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04 Limited Sazabys、“最初の”武道館公演で凝縮して見せたバンドの軌跡

2017年02月21日 17:23  リアルサウンド

リアルサウンド

(写真=Viola Kam (V'z Twinkle Photography)、ヤオタケシ)

 バンドの軌跡を辿る、奇跡のような夜だった――04 Limited Sazabys(以下、フォーリミ)が2月11日、キャリア初となる日本武道館での単独公演を行なった。2ndフルアルバム『eureka』を携えて全国40カ所を辿ったツアー、そしてこの舞台に立つまでの生き様の集大成。この場所に至るまで彼らが一体どれだけの人を救い、どれだけの人に支えられ、どれだけの仲間の“終わり”を見届けながらも、どれだけの仲間と共に、前だけを見て進んできたのか。その9年分の軌跡が一夜に凝縮されたような、濃くて熱いライブだった。


 暗転と共に鳴り響いた大歓声に迎えられたのは、メンバー本人ではなく、スクリーンに映る4人の姿。新宿ACB HALLでライブに向けたセッティングをするGEN(Ba/Vo)、RYU-TA(Gt/Cho)、HIROKAZ(Gt)、KOUHEI(Dr/Cho)の姿を追ったその映像からは、「武道館でもライブハウスと同じように好きに楽しんでくれ」という彼らからのメッセージが伝わってくるようだった。そして映像の中で4人が「行くぜ!」と拳を合わせた瞬間、ステージを覆っていた幕に彼らのシルエットが投影され、歓声と共に幕が落ち、そのまま「monolith」へ雪崩れ込む。<きっと忘れられないな 初めての日本武道館のこのステージを>という粋な替え歌を挟みながらの「fiction」、レーザー光線が鋭く空を切った「escape」、さらにRYU-TAによる「日の丸! 武道館! フォーリミ!」というコール&レスポンスから「Chicken race」へ、怒涛のスタートダッシュを切った。


 「チームフォーリミの技術の結晶みたいな日だから、俺たちが輝いている瞬間を皆さん見逃すな」と話し、息つく間もなくそのまま「Grasshopper」のイントロを歌い出すGEN。それと同時にステージのスクリーンにはバッタ(Grasshopper)の目線で広がる日常の風景が映し出された。そこから見える景色は低く、油断すれば誰かの心ない足で簡単に踏みつぶされそうになる。今でこそ武道館を埋める程の人気を博すようにフォーリミも、思い返すには苦くて辛い景色を幾度となく見てきたのだろう。そんな決して簡単ではなかった彼らの歴史を紐解くように、ステージのスクリーンには2008年結成時から今日に至るまでのライブ年表が流れると、オーディエンスはその膨大な歴史を目と心でじっと追っていた。


 その映像の終わりと共にHIROKAZがギターを鳴らし、GENが「Buster Call」のイントロをゆっくりと歌い出したあとに「こんな景色じゃ満足できないでしょ?」という一言を放つと、会場は感極まったオーディエンスによるモッシュ&ダイブの嵐となった。そして「こんな良い場所で鳴らせると思ってなかったから、曲たちも嬉しそう!(GEN)」と話したように、古くからフォーリミの成長を見守ってきた「Any」や「bless you」が、広い会場を楽しげに、かつ伸びやかに鳴っていた。


 そんな記念すべき晴れ舞台で、胸を鷲掴んでくるような感情的なライブを次々と繰り広げる4人だが、笑いどころもしっかり用意するところが彼ららしい。「みんながびっくりするような人たちからビデオレターを貰った!」という前振りから放映されたのは、メンバーがフレディ・マーキュリー、芥川龍之介、食いだおれ太郎、魔女のキキ等に扮したVTR。「一体どんなアーティストが出てくるのだろう……?」という会場の予想と期待の斜め上をいく遊び心に、会場は大きな笑いに包まれた。


