2017年02月10日 10:23 弁護士ドットコム
セブンイレブンの加盟店が、病欠したアルバイトから9350円の「罰金」を徴収していたことが報道され話題になった。そんな中、ツイッターには、店から罰金を求められたアルバイトの従業員が、店に「請求書」を要求したというエピソードが書き込まれた。
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投稿者によると、1時間遅刻してしまったアルバイトに、店側が「お前が遅れたせいで、俺は今日予約していた整体に行けなかった、キャンセル料は給料から差っ引いておく!」と発言。これに対してアルバイトが「直接弁償しますから、請求書もらえますか?」と告げると、相手の態度が急変し「まぁ今回は許す」と引き下がったそうだ。
アルバイト先で罰金を求められた際に「支払うから請求書をください」と要求することは、有効な対処法なのだろうか。村松由紀子弁護士に聞いた。
まず、従業員が欠勤や遅刻をした際に、遅刻・欠勤時間分の賃金をカットすることは当然でき、法律上も認められています(ノーワクノーペイの原則)。欠勤時間分を超えて差し引くことができるかどうかが、今回の問題です。
賃金カットを行う場合、その旨があらかじめ就業規則に定められている必要があります。また、カットする額は「1日当たりの賃金の半分又は1カ月の賃金の10%」を超えることは許されません。
では賃金カットとは別に、欠勤などによって事業主に発生した損害を、従業員に請求できるのでしょうか。損害賠償の請求や請求書を発行することは、労働基準法違反ではありません。ただ、そのためには事業主が、事業に関して実際に損害が発生したことを証明しなければなりません。
加えて、「事業主は事業活動で利益を得る以上、リスクも負うべきだ」と考えられていますので、従業員が損害の全額を負担しなければならないことは滅多にないと考えてよいでしょう。
冒頭のエピソードの場合、そもそも「整体のキャンセル料」は、事業との関連性が乏しく、遅刻によって生じた損害ではないといえそうです。従業員が損害の支払いに応じる必要はないでしょう。
損害の負担を求められた際に請求書を要求することは、本当に従業員が負担すべき損害かどうかを確認するために有効です。エピソードでも、請求書を要求したところ「まぁ今回は許す」と相手が折れたということです。従業員が負担すべき損害ではない場合、請求書が書面として残れば後々問題になる可能性がありますから、請求を断念させる効果もあります。
なお、仮に損害の一部を支払わなければならない場合でも、事業主が勝手に給与から天引きすることは、法律上認められません。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
村松 由紀子(むらまつ・ゆきこ)弁護士
弁護士法人クローバーの代表弁護士。同法人には、弁護士4名が在籍する他、社会保険労務士2名、行政書士1名が所属。交通事故をはじめとする事故、相続等の個人の問題から企業法務まで幅広く扱う。
事務所名:弁護士法人クローバー
事務所URL:http://www.yun-ken.net/