トップへ

濱野智史 × 渡辺淳之介が語る、アイドルとプロデューサーの関係性 濱野「なにかあったときは赦すべきでした」

2017年02月09日 06:03  リアルサウンド

リアルサウンド

左、濱野智史。右、渡辺淳之介。

 ドキュメンタリー映画『劇場版BiS誕生の詩』と『WHO KiLLED IDOL ? -SiS消滅の詩-』が、現在公開されている。『劇場版BiS誕生の詩』は、2016年9月に3泊4日で行われた新生BiSのメンバーオーディション合宿を、カンパニー松尾監督らがカメラを片手に密着したドキュメンタリー。一方の『WHO KiLLED IDOL ? -SiS消滅の詩-』は、オーディション落選者で公式ライバルSiSを結成することが発表されるも、スタッフの「重大な背任行為」を理由に、初ライブ直後に活動休止になるまでの真相を収めている。


参考:『豆腐プロレス』AKB48グループの中で誰が一番強い?


 アイドルシーンの裏側、とりわけスタッフの過失に生々しく迫った本作を、誰よりも苦々しい思いで観たのは、濱野智史その人ではないだろうか。アイドル評論家として『前田敦子はキリストを超えた 〈宗教〉としてのAKB48』(ちくま新書)を刊行するなどして名を馳せ、自らアイドルグループ・PIP(Platonics Idol Platform)のプロデュースも手掛けるなど、シーンにおいて唯一無二の活動を展開していた濱野氏だが、2015年9月にあるイベントでの発言が炎上して以来、公の場に出ることはほとんどなくなり、PIPも事実上の解散状態となっていた。


 今回、リアルサウンド映画部では、濱野氏とBiSなどのプロデュースを手掛ける株式会社WACK代表・渡辺淳之介氏との対談を企画。自らも苦い失敗を経験している濱野氏は、本作になにを感じたのか。そしてPIPは本当に解散したのか。“アイドルとプロデューサーの関係性”をテーマに、本音で語り合ってもらった。


■濱野「渡辺さんもまたキリストを超えている!」


ーー濱野さんがアイドルについて語るのは、件の炎上騒動以来です。今回、沈黙を破った理由は?


濱野:先日、とあるきっかけで、渡辺さんが某大学の特別プログラムで行われた「アイドルプロデュース」についての講義を拝聴する機会がありました。そこで深い感銘を受け、「ああ、自分に足りなかったのはこれだったのか……!」と感じ入りつつ、「そろそろPIPについてもきちんとけじめを付けよう」と決心した矢先に、ちょうどその日の夜にこの対談のお話をいただいて、マジで運命の巡り会い的なモノを感じたんです。それで、ぜひ対談させていただきたいと思い、さっそくその日のうちに映画を拝観しました。


 前編の『BiS 誕生の詩』は『ASAYAN』的なアイドルドキュメンタリーとして、ストレートな仕上がりの作品だなと感じたのですが、後編の『SiS消滅の詩』は想像を超える傑作で、魂が浄化されるような体験ができました。本作で描かれる「赦し」に、僕自身も導かれたというか。「お前はまた懲りずにキリスト教を持ち出すのか!」って怒られそうですが、グループ活動に対して重大な背任行為を行ったというSiSプロデューサーの清水大充さんは、いわばキリスト教におけるユダなんですよ。で、渡辺さんはそんなユダさえ赦す。イエスは最後の晩餐で、ユダに「汝のなすべきことをせよ」っていう有名なくだりがあります。ユダはまさにそのとおりに裏切って、キリストは十字架に磔にされるわけです。ところが渡辺さんは、十字架に磔にされることもなく、みんな赦してうまく収めている。つまり、渡辺さんもまたキリストを超えている!


渡辺:やばいっすね(笑)。濱野さんはもともとAKB48の評論家だったんですよね?


