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SAがロックシーンにいることの頼もしさーー懐の深さ感じた『LOVE’N'ROLL TOUR』ファイナル

2017年02月07日 17:03  リアルサウンド

リアルサウンド

(写真=MAYUMI-kiss it bitter-)

 定刻を少し過ぎ、お馴染みのSE、トルコ軍楽「ジェッディン・デデン」が高らかに響くと、フロア目一杯のコムレイズが「オイ! オイ! オイ!」と鬨の声を上げ、万全の臨戦態勢でSAの4人を迎え入れる。


 「ハロー! トーキョー!! 東京に帰ってきたぜ! 歌うぞーー!!」TAISEI(Vo.)の野太い雄叫びとともに豪快にかき鳴らされる「CLUNKER A GO-GO」で、2017年SA決起集会の火蓋は切って落とされた。2016年11月よりスタートした『LOVE’N'ROLL TOUR』は1月29日、自身初となる赤坂BLITZでツアーファイナルを迎えた。


 「笑うようになった」彼らはこれまで15年の活動を振り返るとき、よくそう語る。2016年10月にリリースされた最新作『WAO!!!!』は、そんな底抜けに明るくなったバンドの現在が詰まっているし、新たな可能性をも示したアルバムだ。反面で「メジャーに行って変わってしまった」と違和感を覚えた人も少なからずいたのかもしれない。それくらいの意欲作だった。だが、実際は何も変わっちゃいない。そのことをまじまじと見せてくれたライブだった。


 『WAO!!!!』から全曲が盛り込まれたセットリスト。音楽性の広がりと、サウンド&アレンジ面でも新たな試みが多く見受けられ、いつにも増してキャッチーな曲も多い。これまでありそうでなかったタイプの楽曲も、実際ライブで聴くと、何十回、何百回と演奏されてきた過去曲と同等のやり慣れた感が漂う貫禄に圧倒された。「音源とライブは別モノ」と、ライブ用にリアレンジされた楽曲は凄まじいほどエネルギッシュな演奏とともに、音源とはまた別次元の完成度で見せつけてきた。


 高速で地団駄を踏んでいくように捲し立てる「槍もて弓もて」、キレキレの16ビートで攻める「ケリをつけろ」、とっぽいロックンロールナンバー「WATCH ME」。SHOHEI(Dr.)の堅実でタイトなリズムに、笑顔と躍動感あるフレーズを絡めていくKEN(Ba.)。どっしり構えたリズム隊に図太くも鋭いNAOKI(Gt.)のギターが乗る。猛り狂う音の塊とグルーヴが、人を喰ったように吠えるTAISEIの叫びとともに襲いかかってくる。さまざまなタイプの楽曲を次々畳み掛けていくその様相は、百戦錬磨のライブバンドである真骨頂。キャリア15年の凄みと円熟味を併せ持つ、獰猛で強靭なバンド・SAの恐ろしさにあらためて気づかされた。


 「『TAISEIさん、一生ついていくよ』と言ってたヤツがいなくなりました」自嘲気味にTAISEIが口にした。「離れていってしまったヤツもいるけど、新しく出会えたヤツも今日いっぱい来てくれていると思います」15年突っ走ってきた間に多くの別れと出会いがあったことを語ると、「男と女の別れは悲しいけどさ、男同士の別れはもっと寂しいぜ、というそんな気持ちを歌った曲」と紹介した「Andy」を力強く歌い上げる。前回のインタビュー時、文字数の関係で掲載できなかったのだが、「“Andy”とは誰のことなのか?」とTAISEIに尋ねてみたら、彼は「さて、誰のことなんだろうねぇ?(笑)」と「してやったり」な笑みを浮かべながらそう応えた。どうやら思惑通りの質問だったようだ。そんなことを思い出しながら、こうして生で「Andy」を聴き、込められた想いを感じ取る。


 客席フロアに応援旗を目にした。もちろん、誇り高きコムレイズによるものである。


 SAのスローガンである「否定をするな、受け入れろ! ーーDON’T DENNY, GIVE IT A TRY!!」をはじめ、「ロックで人生台無しだ! ーーrunnin' BUMPY WAY」「つまんねぇ大人になりたくねぇ! ーーさらば夜明けのSkyline」……この日何度も何度も叫び歌われた言葉に表される、熱き想いを共有したくて、コムレイズはSAのライブに来るのかもしれない。コムレイズはSAに励まされ、SAはコムレイズに励まされる。この日、また新たにそんなお互いの関係を確かめあうような場面があった。


 それはライブ中盤のことだ。『WAO!!!!』の中でもおおらかなメロディと、どデカイスケール感で一際強い存在感を放つ「誰が為の人生だ」。鳴り響くオルガンに寄り添うようにゆっくりストロークしていくNAOKI。反復するように打ち鳴らされるSHOHEIのリズムが身体に響く。〈誰が為の人生だ 大袈裟に褒めてやれ〉というサビをはっきりと噛み締めるように歌い、拳を突き上げるコムレイズの顔を一人一人見つめ、「そうだろ? そうだよな?」と指をさし、自分の胸を確認するようにたたくTAISEIの姿が印象的だった。


 続く、音源ではしっとりしたエレクトリック・ピアノが印象的だった「はじめてのバラード」も、つま弾くギターの音色で聴くとまた違った表情になる。男女のストレートなラブ・バラードとして作られたこの曲は、ツアーを経たことで、15年やってきたメンバーとコムレイズのことを思って歌う曲になったという。こうやってライブを重ね、また一つ、SAとコムレイズの大切な歌が増えていく。その絆はますます深まっていくのだ。


 ドラマチックな展開を見せたライブは、「START ALL OVER AGAIN!」「ピーハツグンバツWACKY NIGHT」の2曲で終盤に。SAもコムレイズも“バリバリハッピー”な笑顔を見せながら本編は終了した。


 アンコールは、ミラーボールに照らされながらのコーラスワークが印象的だった「LOVE’N’ROLL」で始まった。〈愛でもくらえ!〉と回った本ツアーだったが、逆にコムレイズから愛をもらったという。今日はここぞとばかりに、SAからの愛が炸裂した。最後の最後はコムレイズみんなが肩を組んだ「GO BARMY KIDS」で大団円を迎えた。2階関係者席まで肩を組むように促してくれたコムレイズの方に胸打たれた。ありがとう。なんだか晴れやかな気持ちになれた。これもSAのライブの醍醐味だ。


 今の時代に“ピーハツ”という言葉を選ぶ感覚も、昭和な歌謡曲テイストも、一歩間違えば古いだけになってしまうようなものを見事なまでに己のものへと昇華させていく力量。彼らの自画自賛の言葉を用いれば、“懐の深くてセンスのあるバンド、SA”だからこそ為せる業だ。


「ここまで来たらビッグ・スマイルでいばらの道をまだまだ行かんとあかんから。うつむいてたらあきません」(NAOKI)


 「16年目もガツガツドカドカで攻めていきますんで。パンクの枠の中にいるのは楽ちんでしょうよ。だけどよ、SAはSAなりのハメ外して、SAのパンク、いわば、『ジャンルはSA』で行きたいわけ!!」(TAISEI)


 今の日本のメジャーシーンに、ロックシーンにSAがいる。なんだかそのことがすごく頼もしい。(冬将軍)