や料金の見直し、夜間配達の見直しなどが議論の俎上に乗ると思います」