2017年02月20日 10:14 弁護士ドットコム
「そろそろ『開業届』を出そうかな、とは思っているんですけど。本当に必要なのかわからなくって」。約2年前にフリーランスのライターとして独立したユミ子さん(28)が、悩んでいるのは会社員には馴染みの薄い「開業届」だ。
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「名乗ってしまえば、誰にでもなれる」などと揶揄されることもある「フリーランス」だが、税制上は「名乗ってしまえば」ですむものではない。しかし、冒頭の女性が提出を延ばしているのは「手間がかかるのはイヤ」「そもそも、どういうメリットがあるのか今ひとつわからない」、この2つだという。
「開業届」を提出することは、どのようなメリットがあるのだろうか。野口五丈税理士に聞いた。
「『開業届』を出す最大のメリットは青色申告ができるようになることです(なお、青色申告のためには、青色申告承認申請書の提出も必要です)。青色申告は、白色申告に比べ所得税の控除額が最大65万円と大きく、赤字を次年度に繰り越せる点でも節税効果が高いです。
また開業届を出すことで個人事業主としての証明ができるので、『小規模企業共済』(経営者向けの退職金制度)に加入できるようになります。加入すると、掛け金が全額所得控除されるため、節税メリットが大きいです。
ほかにも屋号名で銀行の口座が開設できるなど、個人事業主としての自覚や社会的な信頼が高まるといった、金額に表せない効果もあります」
開業届の提出は、ユミ子さんがいうように「面倒」なものだろうか。
「いえ、『開業届』は提出は、簡単な手続きですみます。まず書式を、国税庁のHPからPDFファイルをダウンロードするか、最寄りの税務署に行って貰ってください。用紙に必要事項を記入して納税地の所轄税務署に直接持参するか郵送で届け出をします。これだけで手続きは完了します。
なお、この時に控えを手元に残しておいた方がいいので1部コピーを取り、郵送の場合は返信用封筒を同封のうえ送付する点に注意が必要です」
しかしながら、フリーランスでも提出していない人も珍しくないようだ。
「新たに事業を開始したとき、事業用の事務所・事業所を新設、増設、移転、廃止したとき又は事業を廃止したときに開業届を提出する必要があります。提出期限は事業開始から1ヶ月以内ですが、実際には開業届を出さないまま仕事を始めている人もいるでしょう。
しかしながら、上記の通り大きなメリットがありますので、開業届を出していないというのはもったいない話なのです。期限を過ぎていても気づいた時点で開業届を提出した方が得策でしょう」
【取材協力税理士】
野口 五丈(のぐち・いつたけ)税理士
ITベンチャー企業の支援に特化した会計事務所。節税だけでなく、クラウド会計やベンチャーキャピタルからの資金調達、補助金申請支援(創業補助金、ものづくり補助金)を強みとする。支援実績多数。
事務所名:野口五丈公認会計士事務所
事務所URL: http://itsutake.com/
(弁護士ドットコムニュース)