1月31日、マノーが正式に解散した。その前の週の金曜日、1月27日に管財人から「1月31日をもって、ファクトリーを閉鎖する」旨を伝えられていたスタッフたちは、幻となったマノーの2017年マシン「MRT06」の風洞モデル(50%スケール)とともに記念撮影した。
この写真によって思わぬ噂が流出した。それはマノーと買収交渉をしていた投資家が、破産したマノーが競売にかけられた後に破格の値段でマノーを買い、2017年の途中からF1に参戦してくるのではないかというものだ。
たしかに風洞モデルがあるのなら、実車の開発も相当進んでいたはずで、ファクトリーもスタッフもそのままなら、参戦資金さえ調達できれば、すぐにでも参戦できるようにも思える。
だが、現実はそんなに甘くなかった。なぜなら、自社製造率が低いマノーは、新車の部品の多くを外部に発注していたため、2017年の実車の開発と製造はほとんど進んでいなかったからだ。
管財人の管理下に置かれた状況のファクトリーには新車のパーツはほとんどなく、残ったスタッフたちにできることは、2016年のマシンであるMRT05を2017年のレギュレーションに合わせたモディファイだけ。しかも、ファクトリーに加工用の機械が十分ではないマノーでは、それさえも限界があった。
さらに奇跡が起きるのを祈って最後までマノーに残っていたそれらのスタッフですら、1月31日にファクトリーに最後の出勤を行い、私物を整理して帰宅してしまっているのである。
確かにマノーが解散する直前、ファクトリーに残っていたスタッフたちの間でも「マノーが解散した後、投資家が競売にかけられたマノーを買い戻すのではないか」という噂が上がったという。
ただし、それは一部の情報で流されていたインドネシアの投資家ではなく、マクラーレンの元会長兼CEOを務めていたロン・デニスではないかというものだった。
いずれにしても、いまマノーのファクトリーには2016年のマシンが3台と簡単な工作機械、そして2017年の50%スケールの風洞モデルとエンジニアたちが使用していたコンピュータしかない。2017年のマシンもなく、スタッフも、もう残っていないのである。
すでにスタッフたちは新たなチームへの就職活動を開始している。仮にF1復帰を狙って競売でマノーのファクトリーがどこかの投資家に競り落とされても、スタッフが戻ってくる可能性は、残念ながら限りなく低い。