「あれが人生の分岐点だった」と思うこと、ありませんか?
筆者は、中学時代にBUMP OF CHICKENと出会ったこと。以来、寒い日に散歩してポケットの中に私の左手をお招きしてくれる人と付き合い続けるんだと信じていました。ボーカル・藤原基央氏を知ってから、好きになる人の8割は塩顔です。でも、最近思います。
「顔の好みだけで、ときめいてはいけない」
そうはいっても人間の情報入手経路、8割は視覚。見ちゃいますよ、顔。どうすれば「君より好きな人がいる」「ごめん、○○ちゃんのこと好きになった」とか言わない人と出会えるのだろうか、中身だけを見ることはできないだろうか……。そんなとき、あるイベントを見つけました。
その名も、「暗闇コン」。外見を一切排除した、完全暗闇での合コンです。秒速で応募しました。(取材・文:市ヶ谷市子)
目隠し状態で入室、まったく見えない状態でコミュニケーション
この「暗闇コン」の第1回が2月11日(土)に開催されました。田園都市線・駒沢大学駅から徒歩10分、ある雑居ビルの地下室で行われました。内容はこんな感じです。
・外見が一切見えない、3対3の合コン。
・料理5品が出てくる。原則、次の料理が来たら前の料理の話をしていい。
・視覚情報がない分「男性のニオイを嗅ぐ」「握手をする」コーナーが。
・お互いの「いいな」が一致した場合のみ連絡先が教えられる。
・マッチングしても、顔合わせは後日。
入室すると、ほぼ暗闇。さらにアイマスクと紙エプロンの着用を求められます。テーブルを囲んで女性が座って待機し、しばらくすると男性が入ってきます。目隠しをされた状態で男女6人が向かい合ってスタート!
暗闇だと話もディープに! 恋愛暴露大会「元カレが胃下垂で……」
スタッフ「お飲み物がそろったので乾杯~!」
普通なら「かんぱーい!」から雑談が始まります。でもここは暗闇。物理的にも心理的にも距離感がつかめず「か、かんぱい……?」と微妙な雰囲気に。
「……」
「…………」
「…どんな話します?」
視界情報ゼロ。普段、どれだけアイコンタクトに頼っているか分かります。会話も、
筆者「市子です。24歳、職業はライター、音楽と映画が好きです」
「ライターって夜遅いんじゃないの?」
筆者「今の職場はそんなにですよ」
「音楽は何が好きなの?」
筆者「邦楽ロックメインで、洋楽ならシガーロスが好きです」
と、一問一答に。耳から入ってくる情報に集中するため、すべての会話が普段より丁寧になります。一通り自己紹介を終えたあと「暗闇コン」に参加した理由を聞いてみました。
「暗闇でおしゃべりってしたことない」
「外見一切排除の合コンって面白そう」
実際、暗闇で合コンしてみると、会話をするにも、運ばれてくる料理を食べるにも真剣になります。コミュニケーションを取るのも真剣だし、積極的になります。そのため話がディープになることもしばしば。「異性に対して、これはないわと思うこと」というテーマでは、
「細すぎる人、NG。元カレが胃下垂で……」
「上げて落とす人がダメです。前に好きだった子が……」
と、過去の恋愛体験談が炸裂。街で会っても、お互い分からないですもんね。
「ニオイかぎタイム」が恥ずかしすぎた
一通り深い話をしたところで、ついに「ニオイをかぐ」!
何を隠そう筆者はニオイフェチ。でも、ふと感じるからイイのであって「さ、かいでください!」はなんか違う。ニオイをかぎに行くためスタッフさんに手を引かれているという状況は、親に少コミ読んでるのバレたときくらい恥ずかしい。
※少女コミックスの略称。現「Sho-Comi」。小学館刊行の少女漫画誌。筆者が小学生の頃は過激なシーンが多く、いかに親バレせずに購入するか頭を悩ませていた。
筆者「あの…すごく恥ずかしいんですけど…」
スタッフ「大丈夫です。誰も見てません」
確かに! 参加者は全員目隠ししています。そう、誰も見ていないのです……。ちなみに残念ながら男性は女性のニオイをかぐことは出来ません。他の女性参加者もかぎおわってフィードバック。
「新潟の人って感じのニオイですね」
「当たり前だけど、みんな違いますね」
続いて「握手」。人に触れるための握手って滅多にないですよね。というかどうすれば?
