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大島優子は脇に回ると強い! 『東京タラレバ娘』のテクニシャンぶり

2017年02月08日 19:33  リアルサウンド

リアルサウンド

 『東京タラレバ娘』第3話で改めて、大島優子がテクニシャンであると確信した。彼女が演じる小雪は、親の居酒屋で働く30歳。吉高由里子が演じる駆け出しの脚本家・倫子と、榮倉奈々が演じるネイリストの香と、仲良し3人組である。


参考:川栄李奈、松井玲奈、前田敦子……AKBグループ出身女優の成否をわけるものは?


 ドラマや映画における女性3人組は、「感情や価値観が揺れ動きがちなのでドラマを作りやすいキャラ。ややドジが多い」(倫子)を中心に、「女性的な魅力を存分に発揮するキラキラ系。美女、お嬢様、モテキャラ、ぶりっ子など」(香)と「ときにブレーキ役にもなるクールで堅実なしっかり者。キャリアウーマンの場合もあり」(小雪)を組み合わせることが多い。ざっくりですが。


 現在放送中の月9『突然ですが、明日結婚します』の3人(西内まりや、中村アン、岸井ゆきの)や、三谷幸喜が手がけた80年代のドラマ「やっぱり猫が好き」の三姉妹、ハリウッド映画『チャーリーズ・エンジェル』の3人も似たような関係性にある。これらの作品で、大島=小雪のポジションに相当するのは、岸井ゆきの、もたいまさこ、ルーシー・リュー。3人組の屋台骨でありながらスパイスでもあるこの役柄は「主演級」ではないが、いわゆる「個性派」や「実力派」と言われる俳優が演じる事が多い。まだ世間に認知されていない役者を起用することもある「チャンレジ枠」でもある。


 しかし、大島は間違いなく「主演級」である。AKB48という巨大アイドルグループでセンターに立ったスーパーアイドルは、チャレンジ枠に起用するにはビッグネームすぎる。だが、近年の大島は、俳優業においては敢えてセンター(主役)にこだわらず、様々なポジションの役に挑み、確実にインパクトを残している。『紙の月』(吉田大八監督)で演じた、主人公(宮沢りえ)にとってある種の道標となる銀行員。単独主演映画『ロマンス』(タナダユキ監督)での仕事はできるがかなり口が悪いロマンスカーのアテンダント。『疾風ロンド』のナチュラルなコメディエンヌぶり。どの作品においても、芝居がとにかく的確なのである。つまり、彼女は「実力派」として、小雪役を担っていると言える。


 第3話は、自身の恋愛スイッチを何年間もオフにして、倫子と香の恋愛模様に声援を送っていた小雪が恋に落ちる回だった。サラリーマンの丸井(田中圭)と出会い、すぐに「どストライク」と確信するが好きになるまいと葛藤する、一連のコミカルな芝居が圧巻だった。丸井に対しては平静を装い、笑顔も社交モードをキープ、声も上ずらず、初対面に相応しい敬語を崩さない。そこに挟み込まれる、本音を表すCGパートでは、ハートの矢が胸に連続で突き刺さり「はうん♥」ととろけるような表情に。この、建前と本音の振り幅のバランスが抜群だった。その後、本気モードになると演技プランを一転させる。丸井から「(妻帯者だけど)好きになってもいいですか?」と告白されるシーンでみせる、相手の狡さと心中する覚悟を決めた大人の女の表情と、ハスキーボイスのモノローグの艶っぽさよ……!


 大島の声は、正統派アイドルとしてはややハスキーに寄っていたが、女優としては、外見の甘さを打ち消し、大人の色気を加味するという意味で大きな武器になっている。もう一つの武器はコメディにも対応できる表情の豊かさだ。特筆すべきは眉毛力。仲間を慰めるときの八の字眉、誰かを睨みつけるときのつり上がった眉、左右を段違いにだってできる高等テクなど、自由自在。原作キャラのメガネがアンダーリムなので、上フレームに眉毛の動きが隠されないのもプラスの結果に。


 もしかして大島優子は生来のセンターではなく、アイドルのセンターという“役”を演じていただけなのではないだろうか? 『東京タラレバ娘』でのテクニシャンぶりを見ていたら、そんな妄想ともいえる疑問にたどり着いてしまった。小雪が不倫地獄にハマっていく第4話を観ながら、その答えを見つけたい。(須永貴子)