濱野:AKB48にハマって、小林よしのりさんらと一緒に「AKB知識人」とか担がれてやっていました。それで『前田敦子はキリストを超えた 〈宗教〉としてのAKB48』って本を刊行して、「もう評論家なんてやめた! 俺こそがガチヲタだ!」ってどんどんこじらせて、暴走して、その後は地下アイドルの現場に潜っていきました。その約1年後にプロデューサーになって、PIPを結成するわけですけれど、やっぱり「裏切る」スタッフもいて。僕は渡辺さんのように「赦す」ことができなかったんですよね……。それで運営が立ち行かなくなっていって、某イベントでの発言(アイドルはクソ)が原因で炎上してからは、Twitterもなにもかも辞めて、全てから逃げて、沈黙してしまった。だから、裏切られた渡辺さんの気持ちもわかるし、過ちを隠していた清水さんの気持ちもわかるんですよ。僕も、なんで渡辺さんみたいにできなかったかなぁって、後悔するばかりです。


渡辺:PIPのコンセプトはすごく面白かったですよね。グループがどんどん増殖していくという。


濱野:ネズミ講的アイドルって言われていましたね。22人のメンバーが成長したらプロデューサーになって、また新しいアイドルグループを作っていくプランを思い描いていました。でも、全然ちゃんとレールを引くことができなくて……。清水さんと同じで、本当にメンバーやファンやスタッフにとてつもなく申し訳ないという気持ちもありつつ、もう二度とアイドルのプロデュースはできないなと。


渡辺:僕はこの映画に思いっきり出演しているので、あまり客観的には観れていないんですけれど、ひとつリアルだなと感じたのは、辞めていく女の子にもスポットが当てられているところ。最近、アイドル引退のニュースって多いじゃないですか? で、そうした記事についたコメントなんかを読むと、だいたいプロデューサーが無能だから続けられなかったんだって書いてある。でも僕は、女の子が辞めていく原因はプロデューサーだけにあるとは考えていなくて。というのも、アイドルは自分ではなにもできないからこそ、周囲の大人たちを味方につけていく必要があると思うんですね。映画の中でも言っているけれど、まずは周りのスタッフに好かれなければ、絶対にファンにだって好かれないんですよ。その根本的なところを忘れて、自分本位でアイドルになろうとする子が多すぎる。結局、SiSが駄目だったのは清水のこともあるけれど、自分たちではなにもしようとしていないところにも原因があるんですよ。大人に言われたことを、「それいいじゃん!」ってやっているだけで終わっちゃった。


濱野:たしかに、自分のために働いてくれるスタッフに、文句を言ったりする子もいますよね。僕なんて、物販でメンバーの肩を叩いてヲタから「剥がし」をしただけで、「セクハラだ」って言われたことありましたからね(笑)。こっちは客入りからコスパまで必死で考えて、なんとか現場を回しているだけなのに……。


渡辺:もちろん、おたがいさまな部分もありますよ。でも、やっぱり信頼関係を築かないといけないし、そのためにはアイドルの側の意識も大切。アイドルに限らないけれど、信頼関係がないとどんどん悪いところばかりに目が行くようになって、最後には脱退とかなるんです。でも、グループがうまくいっているときは、案外こういう問題って起こらないんですよね。SiSの場合は、おたがいに悪いパターンの見本みたいな感じで。


濱野:ただ、それをドキュメンタリーという形で残せたのは、すごく意味があるなと。本作は、間違いなく、アイドルドキュメンタリー史に残る作品です。それに、一連の騒動があって、女の子たちも少し大人になっていましたのも印象的でした。


渡辺:最終的に彼女たちは、僕がプロデュースしているGANG PARADEに入ってくるんですけれど、やっぱりちょっと態度や意識が変わりましたね。これは彼女たちに限ったことではないんですけれど、みんな僕のことを最初はなめるんですよ。よくファンの男の子とかをスタッフとして入れるんですけれど、彼らも最初は「ジュンジュン~」とか言って。でも、三日目ぐらいから怯えたカワウソのような目で僕のことを見るようになる(笑)。一緒に仕事するってどういうことか、しっかり叩き込むので。どこにでもいる素人の子たちが、普通なら無理だってことを成し遂げてこそアイドルだし、それでグッと磨かれる子は多いですよ。


