生涯未婚率が年々高まり、継ぐ人がいないために先祖の墓が「無縁墓」状態になってしまう、というケースが増えている。
そんな世相を反映して、「樹木葬」が注目を集めている。永代供養簿などのサービスを提供するアンカレッジは2月15日、高輪庭苑(港区・泉岳寺)で「樹木葬」500区画分をほぼ完売したと発表した。
もう墓守は不要? 花や木に囲まれて眠る、自分サイズの埋葬方法
そもそも「樹木葬」とは、樹木や花などを墓石の代わりにした自然葬のことを指す。自由度が高いことが特徴で、宗教宗派が不問というケースが多い。1999年に岩手県で初めて樹木葬が行われ、東京でも2012年に希望者を募集。定員500人のところ8000人以上から応募があったという。
アンカレッジが高輪庭苑で提供する樹木葬は2013年に販売スタート。現在60代を中心に利用されている。樹木葬を選んだ理由として「承継しなくてもよい」ということが挙げられているようだ。費用も安く、一人用のお墓は永代供養料が50万円からとなっている。
また、都心にあり自宅から行きやすいということを理由に選ぶ人も。遺された利用者の中には、週に一度訪れる人もいるそうだ。一定の埋葬期間が終わると、骨壺から骨を取り出して土に還されるという点に賛同する人もいるという。
「先祖代々のお墓に入りたい」という人はもはやごく一部
高輪庭苑のサイトには50代男性の利用者の声も紹介されている。
「子ども達に面倒をかけたくないので、最終的に合祀されて自然に還る樹木葬永代供養墓を選びました」
やはり、墓の管理が後々子どもの負担になることを懸念しているようだ。また、子どもがいなくても、自らの価値観を大切にして樹木葬にする人もいる。
「若い利用者だと40代独身の方も。『ペットと一緒のお墓に入りたい』と選ばれたようです」(アンカレッジ広報担当者)
今回、500区画完売したことを受けて、同社は樹木葬の区画を敷地内に新たに増設するという。
東京都が昨年3月に発表した調査では「先祖代々のお墓に入りたい」と答えた人は13.2%に留まったが、「家族・夫婦・個人のお墓に入りたい」と答えた人はその3倍を上回る47.6%となっている。今後、子どものいない夫婦や独身高齢者が増えていくと見られるが、そうなれば樹木葬のニーズもより高まっていきそうだ。