2017年02月03日 11:13 弁護士ドットコム
バレンタインが近づいてきた。菓子店やデパ地下では、限定のチョコが並び、つい買ってしまいたくなるもの。しかし、東京都内でフリーランスのライターとして働く吉村明子さん(30)にとって、この時期は悩ましい。「バレンタインまでの2週間は、取材先や担当編集者たちに、配ったほうがいいのか、毎回悩みますね」という。
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1000円程度のチョコレートを見繕うが、配る相手が多ければ負担も大きい。「お返しは期待していないですし、ただ日頃の感謝を伝えるよい機会だと思って、渡しています。あとは営業目的ですよね。名前を覚えてもらい、好感度をあげるための」と話す。「ただ、昨年渡した相手に、今年は配らないという選択はできないから、毎年、負担は増していくんですよ」。
そんな明子さんは、「渡す仕事関係者に対しては、なんの下心もないし、純粋に営業目的です。チョコレート代は経費として認められるのでしょうか?」と話す。蝦名和広税理士に聞いた。
個人事業として、フリーのライターをされている明子さんの場合には、「所得税法」上の問題になります。対して、会社員のケースだと課税を受けるのは会社という法人になるため、「法人税法」上の問題になります。
まず、明子さんのケースについて解説します。所得税法では、収入金額の獲得のために投下された費用については、「必要経費」として所得計算において控除することが出来ます。「必要経費」とは、業務関連性が認められ、家事費(プライベートな支出)と区別されている費用のことです。
今回のケースだと、仕事関係者に対して営業目的でチョコレートを配るとのことですので、「必要経費」に該当すると思われます。科目については、「交際費」とするのが、一般的です。一般的というのは、実は所得税法では交際費に関する定義は置かれていません。そこで、「広告宣伝費」として処理しても、必ずしも間違いとはならないのです。
なお、法人税では「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人がその得意先、仕入れ先その他の事業に関係ある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」(租特61条の4-4)と規定されており、実務的には所得税においても同様の理解がされています。
端的に言えば、相手の歓心を買うための費用となるものは、所得税においても、法人税においても、「交際費」に該当すると考えられます。
続いて会社員のケースですが、経費(法人税法上では「損金」)にすることは可能ですが、個人事業主のケースとは異なり、必ず交際費で処理しなければいけません。
なぜなら、法人税法では冗費(むだな費用)の抑制などの観点から、交際費については、経費に算入出来る限度を設けております。本来、交際費に該当するものを、他の科目に付け替えることは認められません。
個人事業主の場合には、交際費は無制限で認められますが、法人税法では、経費にできる限度額がある点が、所得税法とは異なります。そのため、たとえ営業目的だと従業員が考えても、会社がそれを認めるか否かは別であり、事前に会社に確認するのがお勧めです。
ただ、受け取る側としては経費処理されていないプライベートなチョコレートだと信じたい気持ちもあるかもしれませんね。複雑な男心です。
【取材協力税理士】
蝦名 和広(えびな・かずひろ)税理士
特定社会保険労務士・海事代理士・行政書士。北海学園大学経済学部卒業。札幌市西区で開業、税務、労務、新設法人支援まで、幅広くクライアントをサポート。趣味はクレー射撃、一児のパパ。
事務所名 : 税理士・社会保険労務士・海事代理士・行政書士 蝦名事務所
事務所URL:http://office-ebina.com
(弁護士ドットコムニュース)