濱野:わかります、不思議と可愛くもなりますよね。人工知能の「深層学習(ディープラーニング)」と全く同じで、人は繰り返し練習をすることで、学習ができるし、深い自信を持つこともできる。


渡辺:だから若い子たちを鍛えるのは良いんですよ。一方で、大人はもう直せない場合が多いから、根が深いですよね。僕自身もそうですけれど、30年以上生きちゃうと、直せって言われてもどうにもならないところも多い。「よっぽど気をつけます!」くらいしか言えない(笑)。だから、清水のことは人間的に嫌いではないけれど、一緒に仕事はできないです。プライベートで付き合うなら、どんなにだらしない相手でもいいけれど、仕事は別ですから。


■渡辺「アイドル志望の子って、大概は自分のことしか頭にない」


濱野:今回の映画のテーマは「赦し」でもあると思いますが、渡辺さんが相手のことを赦せるようになったのって、いつ頃でしょう。昔はもっとキレていたとか、ありますか?


渡辺:もちろん怒りはするんですよ。でも、たしかに基本的に全部赦していますね。たぶん、あんまり相手に興味がなくなっちゃうんだと思います。そうすると、もう後は頑張ってねって応援するだけで。ただ、仕事においては線引きをしっかりするようになったという意味では、昔より赦せなくなっているかもしれません。うちの事務所に所属する子に関しては、そもそも絶対に事務所を辞めさせないし。


濱野:マジっすか!? いわば「終身雇用」ということですね。失われた古き良き「日本的経営」の鑑じゃないですか……。いやほんと、感服します。
 ある成功した地下アイドルのグループのプロデューサーさんも、「絶対に辞めない」って約束したメンバーしかオーディションで採らないって言っていましたから、その覚悟は必要なんでしょうね……。ちなみに僕は、PIPから卒業していくメンバーのことはまったく止めなかった(涙&苦笑)。「人はみな自由だから……」とか自分に言い訳して。
 で、なぜ「赦し」について聞いたかというと、お子さんが生まれたことでなにか心境の変化はあったのかなと。


渡辺:子どもが生まれたら可愛くてしょうがなくて、毎日家に帰って愛でて仕事もおろそかに……ってなるかと思っていたのですが、まったく変わらなかったですね(笑)。もちろん可愛いし、息子がなにかしたいと言えば、なんでもしてあげようと思うんですけれど、世間一般でいうイクメンみたいな感じでは全然ありません。息子だからかもしれませんが。


濱野:なるほど。ちなみにうちは娘なんですけれど、マジで「アイドル」そのものなんですよ。本当に可愛くてしょうがなくて、まさに親バカみたいになっちゃっているんです。もう子育てが生き甲斐みたいな。赤ちゃんって、もちろん最初は泣きわめくだけで、目も合わないし、レスもない「塩対応」状態なんです。でも、だんだん目が合うようになって、パパとか言い始めて、「認知」もされる。やばい、このプロセスはアイドルと一緒だって気付いてしまって。よくドルヲタが「成長を見守れるのがいい」(キリッ)とか言うし、僕もそう言ってたんですけど、「あ、これガチでほんとなやつだ」と(笑)。
 少し真面目に整理すると、もともと人間には「可愛いもの(弱いもの・小さいもの・丸っこいもの)」を大切にしなければいけないっていう本能(快楽)が進化心理学的に備わっているんですよね。備わっているというか、その快楽神経を鍛えてきた、というか。だからこそ、人間は赤ちゃんも、アイドルも、好きになる。いまの日本は「失われた20年」的不景気で結婚も恋愛する人が減っているから、その代わりにみんなアイドルを愛でるようになったというのが本質だと僕は思っていて。
 ちなみにいまの話は、「ネオテニー説」をベースにしてます。人間は脳が進化して肥大化したから、体はまともに動かない状態じゃないと生まれてこれなくなった。だから他の動物に比べて、「一人立ち」するまで時間がすごくかかる。そこで親が“可愛い”って思う気持ちが「備わっている」ことがとても重要なんですよ。


