自分の性器に対してコンプレックスを持っているものの、誰にも相談することができずに悩んでいる女性たちがいる――。
新刊JPで2月8日に配信した『女性器コンプレックス』(幻冬舎刊)の書評には、「コンプレックスの元になる言葉を言ったパートナーが良くない」「コンプレックスといっても単なる思い込みでは?」など、賛否両論含めて大きな反響が寄せられた。
本書の著者であり美容婦人科医の喜田直江さんは、延べ3000人以上の女性器にまつわる悩みを解決してきたが、男性と交際や結婚ができないなど、コンプレックスが人生に深く影響を及ぼしてしまうケースもあると指摘する。
では、どんな人が女性器コンプレックスを抱いてしまうのだろうか。喜田さんにお話をうかがった。
■男性は要注意…!何気ない一言が女性たちを悩ませている
――「性器」というと、そう簡単には人に相談できない部分ですよね。そこにコンプレックスを抱いて悩んでいる女性たちがいる。
喜田:そうですね。多く見受けられるのは、パートナーや医者から指摘を受けて「自分は普通じゃないんだ」と悩みを抱え込んでしまうというケースです。でも、実際に性器の形や大きさ、色などに正解はありません。
もう一つは、生まれてからずっと不便を感じているというケースですね。例えば、自転車やオートバイに乗ったり、細身のパンツをはくと、性器が挟まったような感覚で痛みを感じるという方がいらっしゃいます。この場合、原因は小陰唇というひだの大きさにあることが多いです。
私の元に相談にいらっしゃる方はごくごく普通の女性ばかりですよ。
――悩みに悩んだ末に喜田さんの元にいらっしゃるのですか?
喜田:長い期間悩んで来られる方もいらっしゃいますし、「普通じゃない」と思ってすぐに来られる方もいらっしゃいますね。また、例えばインターネットで性器に関する噂を見て、「自分はこれに当てはまるかも…」と思って相談にいらっしゃる方もいます。
――例えば、「性器が黒ずんでいると経験人数が多い」というような噂話をネットで見て…ということでしょうか。
喜田:そうです。でもそれは都市伝説のようなもので、肌の色と同様に元から個人差があるものです。ネットの情報には間違えているものも多いのですが、知識がないと本当かどうか判断できません。だから悩んでしまうのでしょうね。
――本書では20代から70代まで幅広い年齢の女性の悩みが出てきますが、年齢によって悩みの傾向は違うのでしょうか。
喜田:違いますね。例えばすべての年代に多いのは小陰唇が大きいといった悩みです。20代だと処女膜が原因の性交痛が多いですね。痛くて性行為ができないという方もいます。30代、40代になると膣のゆるみが気になる。それ以上になると加齢による性交痛のご相談が多いです。
――性交痛といえば、扶桑社から出版されている『夫のちんぽが入らない』という本が大きな話題を呼んでいます。夫のペニスだけが入らないというケースというのはありえるのでしょうか?
喜田:私も読ませていただきましたが、このように誰にも言えずに悩んでいる方は想像以上に多いのではないかと思いました。実際のところは診察してみないと分かりませんが、おそらく何かしらの対処はできたのではないかと思います。
性交痛の場合、物理的な問題だけでなく、メンタル的な問題もあります。特定の人に対してだけ緊張してしまい、入らないということもあるのですよ。
――性器に関する悩みは周囲の人たちになかなか相談しにくいと思います。コンプレックスを抱えたら、まずどうすればいいのでしょうか?
喜田:一人で抱え込むことだけはしないほうがいいですね。でも、友だちにそう簡単に言えることでもないですし、産婦人科医に話しても、「病気じゃないから」と軽く返事されて終わりということもあるようです。
悩みを抱えているときに、その悩みを簡単につっぱねられたらそれこそショックが大きくなりますよね。だから、ちゃんと話を聞いてくれる人に相談すべきでしょうね。
――そういえば、先ほどもおっしゃっていましたが医者の言葉が原因で性器にコンプレックスを抱いてしまうという女性も多いとか。
喜田:そうなんです。産婦人科を受診したところ、膣のゆるみについて「命に関わる病気じゃないんだから、気にしなくていい」とだけ言われたり、婦人科のがん検診で医者がカルテに「大きい」と所見を書いているのを見てしまったり…。
それらは、医学的に問題はありません。でも、そこが引き金になり、コンプレックスに陥ってしまう女性は少なくないんです。性交痛に悩んでいると言うと、「最初は痛いのが当たり前だから我慢が足りない」と言われてショックを受けた女性もいました。
――「我慢が足りない」で済ませてしまう、と。
喜田:そうなんです。そういったことがきっかけでコンプレックスになり、がん検診を受けられなくなったり…ということがあるから怖いんです。
また、そういった発言をしてしまうのは、男性の医師に限りません。女性の医師から言われて塞ぎ込んでしまったということもあります。
「女性だから悩みを聞いてくれる」というわけではありません。悩みを相談できる人がいない…。そこがこのコンプレックスの根を深くさせている部分なのだと思います。
(後編に続く)