トップへ

バクホン、SHISHAMO、クリープ、黒猫チェルシー、爆弾ジョニー…ロックバンドが迎える新局面

2017年02月21日 13:02  リアルサウンド

リアルサウンド

THE BACK HORN『あなたが待ってる』通常盤

 意外な組み合わせによるコラボレーションから生まれた楽曲、ルーツに回帰することで自らの独創性を示した作品、そして、久々のカムバックとなるライブアルバムまで。それぞれの表現方法により、2017年早春、新たなフェーズに向かうロックバンドの新作を紹介します。


(関連:THE BACK HORN、宇多田ヒカル共同プロデュース作に見るクリエイティブの“豊かさ”


 活動19年目を迎えたTHE BACK HORNの2017年最初のシングル曲は、宇多田ヒカルをプロデューサーに迎えた「あなたが待ってる」。作詞・作曲を手がけた菅沼栄純(G)の頭のなかで宇多田ヒカル、山田将司(V)が一緒に歌っているのが聴こえてきたことに端を発したこの曲は、“大切な人のことを思い浮かべるだけで、温かく、優しい気持ちになれる”という心理的状況(←このテーマは宇多田の最新作『Fantôme』とも重なっている)を描いたミディアムバラード。ボーカル、ピアノ、さらに作詞、アレンジにも参加した宇多田との共同作業によって、THE BACK HORN特有の濃密なバンドグルーヴを残しつつ、ポップスとしての精度を高めることに成功している。


 docomo CM「ドコモの学割」に出演するなど、メジャーレーベル移籍以降、さらに知名度を上げているSHISHAMOのニューアルバム『SHISHAMO 4』。“全曲シングル級の楽曲を揃える”という意気込みで制作された本作は、モータウンのテイストを取り込んだアッパーチューン「好き好き!」、ピアノをメインにしたバラードナンバー「恋」、華々しいホーンセクションをフィーチャーした「メトロ」など、さらにポップス感を増した仕上がり。3ピースのロックンロールバンドとしての存在感、ストーリーテラーの資質を備えた宮崎朝子(V/G)のソングライティングもさらに向上していて、J-POPユーザーからバンドキッズまで、全方位的なリスナーを視野に入れた作品と言えるだろう。


 前作『世界観』で示した音楽性の広がり、そして、日常のなかに潜む葛藤と諦念と希望が入り混じった一瞬のストーリーを描き出すソングライティングをさらに突き詰めた、クリープハイプの5曲入り“作品集”『もうすぐ着くから待っててね』。ソウルミュージック・テイストを反映したサウンドのなかで<ただちゃんと好きなんだ>と伝えようとする(もちろん伝えられない)あまりにもピュアなラブソング「ただ」、ポストパンク的な鋭い音像とともに<この歌に意味はない。だからこそ美しいだよ>とリスナーに突きつける「は?」、小学生同士の愛らしくも切ない友情を描いた「校庭の隅に二人、風が吹いて今なら言えるかな」など、とにかく名曲揃い。“いい曲を作れば大丈夫”という原点に立ち返った本作は、クリープハイプの新たな出発点になりそうだ。


 前作『HERENTIC ZOO」以来、じつに4年半ぶりの黒猫チェルシーのオリジナルアルバム『LIFE IS A MIRACLE』。渡辺大知(V)が出演したNHK連続テレビ小説『まれ』の劇中バンドの楽曲(「涙のふたり」「また会おう」)、映画『新宿スワンⅡ』の挿入歌「海沿いの街」といったタイアップ曲も収録されているが、本作を聴いてもっとも印象に残ったのは、メンバー自身のフェイバリット(ELO、デヴィッド・ボウイ、Black Sabbath、Led Zeppelinなどなど)からの影響を受け継ぎつつ、それを自由に取り入れながら、圧倒的な独創性を備えたロックナンバーにつなげていること。音楽に対する造詣と愛、プレイヤビリティの高さを含め、このバンドの潜在能力はやはり破格。本作から始まる新たなストーリーをしっかり追いかけたいと思う。


 りょーめー(V)の心身の不調により2014年11月から活動を休止していた爆弾ジョニー。昨年6月に活動を再開、その最初のアクションとなる全国ツアー『ROAD to BAKUDANIUS 2016』のライブ音源をコンパイルしたのが、本作『Live to BAKUDANIUS』である。代表曲3曲(「終わりなき午後の冒険者」「唯一人」「かなしみのない場所へ」)と、ブラックミュージック、フォークソングなどのテイストを感じさせる新曲9曲で構成された本作は、このバンドのカムバック作であると同時に、リアルなドキュメンタリー作品のような生々しさを体現している。RCサクセションのライブ盤『RHAPSODY』(1980年)のように、本作がバンドのブレイクのきっかけになることを願う。(森朋之)