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zoppが考える、SMAPの歌詞が色あせない理由「調べると、あらゆる視点での面白さに気づける」

2017年02月02日 16:03  リアルサウンド

リアルサウンド

zopp

 修二と彰「青春アミーゴ」や、山下智久「抱いてセニョリータ」など、数々のヒット曲を手掛ける作詞家・zopp。彼は作詞家や小説家として活躍しながら、自ら『作詞クラブ』を主宰し、未来のヒットメイカーを育成している。これまではヒット曲を生み出した名作詞家が紡いだ歌詞や、“比喩表現”、英詞と日本詞、歌詞の“物語性”、“ワードアドバイザー”などについて、同氏の作品や著名アーティストの代表曲をピックアップし、存分に語ってもらった。今回は『SMAP 25 YEARS』に収録された「前に!」の制作秘話、作詞を手がけたELISA、井口裕香といった声優・アニメ界とJ-POPの作詞の違い、さらに自らがプロデュースを務めるRECOJOのこれからについて語ってもらった。


第1回(http://realsound.jp/2015/03/post-2718.html きゃりーぱみゅぱみゅと小泉今日子の歌詞の共通点とは? 作詞家・zoppがヒット曲を読み解く)
第2回(http://realsound.jp/2015/05/post-3154.html SMAP、NEWS、Sexy Zoneの歌詞に隠れる“引喩”とは? 表現を豊かにするテクニック)
第3回(http://realsound.jp/2015/06/post-3606.html ワンオクやマンウィズ海外人気の理由のひとつ? 日本語詞と英語詞をうまくミックスさせる方法)
第4回(http://realsound.jp/2015/07/post-4064.html ジャニーズWEST、NEWS、乃木坂46…J-POPの歌詞に使われている“風諭法”のテクニックとは?)
第5回(http://realsound.jp/2015/12/post-5637.html ジャニーズWEST、山下智久、ドリカム……なぜJ-POPの歌詞には“物語”が必要なのか?)
第6回(http://realsound.jp/2016/02/post-6193.html プロの作詞家がバンドの歌詞にアドバイス? 「ワードアドバイザー」が目指していること)
第7回(http://realsound.jp/2016/03/post-6802.html zoppがももクロ新作で試みた“作詞家の作曲術”「ライバルだった人たちと一緒に仕事ができる」)
第8回(http://realsound.jp/2016/11/post-9970.html 作詞家zoppが“アイドル育成集団”をプロデュースする理由「生活に根ざしたコンセプトを」)


(関連:zoppのプロフィールなどが分かるインタビューはこちら


■「僕はあえて7割くらいしか作品を読まない」


――まずは12月21日に発売された『SMAP 25 YEARS』のお話から。zoppさんが飯田清澄さんとの共作で作詞された「前に!」がファン投票で14位になり、アルバムに収録されましたね。「前に!」は2012年のリリースですが、作詞を手がけたのはいつ頃でしょうか。

zopp:もう1曲作詞を担当した「Cry for the Smile」(『We are SMAP!』/2010年)と同じくらいの時期ですかね。木村さんが昨年の解散報道後にオンエアされたレギュラーラジオ『木村拓哉のWhat'sUP SMAP!』(TOKYO FM)で「前に!」を流してくださって、ファンの方々にとってもより思い入れが強い曲になったのではないでしょうか。

――「前に!」の歌詞は何を意識して書かれたんですか?

zopp:老若男女誰が聴いても同じイメージができるような、「夢にむかって走り続ける」という物語がしっかり見える内容を意識して作りました。同じくジャニーズで、共作=コライトという共通項のあるV6の「僕らの手のひら」もわかりやすい言葉で歌詞を書くことを意識した曲です。「僕らの手のひら」という言葉を生かしてほしいという要望があったので、難しい言葉や、ビビットな言葉を使わないようにしました。


――SMAPはポピュラーな曲が多い反面、マニアックな音楽ファンにもそれらの楽曲が支持されるという希有なアーティストだと思います。zoppさんは、彼らの作品にどんな印象をお持ちですか?

zopp:SMAPの作品は、楽曲を提供した各アーティストの個性が確実に出ているんですけど、SMAPもそれに負けない個性を持っていることを感じます。SMAPの歌詞は最初はキャッチーでライトな感じで楽しめるんですが、興味を持ってその曲について調べていくと、あらゆる視点での面白さに気づくことができるーーそれを教えてくれたアイドルが、僕の中ではSMAPが最初でした。

――zoppさんは最近、ELISAさんや、井口裕香さんなどアニメ界隈への作曲や作詞も増えていますよね。アイドルと声優・アニソンシンガーだと、作詞の性質が少し異なるように思うんですが、いかがでしょう。

zopp:声優さんの音楽作品は、良い意味で売り上げ云々よりも自己表現の場として面白い場所にしようという気概を感じます。アイドルのように競争が激しいのもいいんですけど。あと、アイドルの場合はグローバルに活動することはまだ簡単ではないですが、声優さんやアニソンシンガーはアニメというプラットフォームがある時点で、音楽も世界に届く可能性が高い。楽曲を世界の人に向けて作れている気がするのも、声優やアニメの面白いところです。何より、声優の方に歌詞を“書いていい範囲”は、他のアーティストよりも広いと感じます。いわゆるJ-POPのアイドルみたいな歌詞も書けるんですけど、すごくディープなものを書けるチャンスも多いです。最近だと、ELISAさんの「Rain or Shine」はマフィアをイメージさせる歌詞でしたね。


