2017年02月09日 18:33 弁護士ドットコム
人気アイドルグループ「私立恵比寿中学」のメンバー、松野莉奈さん(18)が2月8日に急死したことを受けて、ツイッターなどSNS上では、作り話や真偽不明な情報が拡散された。
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あるツイッターの投稿は、東京大学の男子学生が自宅で亡くなっており、「残された遺書の内容から、松野莉奈さんの病死に関連した後追い自殺と見られる」という内容だ。投稿は削除され、投稿者は後に「創作ニュースすら自由に流せない」と投稿している。
また、松野さんの死因はインフルエンザ脳症だとして、「インフルエンザのときに解熱剤を飲むとインフルエンザ脳症になることがあるらしい」という情報もツイッターなどで拡散され、NHKニュースが専門家の否定コメントを流す事態に発展した。
SNSには、真偽不明な情報が投稿されることも多く、デマや作り話を本気にしてしまう人もいる。実際の事件・事故などに関連してデマや作り話を投稿することは法的に問題ないのだろうか。清水陽平弁護士に聞いた。
「デマや作り話を投稿することが、それだけで直ちに違法になるかというと、そういうわけではありません。最近話題の偽ニュースであっても、それにより誰かが迷惑を被るようなものでなければ、何らかの犯罪に当たるとすることは困難でしょう。
ある表現を行うことは、表現の自由としてできる限り保障される必要があり、それがデマや作り話であっても変わることはないのです」
清水弁護士はこのように指摘する。では、デマや今回のような創作ニュースは法的にはまったく問題ないということだろうか。
「そうではありません。
他人の権利を侵害するようなデマ・作り話までも全く自由に許されるとすれば、権利を侵害された側としては泣き寝入りを強いられてしまうことになりますが、それは不当です。
そこで、デマや作り話が、他人の名誉を毀損するような内容になっているとか、他者の通常の業務に支障をきたすような状況になっている場合には、名誉毀損罪や業務妨害罪の成立を検討できることになります。
本件とは関係がありませんが、たとえば、2016年4月、熊本地震が発生した直後に、『動物園のライオンが逃げた』などとデマを投稿したことで、動物園の業務を妨害したとして偽計業務妨害の疑いで逮捕されています。
本件では罪になるような内容とはなかなかいえないように思われますが、場合によっては責任を問われてしまうことがあるのだということを認識する必要があります。
また、自分がもともとの発信元でなく、たとえばリツイートなどで拡散するような行為であっても、責任追及をされてしまうおそれはあります。
そのため、何がデマ・作り話なのかを見極める能力を磨くことが重要といえます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、Twitterに対する開示請求、Facebookに対する開示請求について、ともに日本第1号事案を担当。2016年12月12日「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第2版(弘文堂)」、2017年1月18日「企業を守る ネット炎上対応の実務(学陽書房)」を出版。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp