入社時、1年目、3年目など、節目節目で研修が義務付けられている会社は多い。時には外部の研修に参加することもあるのではないだろうか。そんな中、2月19日にテレビ東京で放映された「激撮!ニッポンの裏側」内で取り上げた、サラリーマン幹部養成学校がブラック過ぎると話題を呼んでいる。
これは、様々な企業で幹部候補とされた人たちが13日間にわたり、富士山のふもとの学校で合宿形式の研修を受けるというもの。参加者は男性ばかりで、クリーニング会社で経理を担当する39歳、49歳の営業マンなど、年齢や職種はばらばらだ。
研修中は携帯電話の使用は禁止。家族や友人など、外部との連絡は一切遮断される。また、10人以上のグループに分かれて行動し、夜もグループ全員で雑魚寝。プライバシーを保てる時間はほぼ皆無だ。ここまでですでにやばい香りしかしない。
500文字に及ぶ「行動力基本動作10箇条」を丸暗記
番組では、研修内容の一部も紹介されており、
・「よろしくお願いします」や「はい」と叫ぶ。声の大きさではなく気持ちの本気度で合否が判断される
・起立・着席を踏み台昇降のように休みなく繰り返す
・500文字に及ぶ「行動力基本動作10箇条」を丸暗記する
など、一見すると管理職の養成にはつながりそうもない。
さらに、7日目にある「40キロ夜間行進」という訓練では、グループごとに指揮官・副指揮官を決め、昼から深夜にかけて40キロの道のりをひたすら歩いていた。番組で密着したグループは、途中で体調不良になった指揮官以外は11時間かけて完歩。表情からは疲労困憊の様子が見て取れた。
ネットでは「理解不能な訓練」「ただの嫌がらせ行為にしか見えない」と言った冷静な意見が出ていたが、番組では、訓練を一通り終えたある参加者が、研修の感想を「最高。会社に帰って意識の低い人の前で(力を)出せるかどうかですね」と答えていた。やっている本人は満足したようだ。
それで本当に企業への帰属意識は高まるのか
ネット上では、「悪く言えばあれ宗教の洗脳と変わらない」との声もある。自己否定から始まり、外部との連絡を遮断させ、同じことをひたすら繰り返して疲労困憊させるなどの手法は、実際に新興宗教の洗脳でも使われている。
こうした特殊な環境下で学び身につけた「管理職としての基礎」は、果たして研修後も習慣としてきちんと残るのだろうか。また、せっかく幹部として活躍してほしい社員に行かせたのに、逆に帰属意識を下げてしまうという事態を招きはしないだろうか。
というのも実は、筆者(編集部T)も新卒入社した会社で似たような研修を受けたことがある。3日間合宿所に滞在し、外部との連絡や外出は禁止。グループ分けされ、班ごとに課題をクリアしていった。
「ありがとうございます」を大声で何度も言ったり、自身が経験した過去のトラウマを参加者同士で話し合ったりした。合否は「気持ちの本気度」というあいまいな基準で判定される。前述の研修のミニ版のようなものだ。研修を終えて残ったのは達成感ではなく、こうした研修を導入している企業への不信感だった。
番組を見た視聴者からは「これが大の大人が真面目に考えた研修か」といった憤りの声も上がる。それでも、こうした研修を導入している企業は相変わらず存在している。番組で紹介されたこの研修も、合宿型・社員教育/社員研修比較サイトで1位を獲得。30年以上前から「地獄の訓練」と呼ばれるメニューを提供している。
そんなこの国で、本当に「市場価値が高い」人間とはどういう人間を指すのか。ネット上には「ただの企業奴隷育成機関で草も生えない こんなのが幹部になるのかよ 終わってんなぁ」と呆れる声も出ていた。