渡辺:たしかに“可愛い”って思えなきゃ、対応できないですもんね。


濱野:ヲタが自分の生活を犠牲にしてでもアイドルを推してしまうのも、本能の為せる業。アイドルと赤ちゃんって、本当にそっくりですよ。


渡辺:赤ちゃんですね、たしかに(笑)。この映画を観てもらうとわかりますが、アイドル志望の子って、大概は自分のことしか頭にない。自分を変えたいとか、壁を突き破りたいとかばかりで、人に感動を与えたいとかではないんです。変な妄想に捕らわれていたりね。エンターテイメントは人を喜ばせるのが第一だって意識はほとんどない。もちろん、スタートはそこで良いんですけれど。


濱野:ステージに上がるようになって、だんだん客観的に自分を見られるようになって、ようやく成長していくんですよね。僕は某イベントでアイドルのことをボロカスに言って炎上して、あくまでそれは会場を盛り上げるためのリップサービスでもあったんだけれど、真意をいえば、これくらいの暴言を吐いててでも、目の前の相手を喜ばせる意識を持って欲しいということだったんですけどね……。いや、もう言い訳はしませんが。


■濱野「本当に病んでしまい、最後は無力感の塊に」


渡辺:地下アイドルのシーンってマジョリティーを無視してやってきたと思うんですよね。小さい村の中で盛り上がっていて、多くのひとにとってはよくわからない変な世界だった。それを10年くらい前にぶち壊したのがAKB48で、女の子が上を目指して頑張るのはかっこいいというイメージを作り上げた。


濱野:ドキュメンタリーの2作目『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』などは、本当に凄かったですね。あの女の子たちが大きなものに立ち向かう緊張感がヒシヒシと伝わってきて。


渡辺:ああいうのを見せられると、メジャーの壁の高さを感じます。誰が見ても、これはすごいことなんだってわかるじゃないですか? で、どうやってそこを目指すかを考えたとき、彼女たちの周囲には常にカメラが何百台とあって回っていることに気付いて。おそらくプライベートなんてないんだろうなって感じなんです。まずはこの緊張感が必要だと思って、今回の合宿では何台もカメラを回しました。メジャーには勝てないにせよ、僕らは僕らなりに作品は作っていかなければいけないですから。


濱野:「人に見られること」を常にメタ目線で意識するのは重要ですね。


渡辺:僕の事務所ではBiSHが一番売れているんですけれど、彼女たちはメディアに最初すごく弱くて。一番最初に収録したラジオなんかは5秒くらい黙っちゃったりして放送事故するんですよ。でも、SiSの子たちは合宿で最初からカメラを回していたから、カメラ慣れしていて物怖じせずに喋れるんですよね。そういう環境を整えるのは、すごく大事かなと。なにかで成功して有名になる人って、だいたい有名になる前から成功者と友だちだったりするじゃないですか。あれもきっと、レベルが高い人に合わせて切磋琢磨するから、結果的に抜きん出てくるんだと思うんですよ。だから突き抜けたものを見つけて、それを追っていかなければいけないと思うんですけれど、なにが突き抜けるのかを見極めるのは難しいです。BABYMETALみたいに“アイドルの壁”を突破するには、その見極めこそが大切なのかもしれません。濱野さん、なにかアイデアはありませんか?


濱野:ただのジャストアイデアなんですけど、たとえば先日、同じ日に講演をされていた田家大知さんと組んで、ゆるめるモ!とコラボをしたりすれば、なにか化学反応が起こるのでは?と思いました。ほんと、プロデュースの仕方もコンセプトとかも正反対で対照的ですし。


渡辺:なるほど。でも僕、あのちゃんが怖くて(笑)。けっこう異次元ですよね、あの子は。突き抜けているのはたしかですが、一緒にやって無事でいられる気がしない。僕が手がけるグループって、あのちゃんみたいに目立つ子が出てこないんですよね。もしかするとそれは、僕が中国の纏足みたいなものを彼女たちに履かせてしまっているからじゃないかって、最近は思っていて。僕がいろいろやるから、彼女たちが自立して歩けないというか。


