2月10日から11日にフェニックス・レースウェイでインディカーの公式合同テストが開催。2日間で4回の走行セッションが行われ、エド・カーペンター・レーシングからフル参戦するJR.ヒルデブランドがトップタイムをマークした。
■3時間×4回のプラクティス
今年も開幕前合同テストはフェニックス・レースウェイで開催され、2日ともに午後1~4時、6~9時の各3時間のプラクティス・セッションが行われた。気温は22~28度と、期待通りに2月でもアリゾナは暖かな気候だった。
各セッションでの最速ドライバーは次のようになった。
10日の午後のセッションがチーム・ペンスキーに移籍したばかりのジョセフ・ニューガーデン。セッション2はマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)。セッション3はエド・カーペンター・レーシングのレギュラーシートを掴んだJR.ヒルデブランド。最終セッションはライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)だった。
ニューガーデンとヒルデブランドはシボレーユーザー、アンドレッティとハンター-レイはホンダユーザーだ。ラップタイムは、セッション3で昨年のエリオ・カストロネベスによるコースレコードが非公式ながら破られた。
セッション1はシボレーがトップ4を占め、セッション2はホンダがトップ6独占。セッション3はシボレーがトップ5で、最後のセッション4はホンダ勢がトップ5と、2日とも日中のセッションでシボレー勢が速く、ナイトセッションではホンダ勢が優位という結果だ。
■ショートオーバルではシボレー有利か?
フェニックスでのレース開催は4月の下旬なので、今回のテストより更に気温、路面温度は高くなる。予選は日中で、決勝はナイトレース。結果表だけ見ると、予選はシボレー優位で、決勝トリムならホンダ勢の戦闘力が高い……となるが、実際には夕方からのセッションでもホンダ勢には予選シミュレーションを行ったケースが多かったようだ。
涼し過ぎるとさえ考えられるコンディションでも予選セッティングを向上させるトライをしていたのは、オーバーテイクの難しいショートオーバルでのスタート順位の重要性からではないだろうか。
それでも、よりタイムの出しやすいはずの涼しいコンディション下でホンダ勢の出したラップタイムは、日中に予選モードで走ったシボレー軍団よりも遅いものだった。昨年から今年にかけては空力ルールが凍結されているが、昨年シボレーが有していたショートオーバルでの優位は、まだ明確に存在しているということだ。
■琢磨にもアクシデントが発生
テスト2日目には大きいアクシデントが3回あった。どれもがターン1~2で発生。最初がセッション3始まって早々のアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)で、夕方からのセッション4ではグラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)、佐藤琢磨(アンドレッティ・オートスポート)がウォールにハードヒットした。
アンドレッティ・オートスポートに移籍してパフォーマンス向上の期待がかけられている佐藤琢磨は、セッション4半ばまで順調にテストプログラムをこなしていた。ところが、まだ1時間以上の走行時間を残したタイミングでアクシデントを起こした。直前のラップは19秒5361と今回の自己ベストに迫るスピードを記録していた。
「こういうカタチでテスト終了となったのは残念」と、幸いにも怪我のなかった琢磨はパドックで話した。アンドレッティ・オートスポートは4台でテスト項目を分担して進めていたが、ロッシがセッション3をほとんど走らないうちにクラッシュ。優先項目を3人でこなす必要が生じ、琢磨のアクシデントに繋がってしまったように見えていた。
アクシデント前までの琢磨は、「去年までのチームは各レースに向けた準備で手一杯だったけれど、アンドレッティ・オートスポートはエンジニアの数がとても多いので、いろいろなプロジェクトに取り組める。その体制が凄い。4台体制で集めることのできる豊富なデータを武器に戦えるのも本当に楽しみ」と大型チームで臨む新シーズンに胸を膨らませていた。すでにシミュレーターやストレート・ライン・テストなど、合同テスト前から琢磨は多くの開発プログラムに参加しているということだ。
■エド・カーペンター・レーシングが1-2
2日間のトータルで2番目に速かったのはエド・カーペンター。トップはヒルデブランドとエド・カーペンター・レーシングが1-2となった。3、4、5番手はペンスキー。ニューガーデン、カストロネベス、ウィル・パワーという順番だ。トップ5をシボレー軍団が占拠。なお、ディフェンディング・シリーズ・チャンピオンのシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)は8番手と目立たない成績に終わったが、プログラムをひとつずつ確実にこなし、手応えを感じている様子だった。
ホンダ勢は、総合6番手のミカイル・アレシン(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)が最上位で、トニー・カナーン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)が7番手。
9番手がデイル・コイン・レーシングに復帰したセバスチャン・ブルデーで、10番手はアレシンのチームメイトのジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)。スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)は11番手で、ハンター-レイは最終セッションでトップだったが、総合では12番手。佐藤琢磨は総合16番手となった。
■ホンダユーザーが反撃の狼煙?
ホンダ勢にとってガナッシの参入は間違いなく大きなプラスだ。彼らのもたらすデータがホンダユーザー全員にメリットをもたらすこともあるだろうし、ホンダチーム間のライバル心がかきたてられてレベルアップがなされることにも期待ができる。アンドレッティ・オートスポートのオーナー、マイケル・アンドレッティは「ホンダのナンバーワンの座を保つ」と意気込んでいた。
今年も合同テストはショートオーバルで行われたが、シーズン序盤はストリート、ロードコースが続く。フェニックスは第4戦で、シーズン半ばに新規開催のゲートウェイ、アイオワがある。ショートオーバルは全17戦のうちの3戦でしかないのだ。それらのコースではエド・カーペンター・レーシングとチーム・ペンスキーが優位に戦いを進め、ホンダ勢は差を縮めるべく力を投入していくことになる。
すでに多くのチームがロードコース用のテストを行ってきているが、ガナッシ勢やブルデイなど、シボレーからホンダへと今年からスイッチした面々は、エンジンのパフォーマンスに好感触を得ていることを話していた。ストリート/ロードでも昨年はシボレー有利だったが、シリーズの過半数を占めるこれらのコースではホンダ勢の巻き返しが見られそうな雰囲気が漂っている。そして最後に、インディ500を含む高速オーバルだが、ここ2シーズン優位にあったホンダがそれを今年も保つことができるのか? 高速オーバルは、インディ、テキサス、ポコノの3レースがスケジュールされている。