――マフィアといえば、修二と彰「青春アミーゴ」などを代表作にもつzoppさんの得意技ですよね。

zopp:だから、僕のところに仕事が来たんだと思うんですけど(笑)。「Rain or Shine」はアニメ『91Days』(TBS系)の主題歌で、アニメと同じくアメリカの禁酒時代のマフィアの抗争をテーマにしてほしいというオーダーがありました。ELISAさんはアーティスティックなイメージも強いですし、映画の世界のキャラクターのような雰囲気を持った方なので、特に歌詞として表現できる幅は広い気がします。


――たしかにそうですね。アニメや声優と、アイドルにおけるタイアップ曲への関わり方の違いとは何でしょう?

zopp:普通のアーティストやアイドルがタイアップをつけた曲よりも、声優の方がタイアップの仕方は濃いと思います。アーティストが作ったドラマの主題歌だと、自分の音楽性がベースにあるので、そこまで作品の世界観と混ざり切ることはできないじゃないですか。

――アニメタイアップの場合は、アニメと曲にいい主従関係ができているように感じます。アニメ業界で専業でやってらっしゃってる作家さんもいる中で、J-POPやアイドル業界で戦ってきて、アニメ、声優にもフィールドを広げられたzoppさんだからこそできるやり方や、経験が活きていると感じる部分はありますか?

zopp:たぶん、アニメを専門に書かれている作詞家さんは作品に身を捧げていると思うんですよね。でも、僕はあえて7割くらいしか作品を読まないんです。けれど同じ一つのキーワードを持って、作詞家は作詞家としての世界観がある、というのが面白いと思うんです。その中でELISAさんの「Rain or Shine」のようにものすごくハモることがあるんです 。


■「RECOJOはそのときの情報や情勢を拾うアイドルに」


――後半ではRECOJOのことを伺いたいのですが、レーベル名が<カクメイゼンヤ・エンターテインメント>で、デビュー曲が「革命前夜LOVE」、“革命前夜”という言葉が歌詞にも入っていたりとか、このタイミングで“革命前夜”というキーワードを使ったのは、世相が関係しているんですか。MVにはドナルド・トランプやヒラリー・クリントンのお面も出てきていますし。

zopp:そうですね。もともと僕、“革命前夜”という言葉がすごく好きで、RECOJOにもそのワードが入った歌詞を歌ってもらいたいなと思ったんです。直近で起こる革命を探した結果、トランプ大統領の誕生があったのでそこに被せました。とはいえ、「革命前夜LOVE」の歌詞の内容はそんなに重くはなくて、単純な三角関係のお話です。だからサビに入っているリベラルという言葉は政治的な意味ではなく、“自由な恋をしよう”という意味。 別に僕は政治事に走っていきたいわけじゃないんですよ。


――ただ、そういうアーティストを盛り上げていく話題性は大事だと。

zopp:今って流行り廃りのサイクルがどんどん早くなっていると思うんです。だから、RECOJOではその時流行っていることを切り口に、オンタイムなモノを作っていきたい。スパンが短いのでかなり体力が必要な作業なんですけど、諦めずに難しいことをやっていくのが大事だと思っています。今の音楽業界でそういう存在は、秋元康さんしかいないんです。

――直近の彼の作品でいうと、乃木坂46の「さよならの意味」というグループのための大衆歌を作りつつ、AKB48の「ハイテンション」では<ミサイルが飛んで 世界が終わっても>というフレーズがあったりとか、情勢を汲んでいらっしゃいますよね。

zopp:秋元さんは“今”の情勢を作品として出したいから、絶対ギリギリまで歌詞を考えていると思います。でも、僕らはそれをCDにしてすぐに出せるような規模感のチームではないし、僕にはさすがにハードルが高い。でも、CDにして出さなければ似たようなことはできると思ったんです。だとすると、いかに早くMVにできるのかがポイントになってくるのかなと。

――たしかに、リップシンクを使わなければ、MVを撮ってからでも歌詞は直せますもんね。

zopp:そうそう。あとは長回しで1本撮るくらいなら、僕たちでもすぐに作ることができると思うんです。とはいえ、その時の情勢に合った面白いビジュアルが必要だと思うので、そこのスピード感もシビアにやっていかないとダメですよね。ちなみにRECOJOってスペイン語で「拾う」という意味があるんですけど、そのときの情報や情勢を拾っているという意味になるかな、とも思ったんです。

­――2017年1年通して作品を作っていって、振り返った時に年表のように情勢がわかったら面白いですね。RECOJOの3人(玉野真乃愛、吉森サナ、桜井美桜)はどういう基準で選ばれたんですか。

zopp:成長する姿を楽しめるかどうかを基準に選びました。成長ってなかなか言葉にできないものなんですけど、追いかけている人はその面白みに気づいてくれてるだろうなと思います。彼女たちは、何かに長けてるんですけど、ウィークポイントもあるというか……マルチプレイヤーではなく、本当に一芸に秀でた子たちです。


――ライブも見せてもらいましたが、3人でお互いの弱点カバーしつつ、個性を発揮している印象でした。

zopp:歌に関しても、ただ上手ければいいのかと言われたら、それだけじゃない部分って絶対にあると思うんです。そういうところを彼女たちが知って学んでいってくれたら、また面白い子たちになるんだろうなと考えています。

――なるほど。メンバーそれぞれのSNSを見ていると、写真の撮り方もどんどん垢抜けていってたり。

zopp:そうなんですよ。言わなくても勝手に成長していくところもありますからね。僕も彼女たちの成長に負けないように、切磋琢磨していくーーそういう関係性を作るのが、1番ポジティブだと思っています。


(取材=中村拓海/構成=村上夏菜)