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ポーター・ロビンソン&マデオン、一夜限りのライブへの期待ーー“物語”と“感動”を届ける才能を考察

2017年02月14日 18:03  リアルサウンド

リアルサウンド

ポーター・ロビンソン&マデオン

 ポーター・ロビンソン&マデオンが、2月15日に日本限定アルバム『シェルター:コンプリート・エディション』をリリースする。同作には、これからのエレクトロニック・ミュージックシーンを担うDJ/プロデューサーであるポーター・ロビンソンとマデオン、それぞれの楽曲が収録され、二人の共作による楽曲「シェルター」が収められている。「シェルター」は、マデオンの精巧かつ叙情的なサウンドとポーター・ロビンソンの真骨頂であるセンチメンタルなメロディ、そして両者に通じるポップさが混ざり合ったポーター・ロビンソン&マデオンならではの1曲となっている。また同曲のMVは、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』や『ソードアート・オンライン』などの人気アニメで知られるA-1 Picturesが制作。昨年10月にポーター・ロビンソンが単独で来日した際、都内某所の街頭ビジョンにてオンエアされ、約200人のファンが集まり大きな話題となったことも記憶に新しい。


 そして、2月21日には東京・Zepp DiverCityで、ポーター・ロビンソン&マデオンの一夜限りのライブ『シェルター・ライヴ・ツアー』が開催される。北米、ヨーロッパでのツアーは絶賛を呼び、彼らの友人でもあるエレクトロニック・ミュージシャン、ゼッドはTwitterで「これまで見たライブで最高のものだ!」と賞賛。その他にも両者とツアー経験もある人気DJ=ディロン・フランシスはインスタグラムで「君たちを誇りに思う!」とコメントし、彼らのライブに大きな注目が集まっている。


 今回のコラムでは、ポーター・ロビンソン&マデオンの日本限定アルバム『シェルター:コンプリート・エディション』のライナーノーツを執筆した柴 那典氏がポーター・ロビンソン、マデオンそれぞれのアーティスト性への考察を踏まえ、二人による「シェルター」の魅力、『シェルター・ライヴ・ツアー』への期待をつづった。(編集部)


・ポーター・ロビンソン&マデオン『シェルター・ライヴ・ツアー』に寄せて


ポーター・ロビンソン&マデオンが、2月21日に東京・Zepp DiverCityで、一夜限りのライブ『シェルター・ライヴ・ツアー』を開催する。


 いろんな意味で、スペシャルな一夜になるだろう。共に20代前半。親友同士でもある2人は、間違いなくエレクトロニック・ミュージックのこれからの時代を担うDJ/プロデューサーだ。ここ数年のEDMのハイプが一段落した今だからこそ、単なるパーティー性ではなく、音楽を通して「物語」と「感動」を届けることができる2人の才能は際立っている。


 筆者が最初にポーター・ロビンソンを観たのは2015年のSONICMANIA。強く印象に残ったのは、アニメのマッシュアップを使った映像だけではなく、一つのセットを通して、普遍的な感傷とセンチメント、そして肯定性を伝えようとしているステージの構成だった。マデオンもその年に観た。やはり印象に残ったのはメロディの強靭さで、ポップ・ミュージックとしての歌の力がそこにあった。


 だから、二人が共作して曲を作ったというニュースを聴いた時にはすごく納得するものがあった。ポーター・ロビンソンはアメリカ出身の24歳、マデオンはフランス出身の22歳。共に10代の頃から音楽制作を始め、レディー・ガガのプロデュースやリミックスに携わるなど、若くして巨大な成功を収めたキャリアの持ち主である。ポーター・ロビンソンは『Worlds』(2014年)、マデオンは『Adventure』(2015年)と1枚のオリジナルアルバムをリリースしている。出身こそ違えど、同じ世代、同じ価値観を共有する同士だと言える。


 そしてもう一つは、2人が日本のポップカルチャーに大きな影響を受けたミュージシャンであるということ。特にアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』をフェイバリットに挙げるポーター・ロビンソンの情熱が、今回二人が共作した「シェルター」という楽曲の誕生の背景にある。


 A-1 Picturesが手掛けたアニメーションMVが話題を呼んだこの曲だが、そもそも、この曲はショートフィルムとしての企画から始まった楽曲だった。ストーリーの原案を手掛けたのもポーター・ロビンソン自身だ。3日間かけて彼が書き上げた台本が楽曲の核になった。マデオンとそのモチーフを共有し、「親の愛情」や「次の世代に何かをつないでいくこと」をテーマにし制作を進めていった。


 これだけの熱量が込められた曲だからこそ、2人がタッグを組んだワールドツアー『シェルター・ライヴ・ツアー』も実現したのだろう。これまでに北米、ヨーロッパを回り、各地で絶賛を集めているこのツアー。単なるDJパフォーマンスではなく、お互いの曲をマッシュアップしつつ、ステージは生楽器の演奏や歌を交えたライブとして展開される。巨大なスクリーン映像や最新の照明技術も一体となり、巨大な高揚感でオーディエンスを包む。


 来日を記念して2月15日にリリースされる日本限定アルバム『シェルター:コンプリート・エディション』は、その感動を増幅してくれるような一枚でもある。CDには「シェルター」をはじめ、ツアーでも披露してきたそれぞれの代表曲、そしてリミックスなどを収録。本人たちは収録曲から曲順にも強いこだわりを持っており、今回のツアーを連想させる『シェルター・ライヴ・ツアー』のセットリスト的な1枚となっている。Blu-rayには「シェルター」のMVが収録され、本人たちのスペシャル・メッセージ、歌詞対訳や解説と共に、ビデオに登場するキャラクター“凛”のフラッグも封入されている。「パッケージのデザインやポイントにとてもこだわりを持って、力を入れて作りました」とポーター自身もコメントしている。


 来日後、2人は4月に行われるコーチェラ・フェスティバルに出演することが決定している。おそらくこれまで以上のブレイクスルーが待ち構えているだろう。


 そんな2人が「特別な一夜」と声を揃えるのが、今回の来日公演だ。後々語り継がれるライブになる予感がしている。(文=柴 那典)