2017年02月22日 10:33 弁護士ドットコム
自宅敷地前に止められている自転車に、持ち主に無断でワイヤーロックを取り付けているーー。ネット上の掲示板にそんな告白が投稿され話題になった。
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投稿者は、自宅前自宅敷地前の迷惑駐輪をこらしめるために、ホイールなどにつけて固定するワイヤーロックを100円ショップで購入し、取り付けているのだという。自転車が敷地前に止められていることで、車が出庫しにくいなど、具体的な迷惑もこうむっているという。
本人は「ルールを守らないやつにはお仕置きしないとな」と述べており、悪いのはあくまで迷惑駐輪をしている方という考え方のようだが、他人の自転車に勝手に鍵をかけることは法的に問題はないのか。東山俊弁護士に聞いた。
「他人の自転車に持ち主に無断でワイヤーロックを取りつける行為は、器物損壊罪になる可能性があります」
東山弁護士はこのように指摘する。自転車を壊したわけではないのに、器物「損壊」という罪に当たる可能性があるのはなぜなのか。
「器物損壊における、『損壊』の意味は、一般的な『壊す』という意味より広く、モノの効用を害する行為、つまり、物を使いものにならなくする行為があてはまると考えられています。
自動車に関していえば、判例は、自動車の車輪を外して撤去することは器物損壊にあたるとし、一方で、タイヤの空気を抜く行為は器物損壊とならないとしています。
どちらも、自動車を壊しているわけではありませんが、後者は、空気を入れれば自動車を使用できるのに対し、前者は、撤去されたタイヤを見つけない限り、自動車を使用できないことが理由であると考えられます。
ワイヤーロックに関しては、ロックを解除しない限り自転車を使用できない以上、自転車の所有者は、簡単には自転車を使用できない状況に置かれますので、器物損壊になる可能性があると考えます」
今回のケースで言うと、ロックをする目的には、自宅敷地前での迷惑駐輪をやめさせたいという事情があったようだ。そもそも、迷惑駐輪は犯罪ではないのか。
「他人の土地に自転車が勝手に停める行為は、犯罪にはあたりません。敷地前であっても同様です」
犯罪でないとすれば、迷惑駐輪をされている土地の所有者は迷惑駐輪をやめさせるために何もできないのだろうか。たとえば、自転車を捨てたり動かしたりすることはできないのか。
「自宅の敷地に自転車が停められた場合、自転車の所有者が他人の土地を勝手に使用しているわけですから、土地の所有者は、自転車の所有者に対して、自転車の撤去や損害の賠償を請求することができます。
ただし、権利があるからといって、自分で勝手に撤去をしてよいわけではありません。裁判という手続きを通じて撤去する必要があるのが原則です」
裁判となると時間もかかるだろうが、そうした手続きを経なくてもできることはないのか。
「通行の邪魔になっているような場合には、邪魔にならない場所に動かすこと程度は許されると考えます。
ただし、自転車の所有者が探し出せないような場所に移動すると、窃盗罪が成立する可能性もありますし、損害賠償を請求される可能性もあります。近くに移動したり、移動先を表示したりする必要があるでしょう」
今回のケースのように、自宅の敷地内ではないが、敷地の前に置かれているために、交通の邪魔になっているような場合はどうすればいいのか。
「公道に停められていた場合でも、通行の邪魔になっているような場合には、妨害の排除として、撤去が認められますし、損害の賠償も認められます。
そのため、自宅の敷地に停められた場合と特に違いはありません」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
東山 俊(ひがしやま・しゅん)弁護士
東山法律事務所所長。大阪弁護士会所属。家事事件はもちろん、一般民事事件や刑事事件も幅広く取り扱っている。
事務所名:東山法律事務所
事務所URL:http://www.higashiyama-law.com/