2017年02月15日 10:34 弁護士ドットコム
新生活に向けて、自動車の免許を取ろうとする人が増える時期です。車はあると便利ですが、万一事故を起こしてしまうと、一生を棒に振るような大きな責任を負う可能性もあります。
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弁護士ドットコムの法律相談コーナーには、任意保険に入っていない「無保険」で事故を起こした人からの相談が多数寄せられています。
あるドライバーは、T字路で左折しようとしたところ、高齢者と接触。スピードはほとんど出ていなかったのに、手首や足の付け根などを骨折させてしまったそうです。任意保険に入っていないため、治療費がどのくらいになるか、不安な思いをしているそうです。
自動車保険にはどのようなものがあるのか、また保険に入っていないことで、どんなリスクがあるか、吉山晋市弁護士に聞きました。
自動車保険は大きく分けると、強制加入の自賠責保険と、任意保険があります。自賠責保険に未加入で車を運転した場合には、たとえ事故を起こさなくても「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処せられます。
自賠責保険は、他人を死亡させたり、けがを負わせたりした場合に適用されるので、「物損」には適用されませんし、運転者自身のけがにも適用されません(ただし、同乗者は「他人」に該当するので適用されます)。
保険金額は、死亡3000万円、傷害120万円、後遺障害等級に応じて75万円~4000万円ですが、被害者の方に重篤な後遺障害が残ってしまうと、将来の介護費用、逸失利益や慰謝料により、数千万円から億単位の損害賠償責任を負うことがあります。そうすると、自賠責保険の保険金だけでは到底、払いきれないことになります。
そこで、「任意保険」への加入が必要になります。任意保険の主な内容は、「対人」賠償保険と「対物」賠償保険です。
対人賠償保険は、被害者の治療費や逸失利益、慰謝料などをカバーするもので、上記のとおり賠償金額が高額になる可能性があることからも、保険金額は「無制限」にされることをお勧めします。また、対物賠償保険も、自賠責保険は適用されませんので、保険金額は「無制限」にされる方が多いでしょう。
任意保険にはいろんな「特約」があります。たとえば、友人などから車を借りたときに適用される「他車運転特約」です。これは、保険会社の適用条件を満たせば、友人など他人から車を借りて運転中に事故を起こした場合に、他人の自動車保険より優先して自分の自動車保険から保険金が支払われる特約です。また、旅行などでグループや家族でレンタカーを借りるときも、一般的な自家用車種であれば、他車運転特約の対象になります。
他の特約としては、ご自身が事故の被害に遭った時に役立つ「弁護士費用特約」というものもあります。事故による損害賠償の示談交渉などを弁護士に依頼する際に、任意保険会社が弁護士費用を負担してくれるものです(ただし、上限があります)。
無保険のまま車を運転して、ましてや事故を起こしてしまうと多額の損害賠償責任を負い、場合によっては「差し押さえ」をされるリスクもあります。自分は大丈夫と過信せず、きちんと保険に加入して、安全運転を心がけ、カーライフを楽しんでいただきたいと思います。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
吉山 晋市(よしやま・しんいち)弁護士
弁護士・司法書士・社会保険労務士・行政書士が在籍する綜合法律事務所で、企業法務、不動産、離婚・相続、交通事故などの分野に重点的に取り組んでいる。
事務所名:弁護士法人みお綜合法律事務所
事務所URL:http://www.miolaw.jp/index.html