2017年02月06日 10:13 弁護士ドットコム
義父(夫の父)には、没交渉となっている子どもがいる。亡くなったら、どのような手続きが必要になるのか? 弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、そんな質問が寄せられました。相談者の義父は現在、施設で暮らし、貯金などは夫が管理しています。
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義父は、離婚歴があり、前妻との間に子どもをもうけていました。しかし「養育費等は支払っておらず、面会もしていなかった」そうで、離婚後は、没交渉になっています。しかし、義父が遺言を残さずに亡くなった場合、「あちらのほうから何がしか請求されることになったら、どのような解決が現実的なんでしょうか?」と、心配を抱えています。
遺言書がなく、子どもと没交渉になっている場合、相続はどうなるのでしょうか。白土文也弁護士に聞きました。
●「子どもと没交渉」は影響する?
遺言書がない場合は、法定相続分を前提に、遺産分割協議をする必要があります。ご相談の例でいえば、法定相続分は「夫」と「前妻の子」が、2分の1ずつとなります。 前妻の子であることや、長年没交渉であることは、影響しません。
一方で、仮に、相談者の夫が、被相続人(義父)を介護してきたことが「特別寄与」として評価される場合は、法定相続分が修正されて、相続分が増えることになります。 もっとも、寄与分が認められるためには、扶養義務の程度を超えた特別の寄与であること、かつ、被相続人の財産の維持又は増加に貢献していたことが必要です。
「老後の世話をした」というだけでは、必ずしも寄与分が認められるわけではありません。
●連絡先がわからない場合には?
また、「連絡先が分からず、協議することができなかった」などと、逃げることはできません。必ず、遺産分割協議に加わってもらう必要があります。
連絡先がわからない場合でも、被相続人の戸籍調査によって確認できるはずです。被相続人の戸籍謄本から前妻の子の本籍地を確認し、「戸籍の附票」を取得すれば、基本的には現住所を確認することが可能です。
また万が一、連絡をしなかったり、前妻の子がいることを知らずに預金を使ってしまったなどの場合、相手側との間で、不当利得または不法行為として、訴訟に発展する可能性も出てきます。
なお、不動産について相続登記をするためには、法務局で手続する必要があり、その際には遺産分割協議書などの提出も求められます。つまり、前妻の子に連絡をせずに名義変更することは出来ないのです。
【取材協力弁護士】
白土 文也(しらと・ぶんや)弁護士
第二東京弁護士会所属。平成17年、司法試験合格。合格後、ベンチャー企業で2年間勤務。司法修習を経て都内法律事務所に勤務。中国上海市の法律事務所で1年間の研修の後、平成26年、白土文也法律事務所開設。相続・遺言と中小企業法務を中心に取扱う。
事務所名:白土文也法律事務所
事務所URL:http://www.shirato-law.com/index.html