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尾野真千子+香里奈+水原希子!? 『カルテット』で存在感放った女優、高橋メアリージュンに注目

2017年02月24日 13:23  リアルサウンド

リアルサウンド

高橋メアリージュン

 連続ドラマ『カルテット』(TBS系)第4話に、高橋一生演じる家森の別れた妻・茶馬子(ちゃまこ)役で登場し、注目を集めた高橋メアリージュン。茶馬子は、家森がVシネ俳優をしていた頃に結婚したものの、共に暮らすうちに「掃除機で夫の顔を吸う」ような鬼嫁に変貌してしまったという。エキゾチックな美貌で威圧感があり、真冬でもサンダル履き+スパッツ、口を開けばヤンキー節全開。しかし、家森と離婚したのは、「妻って、夫に『もし、結婚してなかったら』って思い浮かべられることほど、悲しいことないよ」という理由だったと言い、実は夫に対して恋愛感情を抱いたかわいい妻でもあったらしい。『カルテット』は、脚本家・坂元裕二がつむぐ短編小説集のような文学性と、松たか子をはじめとするキャスティングセンスの良さで評価されているが、彼女もそのハイレベルな制作チームのお眼鏡にかなったということになる。


参考:『カルテット』宮藤官九郎の夫役に賛否両論 男と女はなぜすれ違うのか?


 もともと雑誌モデルとしてデビューした高橋。ドラマファンが彼女の存在を初めて認識したのは、2012年、NHK連続テレビ小説『純と愛』で、速水もこみち演じる正の妻マリヤ役を演じたときだろう。マリヤは高橋本人と同じ、日本人とフィリピン人のハーフという設定。フィリピンなまりの日本語を話すフレッシュな演技が、たちまち視聴者の間で「かわいい」と評判になった。また、高橋のもうひとつの魅力に、激しさがある。『純と愛』で泣き叫ぶような場面でも、きちんと感情を入れたリアリティのある演技ができており、その後は裏社会を描くようなハード路線の作品にも出るようになる。


 『闇金ウシジマくん』シリーズの犀原茜(さいはら・あかね)役は、その代表的なものだろう。茜は、主人公・丑嶋(山田孝之)のライバルである金貸しで取り立て屋。マキタスポーツ演じる手下の村井をこき使い、「金持ってこいやぁ」とドスの効いた声ですごむ怪演は、時に主演をしのぐほどの存在感があった。特に映画版Part2で、暴走族の男をトラックに飛び込ませる場面の冷酷な表情には、強烈なインパクトがあり、ここで狂気をも表現できることを証明した。続いて、映画『新宿スワンII』で演じたアリサは、広瀬アリス演じるヒロイン・マユミが光の存在なら、陰のヒロイン。横浜ウィザードを取り仕切るタキの恋人役で、タキ役の浅野忠信を相手にベッドシーンにも挑戰している。


 高橋は滋賀県出身ということで、ナチュラルな関西弁を話す。かつ、『カルテット』で見せたように、気の強い役が得意ということでは尾野真千子的でもある。『純と愛』のように困難に立ち向かう健気な役どころから、さばさばした女性まで演じられる幅の広さは香里奈にも近い。さらに、系列事務所の先輩である水原希子(『嘘の戦争』(フジテレビ系))のように、エキゾチックな色気も出せる。そう考えると、彼女の持つポテンシャルは、相当に高い。それは、『純と愛』のオーディションで出会った脚本の遊川和彦が彼女のためにマリヤという役柄を作り、『リアル鬼ごっこ』で初めて組んだ園子温監督が『みんな!エスパーだよ!』(映画版)、『新宿スワンII』でも起用し、『キカイダー REBOOT』で起用した下山天監督が『L-エル-』でもキャスティングしたなど、第一線のクリエイターたちに愛されていることからも確かだろう。


 何より本人の演技が、女優デビューして5年とは思えないほど、安定している。『カルテット』では、理屈っぽい長セリフを明瞭に話していたし、Mummy-Dにお見舞したビンタも思い切りが良くて痛快だった(番組公式ブログによれば、リハーサルまではかなり緊張していたとか)。もちろん、その魅力的な演技の裏ではかなりの努力をしているようだ。『みんな!エスパーだよ!』で美貌の教師を演じる際は、カリスマ性を出すため宗教団体の教祖やマイケル・ジャクソンを参考にしたといい、『新宿スワンII』のときは実際にタバコを吸う練習をしたという。『闇金ウシジマくん』では、低血圧な茜を演じるために、実際に食事から鉄分を抜いたというのだから、その役者魂は相当なものだ。


 今後は、2月26日からNHK総合で放送される『火花』(Netflix制作)でも姿を見せ、出演した映画『PとJK』(3月25日)、『ブルーハーツが聴こえる』(4月8日)の公開も控える。そして、4月クールのドラマ『母になる』(日本テレビ系)ではレギュラーキャストと、話題作への出演が続く。ここから数年は、ゲスト出演や脇役のポジションから主役級にキャリアアップするブレイクポイントを狙う時期になるだろうが、とにかく2017年、最も注目すべき女優のひとりであることは間違いない。(小田慶子)