濱野:100%断言しますが、絶対そうだと思います(笑)。やっぱサイコパスは自分を超えるサイコパスを生み出せない。PIPをやっていたとき、僕のTwitterで彼女たちについてつぶやくと、もともとの評論系の人が離れてアイドル系の人が増えるという現象が起こっていたんですけれど、結果的に総フォロワー数は完全横ばいで全く変わらなかったんです。でも、メンバーがTwitterをやっても全然フォロワー数伸びなくて、突き抜けないで終わり。


渡辺:濱野さんの場合は、ガチヲタだったから余計にうまくいかなかったのかもしれませんね。


濱野:そうなんですよね……。ドルヲタが運営に回ってもロクなことがない、というのはさんざん聞いていたし、分かっていたはずなんですが……。ちなみにPIPのメンバーは、「この子なら推せるな」というのを基準にメンバーを採って、でもそういう子たちも次第に辞めていくことを前提に楽曲とかも作ったんです。しかし実際に辞められると、僕が本気で推せると思っていたメンバーだから、僕自身が本当に病んでしまい、最後は無力感の塊になってしまった。「馬鹿だな俺、なんでそんな単純なことに気付かないんだ!」って、すごく後悔しましたから。


渡辺:本当に好きな子はプロデュースしないほうが良いですよ。客観視できなくなって、全部最高に見えちゃうから。業界人らしからぬことになっちゃう。


濱野:大学の講義で渡辺さんは、「適切な距離感が必要」って仰っていましたが、本当にその通りです。清水さんの話だって、適切な距離、線引きが大事だって話ですからね。


渡辺:ぶっちゃけ僕はプロデューサーとメンバーとの肉体関係とかも、ちゃんとマネジメントできていれば別に良いとは思んですけれどね。そういう闇の部分があったほうが、面白いと思うし。線引きでいうと、恋愛感情は持っちゃいけないけれど、セックスを楽しむだけならOKって感じで。濱野さんはある意味、女の子を女の子としてちゃんと扱っていたからこそ、失敗してしまったのかもしれない。僕はもう、アイドルは◯◯◯◯だと思ってますから。


濱野:激しく同意です(笑)。post-truthじゃなくてprimal-truthです(笑)。いや、とかいうとまた激しく炎上しちゃいますよね……。「お前こそメタ目線持てよ」って感じですよね。炎上はもうコリゴリなのに、これはもう「三つ子の魂百まで」なんでしょうね……。
 いや、しかし僕の失敗は、本当にまだまだ足りないところが多すぎて……。有能な炎上マーケターや優秀なクリエイティブも大事だけど、ほかにも全然足りなかった。彼女たちがもともとなにもできないのは前提で、メンバーもスタッフもなにかあったときは赦すべきでしたし、そのための仕組みも枠組みも最初からちゃんと作るべきでした。
 ちなみにAKB48は仕組みだけじゃなくて、やっぱりメンバーの底力もすごい。高橋みなみ(たかみな)の『リーダー論』って本があって、これがすごいんですね。たかみながあるメンバーを怒った後は、ほかのメンバーに根回しして、「あとで絶対相談来るから、待ち構えてて」的な感じで、怒られたメンバーの相談に乗らせるんですって。それをひたすらやって、メンバー同士で高め合えるようにしている。絶妙な距離感ですよ。もし、たかみなの『リーダー論』と渡辺さんの『渡辺淳之介: アイドルをクリエイトする』を読んでいれば(田家さん・大坪さんの『ゼロからでも始められるアイドル運営』は読んでいたんですが)、まだもう少しうまくいったのかもしれないなぁ……。今回、渡辺さんとの出会いを通じて、ああ、「Re:ゼロから始めるアイドルP運営」なんて思いも去来しますが、もちろんそれは夢想だし、無理だし、やりません。 
 最後になりますが、今回の映画、本当にアイドル運営の「裏側≒闇」を描いたドキュメンタリーとして、傑作でした。そしていまの僕に必要なのは、この映画における清水さんと同じで、自らが犯した失敗に正面から向き合い、公的に謝罪しなければいけないと、ようやく決意することができました。近いうちに、本当にいまさらではあるんですが、PIPの公式解散宣言と謝罪をしたいと思っています。渡辺さん、本当にありがとうございました!(取材・構成=松田広宣)