2月22日、2017年からスーパーGT300クラスに参戦する埼玉トヨペットGreen Braveは埼玉県坂戸市のファクトリーで体制発表会を開催し、使用するGT300マザーシャシーのマークX MCを公開したが、これに先立つ21日、富士スピードウェイでシェイクダウンテストを行った。マザーシャシー自体初ドライブの平沼貴之と、5年ぶりのGT300参戦となる番場琢に、その“乗り味”を聞いた。
今季からGT300クラスに参戦する埼玉トヨペットGreen Braveは、参戦に向け新たにトヨペット店の旗艦車種であるマークXのボディを使ったマザーシャシーを投入。1月の東京オートサロンで公開されたあと、シェイクダウンに向けて坂戸のファクトリーで準備が進められてきた。
■小さなトラブルがあるも、シェイクダウンは無事終了
迎えた21日、晴天に恵まれた富士スピードウェイのスポーツ走行枠を使って、マークX MCは走りはじめた。この日は30分の走行枠が4本用意されていたが、まずは1本目、2本目は番場がステアリングを握り、少しずつペースを上げていった。
「僕が乗っていたころのGT300とは全然違いますし、空力が抜群に上がっているので『おおっ。すごい!』というのがファーストインプレッションです」と走行2本目のあと、番場に聞くとこう教えてくれた。
「ただ、今まではすでにできあがっているクルマに乗ることが多かったのですが、埼玉トヨペットGreen Braveのみんなでバラバラの状態から組んでいくところを見てきたので、最初にピットアウトするときは心情が全然違いました。『よくシェイクダウンまでこぎつけることができたな……』と感じていました」
この日はいっさいセッティングもせず、まずは動作確認に終始。また、スーパーGT初参戦となる平沼が走行できることも重視した。ただ、セッション3本目は「初期トラブルというか、マザーシャシーでよくある」トラブルが起きてしまい、走行開始後すぐにピットへ。幸い走行4本目には修復が間に合い、平沼がコースインした。
埼玉トヨペットGreen Braveは12月に行われたセパン12時間に、メルセデスベンツSLS AMG GT3で参戦しており、平沼もGT3の速度域は経験済み。この日も、最初は自ら「ゆっくりいくから」と宣言したとおり慎重な周回だったが、少しずつペースを上げた。「様子見ながらクルマの限界に近いところで走れているのでホッとしました。セパンに出たことが大きいですね」と番場も笑顔をみせた。
「今年初の走行だったので、それも含めて慣れる時間が必要でしたが、相対的には今日は“マル”ですね。クルマもそんなに大きなトラブルもなかったですし」とは走行後の平沼だ。
■「今のところは“パキパキ”ではない」
では、マークX MCの“乗り味”はいったいどんなものだったのか。まずは番場に聞くと、「今のところ、フォーミュラらしさは周囲が言うほど感じていないです」という。
「去年乗ったSLSの方が、たしかに動くスピードがゆったりしているんですが、ではマークX MCはF3のようにパキパキ動くかというと、そうでもないです。今後セットアップを進めていって、いいセットになればフォーミュラのようになるのかもしれませんが、今はまだデータもない状態なので、ひとつひとつ進めていきたいです」
また、平沼も「フィーリングも言っているほどフォーミュラ寄りのピーキーな印象はなかったです」という。ちなみに平沼は、この日初めて左足ブレーキングもトライ。コクピットの関係から、相談した結果左足の方がいいだろう……という結論に至ったのだという。
この日のテストには、他のGT300マザーシャシー使用チームの関係者や、GTA関係者も訪れ、シェイクダウンを見守った。「ピットロードを走っても、すごく注目されていることが分かりました」と番場も笑う。
今後埼玉トヨペットGreen Braveはメーカーテストに参加しつつ、セットアップや平沼のさらなる慣熟、そして、ふたりはルーキーテストも受けなければならない。スーパー耐久ではチームメイトである服部尚貴も「厳しく見ます(笑)」というが、番場は「平沼選手は大丈夫だと思っています」と自信をみせる。
ズバリ、平沼に開幕戦の目標を聞いてみると、こんな返事が返ってきた。
「開幕戦は予選落ちはなさそうなので、レースには出られるようになるとは思います。あとは完走ですね」
「それと『みんなに怒られないように完走』したいです。第2戦以降にサーキットに行く足が軽くなるか、重くなるかに関わってくるので(笑)」
スーパー耐久でもディーラーチームらしい新たな試みを数多く示してきた埼玉トヨペットGreen Brave。平沼の言うとおり、最初から上位争いというわけにはいかないかもしれないが、着実な歩みを進めながら、新鮮なグリーンの風をスーパーGTに吹かせてくれるかもしれない。