「よくわからなかった」
「すべすべしていた」
「目隠しで握手って、シュール」
そのあとは質問タイムに移り、時間がきて男性は退出。あっと言う間の90分。実際より短く感じました。そのあと「いいな」と思った相手の名前を書いて、暗闇コンは終了です。
女性参加者「今までの恋愛って、顔を重視していたんだ」
女性参加者のみっちゃんさん(27)に感想を聞いてみました。
――率直に、どうでしたか?
「今だから言えるけど期待してなかったんです。でも楽しかった。知らない人のニオイをかぐのも、打ち解けたから抵抗を感じなかった」
――暗闇コンでは何を重視しましたか?
「ニオイと手の感触。すごく自然でしっくり来た。一緒にいても自然でいられるかなって」
――マッチングして、実際に会ったときタイプじゃなかったら?
「今までの恋愛はなんだかんだ外見を見ていたのかな。でも、内面だけ見て『いいな』って思ってるわけだから、好きになってしまうかも」
一方で、他の女性参加者からは「まじめそうって思った人を選んだけど、顔が分からないと何とも」という声も。どちらにせよ相手のどこを見ているか改めて気付く機会になったそうです。
暗闇コン主催者「性格重視を突き詰めたらこうなった」
「暗闇コン」を提供する株式会社いろもの・山田陵代表は、「恥ずかしい」「ダサい」と思われがちな街コン・婚活に、新しい価値を付加するため「おもコン」を立ち上げたといいます。
「今回は、おもコンなりに『性格重視』の合コンを企画しました。普段どれだけ視覚に頼ってコミュニケーションを取っていたかを実感してみてください」
塩顔好きを公言する筆者ですが(山田代表、どストライクです)、この暗闇コンできゅんとした瞬間があります。最後の質問「どんな性癖・フェチがあるか」で、ずっと落ち着いたトーンで話していた人が半照れ&ヤケクソに「脚フェチですかね!」とすがすがしく答えたとき。振り切れ方がたまりませんでした。
そんな思いを抱いて帰ろうとしたら、山田代表から「市子さん、マッチングしてますよ」との言葉が。脚フェチの彼とまさかのマッチング成立。連絡を取り合って、翌週会うことになりました。
実際にデートしてきたけど、こんな高校時代過ごしたかった…
約1週間後の2月19日(日)。12時半、新宿駅。目の前に現れたのは、タカさん(24)。身長175センチぐらい。声から想像した通り、とても物腰柔らかな男性でした。せっかくなのでオムライスを食べながら当日聞けなかったことを聞いてみました。
――実際に会ってみて、声と実物、印象に違いはありますか?
「そんなに変わらないです。というか声質で予想できますよね。市子さんは身長160センチくらいなのかなと思ってました(※実際は167センチ)。手を触れば太っているかどうか分かるし」
――そこまで!? 承認欲求が強いので聞きますが、なんで私だったんですか?
「コミュニケーションが積極的だったので。あとはこの人と一緒にいたら面白そうだなと。逆に聞きたいんですけど、なんで僕? 特に何も話してなかったですよね」
確かにタカさんの口数は少なかったです。でも女性参加者は全員タカさんに入れていました。理由は「声のトーンが落ち着く」「相槌が上手」。会話の中心にいる人が必ずしも人気というわけでもないみたいです。
この後、新宿御苑に行きました。日曜日の新宿御苑は、幸福な休日そのもの。ピクニックをしている家族、寄り添っておしゃべりする恋人たち。その中、暗闇で出会った人とまったり話す。非常に穏やかな時間です。
ヒールを履いていたのですが「歩きにくくないですか?」「こっちの方が歩きやすいですよ」とのお気遣い。その姿は、暗闇コンの中で感じられたイメージと重なります。
閉園近くまでいて、駅の近くでパフェ食べて解散。取材を兼ねていたのに楽しんでしまいました。高校生の時の初デートってこんな感じですよね。記憶にないけど。
結論 暗闇コンは、人の内面がよくわかる健全なイベント
以上が暗闇コン参加~顔合わせデートの顛末です。学生時代、隣の席の男子と話すうちに「あっこの人のこと好きかも……」とかになるあれに近かったです。未経験です。
最初は「暗闇でニオイをかぐ? えっち!」と思っていましたが、相手の限りなく本質に近いところに触れられるイベントでした。塩顔至上主義の筆者も見識を改めます。「顔より性格派」の人はもちろん、普通の合コンにあきあきしている人も参加してみてはいかがでしょう。にしても山田さん、いい塩顔だったなあ。
■「暗闇コン」次回開催
3月25日(土)12時、14時、16時の全3回。詳細はコチラ。
4月以降も開催予定。