F1は、「オーバー・ザ・トップ(OTT)」方式で、インターネットを通して放送を行う可能性についてテストをしてきた結果、技術面での準備は整ったという。しかし商業的な問題のため、近々テレビから移行することはないと考えられている。
タタ・コミュニケーションズは、フォーミュラワン・マネジメントと連携し、F1インターネット放送のために取り組んでおり、昨年のシンガポールGPでは試験的放送を行った。その結果、「オーバー・ザ・トップ(OTT)」、つまり通信会社等に頼らない、インターネットによる配信に向けて、技術面の準備が整ったことが分かった。
F1視聴者は過去数十年にわたり、特定のテレビチャンネルに合わせることでレース等を見てきたが、OTTが導入されれば、F1がインターネットを通じて視聴者に直接放送を届けることができる。
タタのF1ビジネス担当マネジングディレクター、メユール・カパディアは、インターネット接続を介してライブ配信する場合にしばしば生じる遅延を排除するため、相当の労力を注いだと語った。
「これまでOTTが直面してきた課題のひとつは、テレビで見ている画面と、iPadやスマートフォンで見ている画面が一致しないことだった」と彼は語った。
「そこが大きな技術的挑戦だったが、取り組んできた結果、解決できることを証明した」
「シンガポールのレースで行ってみて、技術的に実施への準備が整ったと言える」
しかしながら、テレビ会社が高額の独占放映権料を支払っていることもあり、F1が近いうちにOTTをメインの放送形態として採用することはありそうもない。
カパディアは加えて「OTTは商業的観点からいくつか答えを必要としている」と述べた。
「スポーツフランチャイズの面で直接消費者にアプローチすることが望ましいのか、その場合、放送局から入るほどの規模(の権利料)が得られないということが商業的な課題だ」
F1の新オーナー、リバティ・メディアがF1のテレビモデルに短期間で変化を引き起こす可能性は低いとみられるが、カパディアは視聴体験の面で多くのことがファンのために改善されると予想している。
「まだたくさんのチャンスが存在している。我々が取り組むことができることは多い」と彼は付け加えた。
「全体的なデジタルへの転換が起こりつつある。今、我々が取り組んでいる方法、このスポーツに関して検討している方法、サーキットやスタジアムにいる時にスポーツの情報を得る方法にかかわらずだ」
「サッカー、F1、クリケットなど、何を観戦するにしても、エンターテインメントの価値はあふれる臨場感とスポーツへの近さによってもたらされる」
「臨場感の問題は、ふたつめの画面で得られるデータの種類によってある程度解決できるが、画面サイズにかかわらず、基本的には、メインの視聴体験によって、臨場感を高め、視聴者が見たいものの選択肢を増やし、視聴者が見たがっている、より高次のデータポイントを提供する必要がある」
「我々は、360度デジタルへの転換を見据えている。それは実現するだろうし、ファンを満足させるものだ」