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XOX × TeddyLoidによる“音楽的冒険” 新世代ボーイズ・グループは世界のトレンドとどう共振?

2017年02月03日 20:13  リアルサウンド

リアルサウンド

XOX

 5人組ダンス&ボーカル・グループ、XOX(キスハグキス)が最新リミックス曲「Skylight-Winter For LOVERS Ver.-(feat. JASMINE)[TeddyLoid Remix]」の配信をスタートさせた。


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 XOXは原宿系人気読者モデルとしても知られるとまん、バトシン、志村禎雄の3人に、ソニー・ミュージックと若者に絶大な人気を誇るアパレルWEGO主催の全国オーディションで選ばれた田中理来、木津つばさを加えた5人組。メンバー全員がフロントになれる端正なルックスとストリートに根差したファッションセンスを持ちながら、同時にサウンド面でも海外のエッジの効いた音楽を取り込んでいて、その姿はユース・カルチャーの発信地=原宿の魅力にも通じる「流行に敏感なトレンド・リーダー」といった雰囲気だ。ヒップホップ・ビートとアコースティック・ギターの音色でN.E.R.D直系のプロダクションを加えたメジャー・デビュー曲「XXX」や、トロピカル・ハウスやトラップを昇華した2ndシングル「Ex Summer」。XOXは、これまでの楽曲においても、他のボーイズグループとは一線を画する、海外シーンとの同時代性あるサウンドを志向してきた。そして、オリコン・デイリーチャートの9位を記録したメジャー3枚目のシングル「Skylight」では、ファレルの「Happy」を連想させるビートにラップや甘い歌声を融合。「ポップさ」と「クールさ」をあわせ持つ音楽性を一歩先に進めている。だとするなら、今回のリミックスのテーマは、「XOXとブラック・ミュージックとのさらなる融合」。前述の「Skylight」にゲスト・ボーカリストとしてR&BシンガーのJASMINEを、リミキサーとして気鋭のトラックメイカーTeddyLoidを迎え、原曲に新たな魅力を加えている。


 昨年を振り返ってみても、音楽シーンはブラック・ミュージック盛隆の年だった。ビヨンセの『Lemonade』やチャンス・ザ・ラッパーの『Coloring Book』、ソランジュの『A Seat at the Table』はもちろんのこと、デヴ・ハインズによるR&Bプロジェクト、ブラッド・オレンジの『Freetown Sound』に至るまで、黒人音楽の伝統と最新のプロダクションとを融合させた作品が次々に海外の年間ベストを席巻。日本でも星野源の「恋」が一般層を巻き込んだヒット曲に発展するなど、国内外でブラック・ミュージック的な要素は重要なキーワードになっている。今回のXOXは、その雰囲気を反映させたR&Bとポップの融合に接近。TeddyLoidのエディット感覚でアップデートされた楽曲は、R&B/ヒップホップの魅力にDTM的なクラブ・ミュージックのエッジを取り込んだ、様々なカルチャーの折衷点といった雰囲気だ。


 トラックを担当したTeddyLoidは、ももいろクローバーZが音楽性を進化させる契機となった「Neo STARGATE」でプロデュースを担当した他、多くのアーティストの楽曲プロデュース/リミックスを担当。2015年12月にリリースした自身2作目のコラボレーションアルバム『SILENT PLANET』では、中田ヤスタカや☆Taku Takahashi 、KOHH、tofubeats、Shiggy Jrの池田智子らとともに音楽を解放するレジスタンスの活動を描き、その後はEPシリーズ『SILENT PLANET 2』を始動。ここではKOHHやDAOKO、ちゃんみな、banvoxら気鋭の若手とコラボレーションを果たし、アルバムの世界観をさらに拡張している。そして、翌年にはSpotifyで日本以外の地域で最も楽曲が再生された日本人アーティストとなった。今回の「Skylight-Winter For LOVERS Ver.-(feat. JASMINE)[TeddyLoid Remix]」では、ベース・ミュージックやトラップ、XOXの初期曲のテーマでもあったレゲエをモダンに解釈したバウンスビート、ドラムステップをはじめとする刺激的なビートにDTM特有のボーカル・エディットを融合。ポップさとエッジとの両立という意味で、彼の近年のリミックスの中でもベスト・ワークと言えるトラックを提供した。


 そこに華やかで妖艶な魅力を加えるのは、XOXのレーベルメイトでもあるR&BシンガーのJASMINE。フィーチャリング・シンガーはヒップホップやR&Bシーンの常套手段だが、女性ボーカリストをフィーチャリングするボーイズ・グループはなかなか珍しい。しかし、JASMINEの歌声は楽曲にR&B特有のクロいストリート感覚とポップとしての魅力を追加。近年のシーンで例えるなら元ワン・ダイレクションのゼイン・マリク&テイラー・スウィフトが映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』シリーズの2作目『フィフティ・シェイズ・ダーカー』に提供した「I Don’t Wanna Live Forever」のように、最新のR&Bプロダクションで男女ボーカルが躍動する魅力的な雰囲気を生んでいる。ちなみに、その「I Don’t Wanna Live Forever」ではゼイン&テイラーがそれぞれのヴァースで「What is happening to me?(俺はどうしちゃったんだろう?/私はどうしちゃったの?)」と共通のフレーズを使って男女のすれ違いを表現しているが、冬の寒空や恋人を連想させる「Skylight」のリミックスにも、XOXとJASMINEのかけあいが効果的に盛り込まれた。


 そうして完成した全編はまさに、ポップ・ミュージックとストリート・カルチャーが手を取り合う現在の音楽シーンの最先端。原曲の魅力でもあったXOXのメンバーによる恋人やファンへの思いを連想させる歌詞に、JASMINEが「気づくべきことは髪型変わったことじゃない」「言葉より肩を抱いて」と応戦し、TeddyLoidは打ち付けるようなキック&低音ベース、ボーカルのカットアップで2組のパフォーマンスをより高次元のものに変換していく。そうして生まれた3者のケミストリーは、ダンス&ボーカル・グループとしての華やかさを持ちながら、同時にクラブでも自然にプレイできるダンス・ミュージックとしての高いクオリティの両立を実現。情報過多な音が全体としてはスッキリとポップにまとめられ、現在のシーンにおいてもなかなかお目にかかることができない刺激的なサウンドを手に入れている。恐らくこのリミックス曲は、XOXの魅力をボーイズ・グループ以外の音楽リスナーにも伝える契機になるんじゃないだろうか。XOXの音楽的冒険をさらに推し進めるような、彼ららしいキラー・チューンが誕生した。 (文=杉山仁)