2017年02月06日 10:13 弁護士ドットコム
内定を承諾する書面を交わした後に、企業側から「給与額が誤りだった」と告げられ、月給を2万円下げられたーー。そんな体験がネット上の掲示板に投稿され、議論となった。
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投稿者は、50社以上受けて、ようやく内定を獲得した。会社説明会の資料や、内定が出た後の同意書面には、「月給22万円」と記載されていた。ところが、後日会社の担当者から電話があり、その額が「誤りだった」ととして、本来は20万円だと告げられたのだという。
ネット上の募集要綱には20万円と記載されており、説明会の資料と同意書面の方が誤っていたということだ。投稿者は担当者からの電話には「はあ」と応えたが、誤りだったからといって減額されることに納得いかないという。
企業側と内定を承諾する書面を取り交わした後、企業側が一方的に給与額を変更することは認められるのか。今回のようなケースで、減額を拒むことはできるのか。労働問題に詳しい大山 弘通弁護士に聞いた。
「企業側が労働契約で定めた給与額を、一方的に減額して変更することはできません。ですから、投稿者の方は減額を拒むことができます」
大山弁護士はこのように述べる。なぜだろうか。
「今回のようなケースで、そもそも企業と投稿者との間で労働契約が締結されているかが問題となりますが、一般には、採用内定通知の時点で労働契約が成立します。
そして、労働契約が成立した後に労働条件を変更する場合には、双方が合意して変更することが必要です(労働契約法8条)。したがって、投稿者の方は賃金額を変更されたくないと思えば、変更の合意をせずに断ればよいことになります。
ただ、投稿者の方が『はあ』と答えたことをもって、企業側としては合意があったとして減額してしまうかもしれませんので、誤解されないよう合意していないことを企業へはっきり告げるべきです。
誤解を放っておいたまま、後になって合意がなかったと言っても、『(減額するという)合意があった』とする企業側の言い分が通ってしまう場合がありますので注意が必要です。書面で同意しない旨を通知しておくとよいでしょう」
合意さえしなければ、減額されるおそれはないのだろうか。
「投稿者の方が賃金の減額を断った場合、企業が約束した以上は支払おうと考えてくれるのならいいですが、企業が、『単なるミステイクで締結した労働契約が認められるべきではない』といって、労働契約が無効だと主張したり、内定を取り消したりするかもしれません。
勘違いで締結した契約として、企業側の契約の無効の主張が認められる場合があります(民法95条)。また、内定を取り消すことは解雇と同じですので、容易く認められるものではないですが、企業側からの内定取り消しが認められる場合もあります。
通常は話し合いで解決されることになるので、このような事態になることは稀と考えられますが、投稿者の方としては、一応、断った後の事態について企業の出方を想定しておいた方がいいでしょう」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
大山 弘通(おおやま・ひろみつ)弁護士
労働者側の労働事件を特に重点的に取り扱っている。労働組合を通じての依頼も数多く、もちろん個人からの相談も多い。労働事件は、早期の処理が大事であり、早い段階からの相談が特に望まれる。大阪労働者弁護団に所属。
事務所名:大山・中島法律事務所
事務所URL:http://on-law.jp/