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MotoGPコラム:2017年は大混戦!? スペイン人ライターが予想する各メーカーの勢力図

2017年02月06日 19:22  AUTOSPORT web

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マーベリック・ビニャーレス
スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアのモータースポーツコラム。先週、マレーシア・セパン・インターナショナル・サーキットで2017年初のオフィシャルテストが開催された。このテストから、17年シーズンはかなりの大混戦になるとガルシアは予想している。果たしてその理由とは……?

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 マレーシア料理はどちらかと言えばかなりスパイシーだ。そして、2017年最初のオフィシャルテストの舞台であるセパン・インターナショナル・サーキットでも、“スパイシー”な話題が多く見ることができた。

 4つのファクトリーチームはセパンテストで非常に競争力があり、ライダーに関してもいくつか驚きがある。それ以外にも、17年シーズンを理解する分析を行う上で重要になる手がかりも多く隠されていた。

■ドゥカティがテストで速さを見せるも、ロレンソは新型マシンに苦戦
 セパンテストでの最初の話題は、初日にケーシー・ストーナーが怪しげな“ブラックボックス”をテールに装着し、デスモセディチGP17でトップタイムを記録したことだ。トップタイムを出したときはソフトタイヤを履いてた。

 ストーナーは、オフィシャルテストの前にテスト走行を行っていたものの、悪天候に阻まれ25周程度しか走れていなかった。ストーナーが持ち前の速さと技術的な理解を少しも失っていないのは明らかだが、彼のペースを見たときに導き出せる結論はただひとつ。ドゥカティが速いということだ。アンドレア・ドビジオーゾもテストを通じて3番目に速く、チームの仕事に満足していた。17年シーズンのドゥカティには明らかに競争力がある。

 ただひとり不満を抱いていたのがホルヘ・ロレンソだ。彼はドビジオーゾやストーナーと同じ新型のデスモセディチGP17に乗り、速さで及ばなかっただけでなく、型落ちのデスモセディチGP16に乗ったアルバロ・バウティスタにも遅れを取ったのだ。

 ロレンソは予想していた以上に自らのライディングスタイルを変える必要があると語っており、かつて11年から12年までドゥカティに所属したバレンティーノ・ロッシの身に降り掛かったことの再来だと考える者もいる。しかし、現在のドゥカティは当時とはかなり異なったチームであり、早急に状況の改善がなされるはずだ。

 また、ロレンソがミケーレ・ピロをコーチに任命した意味も大きい。ピロの存在はロレンソにデスモセディチGP17という暴れ馬から最大限を引き出す方法を導く手助けとなるだろう。ピロはドゥカティのメインテストライダーであり、レースライダーの誰よりも長い期間ドゥカティのマシンに乗っている。

 そして、もうひとつテストで明らかになったのが、17年シーズンもホンダとヤマハの二強体制が敷かれるだろうということだ。ヤマハのマーベリック・ビニャーレスは、自身にのしかかっていた多くのプレッシャーをものともせず、3日間で総合トップのタイムを記録し、YZR-M1に完璧に適応したことを証明してみせた。

 ホンダのマルク・マルケスは、エンジンの適切なセッティングを見出すのに苦戦しているのにも関わらずパフォーマンスの改善には満足しており、昨年よりも力強い位置にいるようだとコメントしている。

■ヤマハが披露した2層カウル。他メーカーも近々導入か?
 ヤマハがセパンで持ち込んだ新しい空力デバイスも17年シーズンを面白くする要素になりそうだ。近年のMotoGPマシンの特徴だったウイングレットが16年シーズン限りで廃止されることになった。この廃止を受け、各メーカーは失なったダウンフォースを得るための新たな技術を模索していると噂されていた。そして、最初にその技術を導入したのがヤマハだ。

 ヤマハはカウルを2層構造にして内側にウイングレットのパーツを隠す方法を導入した。この仕組みであればカウルからウイングレットがカウルから突き出していないため完全に合法だ。他のチームも同様のデバイスを近々テストするのではないかと噂されている。

■サテライトチームが17年シーズンをかき回す?
 ホンダとヤマハが本命と目されているならば、ドゥカティとスズキは17年シーズン最大のダークホースとなるだろう。ドゥカティに関しては、16年シーズンに6年ぶりに優勝し2勝を挙げたとはいえ、彼らが実際にチャンピオンシップに挑戦できるのかというのは疑問だが、マシンの開発は非常にうまく進んでいる。

 スズキに関しては、アンドレア・イアンノーネが非常に素晴らしい速さを持っているが、レースペースとなるとは話はまったく違ってくるだろう。経験豊富で開発を主導できるトップライダーがいないため、ホンダ、ヤマハ、ドゥカティの後ろになると予想している。

 私の直感では、ヤマハのバイクがもっとも優れており、ホンダが僅差でそれに続く。ドゥカティが2強に近いところまで位置し、スズキが4番目のファクトリーチームになるだろう。しかし、この“仮想トップ4”の後ろにこそ、2017年の見どころがある。それはサテライトチームの存在だ。

 16年シーズンにサテライトチームが使用していたマシンは、ブリヂストンタイヤ用の型落ちのマシンだった。しかし、17年シーズンは16年型のミシュランタイヤ用に設計されたマシンを用いるため、よりファクトリーチームに近づくチャンスがある。

 おそらくドゥカティのサテライトチームは非常に強力になるだろう。ヨハン・ザルコ、ジョナス・フォルガーというふたりのルーキーライダーも17年シーズンで強い印象を与えるかもしれない。

 最後にふたつのファクトリーチーム、アプリリアとKTMの現状についても語っておこう。アプリリアとKTMは明らかに進歩を果たしているが、残念なことに彼らの目標は“ビッグ4”を倒すことよりも、サテライトチームに打ち勝つことになりそうだ。しかし、アプリリアとKTMには豊富なリソースと優れたライダーがいるため、“ビッグ4”に挑むことも不可能ではない。

 上位チームに多くの変化があり、多くのトップライダーたちが異なるファクトリーチームに散らばった。2017年はMotoGP史上まれに見る面白い1年になりそうだ。もちろん結論を導き出すにはまだ早すぎるが、見応えあるシーズンになる予感があるときに我慢できる者などいるだろうか。