 そしてVTRの中で女装姿を披露したKOUHEIの名誉挽回ともいうべく猛々しいドラムソロを経て、後半戦の開幕を告げる「Night on」へと突入。熱い火柱がステージ下から吹き上がった「cubic」や、ハードロックさながらのゴリゴリの低音と、開放感のあるサビのメロディーが癖になる「discord」を経てもなお失速する気配が一切ない。むしろ曲を追うごとに勢いが増していくその様は、まさにランナーズハイといったところか。


 ここまでフォーリミを減速させることなく突き動かしてきたその原動力は、「なんなら俺より歌詞を覚えてるんじゃないかってくらい知ってくれてる人がいて。これって当たり前じゃないです、いつもパワー貰ってます」というGENの言葉通り、自分たちを正面から支えてくれている人たちの存在だ。そんなファンへ「自分たちの自己満足で始めて好きでやってきたことが、気付いたら誰かの生きがいになっていたり、救われたと言ってくれたり。こんなに嬉しいことはないです」と感謝を述べるGEN。生きるための力をもらっては返すというその積み重ねを幾度となく繰り返してようやく辿り着いたのが、まさにこのステージなのだろう。「ここで歌うために作りました」という言葉から始まった「eureka」を、<これからきっと/未来へと続く朝日が昇る>という歌詞の通り、高く掲げられた日の丸の下で歌っている姿こそが、その絶対的な証明だった。


 「僕たちは特別、金とかコネとかあったわけじゃないし、オーディションに受かったわけでもない。ちょっとずつちょっとずつ、名古屋のガラガラのライブハウスから少しずつ仲間を増やして、地続きでここまでやっとこれました」―――GENはこの日、日本武道館に立てた理由を「自分たちの実力」だとは一言も口にしなかった。音響、照明、舞台、レコード会社、ライブハウスで迎えてくれるスタッフ、志半ばで現場から去っていった仲間、今なお現場で互いを高め合える仲間がいてくれたからこそ成し遂げられた一日だと語ったその姿と目に滲む涙には、嘘や世辞はひとつもない。


 そんな真っ直ぐな4人がラストに贈った「Terminal」「swim」は、今まで以上に熱く胸に響いた。彼らが<あの日の自分を許せないな/選び間違えた日々を返せよ>と惑いながらも乗り越え歩んだ日々は、決して間違っていなかった。「皆さんの未来に光が射しますように、俺たちに光が射しますように。そして日本のロックシーンに光が射しますように」という願いを、自らの手と足と歌で叶えにいく。そんな確固たる未来を見据えた熱演で、念願のステージでの本編を終えた。


 そして鳴り止まない大歓声に招かれ「どこまでいけるか分からないけど、ここまで来たからには山頂目指すしかない!」と挑んだアンコール、さらにはミラーボールの光が星のように降り注いだ「midnight cruising」をプレイしたダブルアンコールと続き、武道館での特別な時間を一秒も余すことなく共有した4人。「みんなの青春にはなりたくない!少しでも長い付き合いをしたい!」という彼らの“最初の”武道館公演は、盛大な大歓声と拍手に見送られて幕を閉じた。
 
 絶えず高みを目指すバンドなら、それが例え武道館公演でも、過ぎてしまえばいち通過点なのだろう。それでも彼らの現時点で最大のポイントになったことは間違いないし、この最高の夜を越えたフォーリミのこれからが楽しみで仕方がない。そんなフォーリミがゴールとスタートを同時に切った奇跡の瞬間に立ち会えたことを誇りに思う。(峯岸利恵)


■セットリスト
01. monolith
02. fiction
03. escape
04. Chicken race
05. Warp
06. drops
07. Now here, No where
08. labyrinth
09. nem...
10. Grasshopper
11. knife
12. Lost my way
13. imaginary
14. Buster call
15. Remember
16. Any
17. compact karma
18. bless you
19. Night on
20. mahoroba
21. cubic
22. discord
23. Letter
24. milk
25. hello
26. eureka
27. Horizon
28. Terminal
29. swim
<アンコール>
30. climb
31. Feel
<ダブルアンコール>
32. midnight cruising
33. Give me