北米を中心に展開されるGRCグローバル・ラリークロス選手権の17年シーズンに向け、昨季王者のVWアンドレッティ・ラリークロスと、今季からSTIの技術支援を受けることとなったスバル・ラリー・チームUSAの両チームが、シカゴオートショーにて新カラーリングを公開した。
16年のドライバーズチャンピオンを獲得した元F1ドライバーのスコット・スピードは、41号車のカラーリングを一新。新たにレッド、ホワイト、グリーンのカラースキームとなり、昨季からスポンサーとなったビーフジャーキー・ブランドの『オベルト』が支援を拡大。さらにコンビニチェーンのサークルKが加わり、車名もオベルト・サークルK・ビートルGRCとなった。
VWアンドレッティで4年目のシーズンを迎えるスピードは、「このマシンに昨年同様オベルトのロゴを載せて走れるのは光栄だ。もちろん、同じような成功を収められると確信しているよ」とコメント。
「僕らはオフシーズンの間に、マシンを改善すべく本当に努力してきた。レースが待ち遠しいし、再びタイトルを防衛できると信じている」と、自身3度目の王座に意欲を見せた。
また、チームメイトでこちらも2度の王座獲得経験を持つタナー・ファウストも、同様にカラーリングを公開。彼の34号車は『ロックスター・エナジー・ドリンク』と再びのタッグを組み、昨季から反転してブラックを基調にイエローを組み合わせたおなじみのカラーリングとなった。
「16年シーズンが遠い昔のように感じる。僕自身はタイトルを逃したけど、12戦8勝とチームは大きな成功を収めたし、今季は僕が再びフィールドの先頭に立てるはずだ」とファウスト。
16年限りでWRC世界ラリー選手権のワークス活動を休止したことも併せて、VWはラリークロスに向けた支援拡大を表明。VWアメリカのマーケティング担当副社長であるヴィナイ・シャハイニは「ドイツのフォルクスワーゲン・モータースポーツとインディアナポリスのアンドレッティ・オートスポートのコラボレーションは、2017年にさらなる成功を目指して協業体制を強化している。今季もスコット、タナー、そしてチームの勝利を祝うことを楽しみにしている」と、自信を見せた。
一方、同じシカゴオートショーの会場で、今季からスバル・チームUSAのドライバーとしてGRCに参戦することとなった元WRCワークスドライバーのクリス・アトキンソンも、55号車WRX STIラリークロス・スーパーカーの新カラーリングを披露。チームメイトでこちらも元WRCドライバーのパトリック・サンデルとともに全12戦のシーズンに挑む。
GRC向けにバーモント・スポーツカーが開発したWRX STIラリークロス・スーパーカーは、マシンを共同開発してきたSTIが今季から技術支援を拡大。580psを発生する2リッター・ボクサーターボは600psオーバーを目標にし、車体側でも対接地、対車両のコンタクト強度を高める改良が施される。
それに先駆け、STIは1月末に埼玉県の本庄サーキットでGRCマシンの開発テストを敢行。昨季のクリス・アトキンソン車を国内に初めて持ち込み、新井敏弘のドライブでデータ収集を行った。
昨年最終戦のロサンゼルス戦にスポット参戦した経験を持つ新井は、GRC車両について「ひとことで言えばWRカーに近いフィーリング」だと語る。
「量産車ではブレーキング時のノーズダイブを抑えるアンチノーズダイブジオメトリーと加速時にリヤの沈み込みを抑えるアンチスクワットジオメトリーの採用が今や常識ですが、WRカーやGRCマシンではとくにフロントは採用していません。ブレーキング時にフロントをパタンと縮めてフロントタイヤの荷重を大きくして、グラベルでもロックしにくくしている。リヤはエンジニアによって異なるみたいですけどね」
技術規則上、電子制御でのローンチコントロール等は使用不可となり、スタートを決めるには最適なトルク特性が求められ、今回のテストではそのマッピングも複数試された。
「スタート時には半クラッチを使いながらの微妙なアクセルコントロールも必要。タイヤもワンメイクで、サイズは235/45R17とパワフルなマシンにしてはプア。スタート時はもちろん、コーナリング、ブレーキングとドライバーの技量によるところが大きいので面白いですよ」と新井。
VWビートルや北米ホンダのシビック・クーペを相手に、どんな戦いを見せてくれるか。開幕戦は4月29日のテネシー州メンフィスでのイベントが予定されている。