バレンタインデーを目前に控えた2月12日。今年も「革命的非モテ同盟(革非同)」による「バレンタインデー粉砕デモ」が行われた。「革非同」は結成10周年目を迎え、デモも今年で10回目。人々から嘲笑を受けながらも活動を続けてきた主催者の思いとは――。
沿道の女子大生からは「可哀そう」と同情の声も
多くのカップルや家族連れで賑わう休日の渋谷に「バレンタインデー粉砕」「非モテの人権を踏みにじるな」というシュプレヒコールが響き渡った。手書きのプラカードやのぼりを手に15人のデモ参加者が、渋谷駅前や明治通りを練り歩く。沿道の歩行者は面食らったり、面白がって写真を撮ったりしている。
一部の歩行者からは「非モテのひがみじゃん」という嘲笑も聞こえてきた。渋谷に遊びに来たという大学生の女性2人組は、「意味がわからない。チョコを貰えなくてやっているなら可哀そう」という感想を述べていた。20代のカップルは「世の中には色んな人がいるんですね」と余裕たっぷりの様子で笑っていた。
こうした嘲笑や無理解に晒されながらも、毎年デモを敢行しているのはなぜなのか。今回は欠席だった、同団体の革命評議会議長・マーク・ウォーター氏に代わって、広報担当の男性(30代)は、デモの目的を次のように説明してくれた。
「恋愛資本主義を粉砕することが目的です。現在は、恋愛に価値を見出さない人が圧迫されています。特にクリスマスやバレンタイン、ホワイトデーには非モテへの偏見が強くなります。そのためこれらのイベントに合わせて粉砕デモを行っています。また最近はハロウィンもリア充のお祭りと化してきています。こうした風潮も非モテを蔑むことにつながると危機感を感じ、近年は仮装禁止のハロウィン粉砕パーティーなども行っています」
最近、一部のメディア業界人から、「馬鹿にされていると思い込んでいるからモテない」などと批判を受けたが、「モテないから僻んでいるわけではない。非モテの切実さを理解していない」と反論する。
また製菓会社などバレンタインを商業的に利用する企業への懐疑もある。
「バレンタインを金儲けの道具にするために、『恋愛にまつわる消費をするのがいい』『非モテは劣っている』という価値観を流布しているのは許しがたいことです」
「我々が価値観の多様化を後押ししてきた」と自負
参加者のほとんどは20代~30代と思われる男性だ。
クリスマス粉砕デモに続き、2回目の参加だという20代の男性は「バレンタインの後にチョコレートが大量に廃棄されるのは問題だと思う」「モテない人も住みやすくなればよい」と語っていた。
「端正な顔立ちでモテそうじゃないですか」と記者が尋ねると、そう言われないように持ってきたという黒いマスクを装着してみせた。全身黒のいで立ちに、嘴の形を模したマスクを装着すると重々しい雰囲気が漂ってくる。渋谷にいるリア充への威嚇なのだろうか。
すでに10回以上、デモに参加しているという20代の学生は、「リア充文化の押し付けは問題だと思う。異なる価値観もあるということを認めてほしい」という思いでデモに参加してるという。
「非モテにも愛を分けろ」「チョコの数≠人の価値」「チョコは糖分!愛ではない」という手書きのプラカードを持参していた男性もいた。
女性の参加者も2人いた。40代の派遣の女性は、「面白そう」だと思い、初めて参加してみたという。同じく40代の派遣の女性は、今回が4回目。派遣先の会社では女性たちがお金を出し合って義理チョコを配っているという。「義理チョコを配るときは2000~3000円の負担を求められます。義理チョコは廃止した方がいい」と憤る。
「バレンタインデー粉砕デモ」も今年で10回目。参加者たちは、この10年間の歩みのなかで、価値観の変容に貢献してきたという確かな手ごたえを感じている。前出の広報の男性は、次のように語っていた。
「この10年間、『クリスマスやバレンタインを別に楽しまなくてもいいんだ』という選択肢を提示してきました。最近では女性の『バレンタイン疲れ』も話題になるなど価値観が変容しつつあることが伺えます。我々はそうした変化を後押ししてきたのだと自負しています」
今回のデモにはネットメディアの他に、大手キー局や、欧州のテレビ局の取材陣も来ていた。まだまだ恋愛資本主義が根強い日本社会。今後の革非同の活動に期待をしたい。
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