人材会社のウェルクスは2月1日、保育業従事者を対象に行った「保育士の残業について」のアンケート結果を発表した。保育業界では人手不足が叫ばれて久しいが、業務時間内ではとても現場を回せない現状が浮かび上がることとなった。
調査は2016年12月23日~1月16日に保育士・幼稚園教諭など保育業界従事者を対象に実施。204人から回答を得た。
3人に1人がほぼ毎日「持ち帰り仕事」
1日あたりの残業時間の平均を聞いたところ、最も多かったのが「1~2時間以内」で34.8%。次いで「1時間以内」21.6%、「2~3時間以内」19.6%と続く。残業がない、という人はわずか10.3%だった。
最長の残業時間で上位を占めていたのは「4時間」「5時間」だが、中には「8時間程度」や「10時間」「泊まり込み」という回答もあった。
また、残業時間内に終わらず、「持ち帰り仕事」となった回数を聞いたころ、「ほぼ毎日」と答えた人が一番多く32.8%にものぼっている。
残業でこなしている業務の内容については、シフト作成や日誌などの「書類系」の仕事や、会議、時間外預かり、掃除、行事の準備、研修、保護者対応といったものが挙がっていた。日中は目の前の保育業務をこなすので精一杯で、その他の業務はすべて残業時間に回されている現実がうかがえる。
「クレームを言う保護者の対応。夫婦で乗り込まれ精神的に疲れ果てた」
「いちばん大変だった残業エピソード」の項目では、保育士の過酷さがひしひしと伝わってくる。
「運動会前日にアーチ作りを行い帰りがとてつもなく遅くなったのに次の日は、朝の6時半までに出勤だったとき。【家に着いたのは夜の12時前だった】」(20代前半 保育士)
「発表会の衣装作りで2週間毎日2時間睡眠でした」(30代後半 保育士)
ほかにも、保育園ならではの修羅場エピソードがあった。
「要録を何度も何度も書き直した(打ち直した)→添削、校正でOKが出なかったため。ほんとに辛かった。休日も幽霊出勤して仕上げた」(50代前半 保育士)
「クレームを言う保護者の対応。卒園式の前日で、準備もあり、夫婦で乗り込んできた保護者の面談も行い、精神的に疲れ果てた」(30代後半 保育士)
いわゆる普通の会社員も笑うことができない状況が挙げられているが、保育士の残業事情は、このコメントがすべてをあらわしているのかもしれない。
「日々の保育業務以外のプラスアルファの事に関しては残業してやらなければうまくこなせません」(30代後半 保育士)
残業が前提になっている保育業界ではあるが、少しでも効率よく業務を回すために色々工夫している人もいる。一般的なビジネスと共通の時短術である。会議の効率化のほか、
「どこでもできるようにiPadで同期させたりパソコン2台にしてもらった」(30代前半 保育士)
など、ITを駆使する人もいた。中には「残業時間を減らすために仕事を家に持ち帰ったり、休日出勤・幽霊出勤をしたりする」という回答も見られたが、なるべく避けたい力技だとしか言えない。
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